探訪

茅野と伊那の発電所に見る「セカンダリー太陽光」の買い方(page 5)

地域や地主との取り決めなど、書類に現れない点も

2019/04/23 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ
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O&M企業が継続する利点

 両発電所の譲渡に当たって、ネクストエナジーは、それぞれのSPCごと譲渡したいと考えていた一方、エンバイオHDはSPCでなく、それぞれの発電事業を取得したいと考えていた。

 エンバイオHDがSPCを取得する手法を避けたかった理由は、管理しにくいことに加え、株式の取得になるため、設備の償却のような税務処理上の利点が得られないことにあった。

 最終的にネクストエナジーがこうした要望を受け入れ、SPCの株式をエンバイオに譲渡するのではなく、それぞれのSPCがエンバイオに事業譲渡することになった。

 ただし、SPCを取得する手法であればスムーズに移行することが、発電事業を継承する手法を選んだことで、時間を要した手続きがあった。

 経済産業省に対する、設備認定の変更届だった。経産省の事務処理に時間を要し、半年間以上も待つことになったという。

 土地の賃貸借契約についても、契約者がSPCからエンバイオに変わるので、同じように地主との間で契約者を変更することが必要になった。

 地主や近隣地域に対しては、O&M(運用・保守)の担当企業が、これまでと同様、ネクストエナジーのままであることが、利点となった。同社は、開発時に、地主や近隣地域と交渉して取り決めなどをまとめてきた。

 こうした経緯を知るネクストエナジーが、今後もO&Mを担当することで、約束などが反故にされにくくなるとの安心感につながる。エンバイオHDにとっても、地主や地域と取り決めた内容を理解し、尊重しながら運営を引き継ぎやすくなる。

 例えば、地域の慣わしや決まりに対して、それぞれの発電所がどのように対応するのか。

 伊那市の発電所の場合、発電所側が除草する範囲や、除草の作業時に近くを流れる用水路に刈った草を落として流れるようなことは防ぐなど、細かい取り決めもある。発電所周囲の草刈りと同時期に発電所内も除草した方が、景観上、好ましいなど、地域と連携して管理するような配慮も必要という(図6)。

図6●地主との取り決めや地域の状況に応じて雑草を刈る
(出所:エンバイオ・ホールディングス)
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 茅野市の発電所の場合、市の条例で一定以上の太さの木は、伐採が認められていない。発電所の敷地内には、木が雑草のように生える場所がある。その場所では特に留意して、市の条例で定められた太さに成長するより前に、木を切るようにしている(図7)。

図7●木が生えてきやすい場所
(出所:日経BP)
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 また、同発電所では、敷地外の法面の一部の草刈りは、エンバイオHDによる取得以降もネクストエナジーが作業を担当している。

 これは、地主の企業との取り決めで、発電への影響とは異なる理由で刈っているため、同社が継続して担当することになった。敷地内については、太陽光パネルへの影の影響などを予想して、適切な時期にエンバイオHDが除草している。

 このほか、地域活動への参加、町内会への参加費、地主の代替わり、20年後以降の発電事業の継続と地主の理解など、デューデリジェンスや月報などには記載されていない内容でも重要な事項も多く、事前に確認しておく必要があるという。

●発電所の概要
発電所名 EBH茅野スタジアム発電所
所在地 長野県茅野市金沢
元の発電事業者 スピカ・ソーラー
(ネクストエナジー・アンド・リソースが設立したSPC)
現在の発電事業者  エンバイオ・ホールディングス
敷地面積  3万5321m2
太陽光パネル出力  約1.32814MW
パワーコンディショナー(PCS)出力  1.260MW
年間予想発電量    約159万kWh (一般家庭約400世帯の消費電力に相当)
EPC(設計・調達・施工)サービス  ネクストエナジー・アンド・リソース
O&M(運用・保守)サービス   ネクストエナジー・アンド・リソース
太陽光パネル   ネクストエナジー・アンド・リソース製 (多結晶シリコン型、出力255W/枚・2018枚、出力260W/枚・3080枚)
PCS SMAソーラーテクノロジー製
売電開始   2016年7月5日
取得日2017年6月28日
取得額    非公開
FIT上の売電単価   32円/kWh(税抜き)
売電先    中部電力
●発電所の概要
発電所名 EBH伊那発電所
所在地 長野県伊那市西春近
元の発電事業者 デネブ・ソーラー
(ネクストエナジー・アンド・リソースが設立したSPC)
現在の発電事業者  エンバイオ・ホールディングス
敷地面積  5933m2
太陽光パネル出力  約436.8kW
パワーコンディショナー(PCS)出力  490kW
年間予想発電量    約555万kWh (一般家庭約130世帯の消費電力に相当)
EPC(設計・調達・施工)サービス  ネクストエナジー・アンド・リソース
O&M(運用・保守)サービス   ネクストエナジー・アンド・リソース
太陽光パネル   ネクストエナジー・アンド・リソース製 (多結晶シリコン型、出力260W/枚・1680枚)
PCS 東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製 (出力490kW機・1台、Wave Energyのオールインワン型製品)
売電開始   2016年6月10日
取得日    2017年6月28日
取得額    非公開
FIT上の売電単価   36円/kWh(税抜き)
売電先    中部電力
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