東証インフラファンドに上場した防府のメガソーラー

風力・水力発電の運用資産への組み入れも睨む

2019/04/16 05:00
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ

6銘柄目の上場に

 2019年2月13日、東京証券取引所のインフラファンド市場にエネクス・インフラ投資法人(東京都港区)が上場を果たした。同投資法人の運用資産は、5カ所のメガソーラー(大規模太陽光発電所)で、パネル出力で合計約37.6MWの規模となる。

 東証インフラファンド市場は、発電設備などインフラ施設に投資するファンド(投資法人)が上場するもの。安定的な収益が見込めるインフラ関連事業を対象に、幅広い主体に投資機会を提供する。不動産を対象としたJ-REIT市場のインフラ版をイメージして新設された。これまでにエネクス・インフラ投資法人を含めて6銘柄が上場し、そのすべてが固定価格買取制度(FIT)を利用して売電するメガソーラーが運用資産となっている。

 今回、上場したエネクス・インフラ投資法人への最大の出資者(スポンサー)は伊藤忠エネクスで、同社が開発・運営してきた再生可能エネルギー発電設備を中心に投資する。上場時の総資産は、約200億となる。

 これらの投資先の1つが、山口県防府市鐘紡町に稼働している「JEN防府太陽光発電所」だ。太陽光パネル出力が1.94MW、パワーコンディショナー(PCS)の定格出力(連系出力)は1.5MW。2016年1月に運転を開始し、売電単価は36円/kWhとなる(図1)(図2)。

図1●JEN防府太陽光発電所
(出所:伊藤忠エネクス)
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図2●2月からインフィラファンド市場に上場した
(出所:日経BP)
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80MWの石炭火力に隣接

 エネクス・インフラ投資法人の大きな特長は、スポンサーである伊藤忠エネクスの持つ、発電設備に関するノウハウを活用できることだ。同社は、伊藤忠商事グループのエネルギー商社で、石油製品・LPガスの販売を中核に、電力事業にも積極的に乗り出している。石炭・天然ガス火力のほか、再エネでは太陽光と風力、水力発電を手掛けている。

 「JEN防府太陽光発電所」は、こうした同投資法人が持つ特長を十分に生かすことで、開発・運営している。

 同発電所のある防府市鐘紡町は、その町名が名残を留めるようにかつてカネボウ(鐘紡)の工場が操業していた。カネボウは、バブル経済崩壊後に経営不振となり、産業再生機構により資産が売却された。「JEN防府太陽光発電所」は、旧カネボウ工場内の遊休地を伊藤忠エネクスが賃借して、建設された。

 実は、伊藤忠エネクスは、旧カネボウ工場内にあった出力約80MWの石炭火力発電設備を取得し、運営を引き継いでいた。同石炭火力はもともと自家発電用だったが、現在、伊藤忠エネクスグループが電力販売などの電源に活用し、グループ会社の防府エネルギーサービス(防府市)が保守・管理を担当している(図3)。

図3●防府市鐘紡町にある伊藤忠エネクスの石炭火力発電設備
(出所:日経BP)
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2カ月に1回全ストリングを検査

 「JEN防府太陽光発電所」は、この石炭火力設備と隣接しているため、稼働後のO&M(運営・保守)サービスは、防府エネルギーサービスが担っている。

 防府エネルギーサービスでは、約40人の人員で約80MWの火力発電設備を運営・管理している。石炭を粉砕して微粉炭にして燃焼し、ボイラーで蒸気を生み出す。ボイラーは3缶あり、毎日の安定運用には相対的に手間がかかるという。

 2016年1月から、こうした発電設備の保全業務にメガソーラーが加わった。防府エネルギーサービスの末繁誠治発電所長は、「石炭火力の運営を担ってきた視点で見ると、メガソーラー設備はたいへん安定的に稼働しており、相対的に手間がかからない。それでも、その管理にあたっては保守担当者を決めて、日常的にこまめに稼働状況をチェックするようにしている」と言う。

 具体的には、毎月、全ストリング(太陽光パネルの直列回路)のうち、半数について接続箱を開けて、電流・電圧値をチェックしているという。つまりに2カ月に1回は全ストリングの電流・電圧値を測定し、異常の兆候がないかを確認していることになる(図4)。

図4●接続箱の端子から2カ月に1回、ストリングごとに電流・電圧を測定
(出所:日経BP)
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 こうした日常的な電気点検のほか、台風が通過する前には、パネルが強風で飛散することがないよう、全パネルの固定状況を手作業で確認しているという。

パネルは東芝、PCSはTMEIC製

 今年3月半ば、取材で同太陽光発電所を見学した。稼働後、3年を経過しているメガソーラーとしては珍しく、ほとんど雑草や枯草のあとがない(図5)。

図5●太陽光パネルは東芝製、PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用
(出所:日経BP)
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 雑草対策としては、年に1回、防府エネルギーサービスの担当者が手作業で1本1本、引き抜いているという。敷地全面に小石を敷き詰めたこともあり、刈り払い機などの除草機械は石を飛ばすリスクがあるため使えず、また借地のため除草剤の散布など化学薬剤の利用も控えている。

 同太陽光設備は、東芝プラントシステムが設計・施工を担当し、太陽光パネルは東芝製、PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した(図6)。

図6●除草は手作業で行い機械や薬剤は使っていない
(出所:日経BP)
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 太陽光パネルの設置角は10度で、パネル縦置き2段組みアレイ(パネルの設置単位)とした。地面からアレイ最低部までの設置高は90cm、最後部までの高さは150cm。積雪の心配はほとんどないため、パネルを寝かせて設置高さを低くし、パネルの目視が容易など、効率的なO&Mに適した設計になっている。

 基礎架台には、東芝プラントシステムの開発した基礎一体型太陽光パネル架台である「KiTyシステム」を採用した。架台は、南北方向に1本の杭基礎から上向きに開いたV字構造で、アレイを載せる鋼材と三角形状になる。シンプルな構成で、軽量鋼材を採用しながら三角構造で強度を確保し、スピード施工が容易などの特徴がある。

 通常、基礎一体型太陽光パネル架台システムでは、基礎には杭を地中に差し込み、周囲をセメントミルクで固定するケースが多いが、防府市のサイトでは、コンクリートの置き基礎を採用している。このため南北に1本脚の架台ながら安定感が増している(図7)。

図7●東芝プラントシステムの開発した「KiTyシステム」
(出所:日経BP)
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石炭火力の悪影響はない

 発電量の評価については、測定した日照と太陽光パネルの性能値から、予測される出力値を算出し、これと実際の発電量を比較している。これまでのところ、「実績値が予測値を下回ったことはないため、順調に稼働していると判断している」という。

 隣接して石炭火力設備があることから、煙突からの排出物の影響が気になるが、取材時に見たところではまったく汚れはない。稼働後、パネルを洗浄したことも一度もないという(図8)。

図8●太陽光パネルは洗浄していないが表面に汚れはほとんどない
(出所:日経BP)
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 大きなトラブルはないものの、電力会社の送電網への落雷などで安全装置が働いて系統から解列し、PCSが停止したことは何度かあった。夜間にこうしたPCS停止が起きた場合、翌朝からの運用で発電ロスがないよう夜明け前に再稼働するにしているという。

 末繁所長は、「発電所がインフラファンドに上場したことで、O&Mの体制などを変えることはないが、停止したPCSの迅速な再稼働など、発電ロスを最小限に留めるように引き続き取り組んでいきたい」と話す。

風力と水力発電も組み入れ

 エネクス・インフラ投資法人の資産運用は、伊藤忠エネクスグループのエネクス・アセットマネジメント(東京都港区)が担当する。同社の山本隆行社長は、エネクス・インフラ投資法人の特長である伊藤忠エネクスからのサポートは、今後さらに強みを発揮するという。

 同投資法人の上場時における資産は5カ所のメガソーラー(合計出力37.6MW)で、防府サイトのほか、茨城県日立市(買取価格40円/kWh、パネル出力約11.544MW)、広島県北広島町(40円、約1.595MW)、大分県玖珠町(40円、約1.007MW)、茨城県鉾田市(36円、約21.541MW)である。

 エネクス・アセットマネジメントはすでに、今後、運用資産に組み入れる可能性のある再エネ発電所のリストを公表している。その中には、風力と水力発電所も含まれる。「風力と水力発電設備の安定的な運用には、メガソーラーに比べて相対的により高度なノウハウが求められ、運用リスクが大きい。伊藤忠エネクスでは風力・水力発電事業で実績があり、運用面でサポートを受けられる。そのメリットは大きい」と言う。

 エネクス・アセットマネジメントが公表している今後のパイプライン(組み入れる可能性のある発電設備)は、14施設で合計出力243.2MWに達する。その内訳は、太陽光が193.2MW(稼働・建設中128MW、計画中65.2MW)、風力41MW(全て稼働中)、水力9MW(全て改修中)となっている(図9)。

図9●新潟県胎内市で稼働中の風力発電設備(出力20MW)
(出所:伊藤忠エネクス)
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 このうち水力発電は、新潟県上越市にあり、日本曹達が運用してきたる流れ込み式水力発電設備を、2008年に伊藤忠エネクスのグループ会社が取得して運営してきた。現在、大規模改修を行っており、出力を高めつつFIT適用となる。2021年12月に完成予定だ(図10)。

図10●新潟県上越市で改修中の水力発電設備(9MW)
(出所:伊藤忠エネクス)
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 運用資産にメガソーラーのほか、風力と水力発電を組み入れることは、ポートフォリオの観点からは補完関係にあり、資産の安定運用上、利点が大きいという。「太陽光は冬場や長雨で発電量が低下する一方、風力発電は冬場に発電量が伸びる傾向があり、また新潟県上越市にある流れ込み式水力は、雪や雨で発電量が増える。メガソーラーとは年間を通じて発電量を補完する関係になる」(山本社長)。

資産規模は1000億円に

 これまで東証インフラファンドに上場した5銘柄の運用会社に出資する主要スポンサーは、タカラレーベン、いちご、リニューアブル・ジャパン(東京都港区)、アドバンテック(東京都千代田区)、カナディアン・ソーラー・プロジェクト(東京都新宿区)と、メガソーラーの開発会社が主体だった。また、資産規模は、カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人(東京都新宿区)が最大規模(上場時73MW・取得額約300億円)だった。

 今年2月に上場したエネクス・インフラ投資法人が、今後、公表したパイプラインを予定通り、投資資産に組み込んでいけば、初めて、太陽光以外の再エネが、上場する投資法人の資産となり、ファンド規模も最大になる可能性がある。

 山本社長は、「今後、5~6年後には、運用資産の規模で1000億円程度まで拡大する見込み」としている。そうなると、機関投資家にとって資産規模が小さく運用対象になりにくいとされる現在の東証インフィラファンド市場が、活性化する可能性がある。

 また、さらに将来的に、FITによる買取期間が終了した際の対応について山本社長は、「伊藤忠エネクスグループには電力小売り会社があるので、こうしたグループ会社と連携することでFITを使わずに安定して売電先を確保し、発電事業で収益を上げ続けるシナリオも十分に考えられる」と言う。

●設備の概要
発電所名JEN防府太陽光発電所
住所山口県防府市鐘紡町217-7他
所有者エネクス・インフラ投資法人
取得額6億8000万円
設置面積2万5476m2
出力パネル出力約1.94MW、連系出力1.5MW
初年度想定発電量約2387MWh
EPC(設計・調達・施工)サービス東芝プラントシステム
O&M(運用・保守)防府エネルギーサービス
太陽光パネル東芝製(260W/枚・7464枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(750kW機・2台)
接続箱独ワイドミュラー製
架台東芝プラントシステム製「KiTyシステム」
着工日2015年10月
売電開始日2016年1月
売電単価36円/kWh