「積雪」「凍上現象」を乗り越える八戸市のメガソーラー

PCSの冷却設備の故障も、ロスは最小に

2019/03/26 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 青森県八戸市にある八戸市北インター工業団地の一角に、太陽光パネルの出力が約1.7MW、パワーコンディショナー(PCS)の定格出力が1.5MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「八戸メガソーラー発電所」がある(図1)。

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図1●八戸市の工業団地内にある旧・東北工場跡に立地
上の空撮画像は増設前に撮影(出所:極東開発工業)
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 ダンプカーやタンクローリー、ごみ収集車といった特装車メーカーである極東開発工業が、同社の旧・東北工場の跡地で開発・運営している。工場の建物は、物流企業に倉庫として貸している。メガソーラーは、2013年9月に売電を開始し、約5年半が経過している(当時のメガソーラー探訪の掲載記事)。

 八戸市の発電所は、同社にとって、2カ所目に稼働したメガソーラーとなった。先行して稼働していたのは、福岡県飯塚市にある福岡工場の敷地内にあるパネル出力が1.5MW、PCS出力が1.3MWのメガソーラーだった(図2)。こちらは2013年3月に稼働していた。

図2●福岡県飯塚市の工場敷地内の発電所
(出所:極東開発工業)
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 同社は元々、福岡市や八戸市のほか、兵庫県三木市、愛知県小牧市、神奈川県大和市の5カ所の工場で、特装車を製造してきた。しかし、2008年のリーマンショック以降の景気の停滞を機に、土木工事や建設向けの需要が減り、国内市場が縮小した。一方で、アジアをはじめとする新興国のインフラ整備の需要が拡大した。

 そこで、国内の製造拠点を縮小し、アジアなど需要地に近い製造拠点を拡充した。これにより、製造を停止した旧・東北工場と福岡工場の両方で、将来の拡張を見込んで確保していた土地が遊休地となった。そこにメガソーラーを設置し、売電事業に乗り出した。

 二つのメガソーラーはともに設計・調達は早水電機工業(神戸市)、施工はソーラーフロンティア(東京都港区)、早水電機工業、大林道路の3社によるJV(共同企業体)が担当し、太陽光パネルはソーラーフロンティア製、PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。

 O&M(運用・保守)も、流通大手イオン系の管理会社である、イオンディライトが共通して担っている。同社は、イオン店舗の屋根上太陽光などで経験をもつ。両メガソーラーとも、電気主任技術者による保安管理業務まで含めて委託している。

 八戸市のメガソーラーは、固定価格買取制度(FIT)の売電単価は40円/kWh(税抜き)で、当初は東北電力に売電していたが、現在は大和ハウス工業の新電力に売電先を変えている。

 このほか、子会社である日本トレクス(愛知県豊川市)の愛知県豊川市にある音羽工場の屋根上に太陽光パネルを並べ、極東開発工業が発電事業者となっている(図3)。

図3●子会社の日本トレクス・音羽工場の屋根上太陽光発電所
(出所:極東開発工業)
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 音羽工場は、ウイングトラックと呼ばれる、荷台の側面が跳ね上がるように開くタイプのトラックなどを手がけている。同工場では、太陽光パネル出力が420kW、PCS出力が350kWの太陽光発電設備を設置し、2015年1月に稼働した。FITによる売電単価は36円/kWh(税抜き)で、エナリスに売電している。

 設計・施工は、産業機械商社であるナラサキ産業(札幌市)が担当した。同社とは、ポンプ圧送車の取引がある。パネルは三菱電機製、PCSは日新電機製を採用した。

積雪期でも発電量は良好

 八戸市のメガソーラーは、稼働して約5年半、おおむね年間の売電額が約9000万円、営業利益が約4000万円で、安定的に推移している。

 2016年5月には、倉庫として貸している建物の北側にある未利用地に、1260枚の太陽光パネルを設置し、出力200kW分を増設した(図4)。設置した太陽光パネルは、稼働時に導入したのと同じ、出力160W/枚の製品である。

図4●増設分の太陽光パネル
(出所:日経BP)
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 このパネル増設によって、以前よりも売電額が増している傾向にある。

 八戸市の気候は、積雪の回数・量ともに、県内では相対的に少ない。例えば、豪雪で知られる青森市で積雪していても、八戸市周辺ではそれほど積もらないという。

 積雪による発電量の低下が比較的、少ないことが、年間の売電額が安定している理由の一つとなっている。太陽光パネルの上に雪が積もっても、ほとんどの場合、正午頃までに解けるとしている。

 とはいえ、八戸市のメガソーラー周辺では、年によって、50cm前後まで雪が積もる場合がある。この積雪の高さと、重さによる耐荷重性を満たすために、太陽光パネル低部の地上からの設置高は1m、設置角は20度としている(図5)。

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図5●設置高は1m、設置角は20度
(出所:日経BP)
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「凍上現象」の影響を受けない基礎

 また、八戸市のメガソーラー周辺では、北国に特有の「凍上現象」が生じる。「凍上現象」とは、寒気によって土壌が凍結して氷の層ができ、それが分厚くなって土壌が隆起する現象で、道路や建物の基礎などに損傷を与えることがある。

 太陽光発電所でも、架台の基礎などが凍上現象による影響を受け、設置後に架台が歪んだり、ガタついたりする恐れがある。そこで、この地域での電柱を設置する方法を応用し、深さ約150cm、地上高さ50cmのコンクリート基礎を採用した(図6)。

図6●地中に深さ150cmまで基礎を築いて冬季の土地の隆起の影響を防ぐ
(出所:日経BP)
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 今回の取材時にも、敷地内には凍上現象によって、地面の土が持ち上がっている状態の場所が多く見られた(図7)。ただし、基礎や架台にはその影響が及んでおらず、設計通りの効果を発揮しているようだ。

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図7●地面には土が隆起している場所があるが、基礎には影響していない
(出所:日経BP)
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稼働時から遠隔制御を採用

 稼働後のトラブルでは、PCSのファンが故障して十分に冷却できず、PCSの安全機能が働いて停止したことがあった。この時には、PCSメーカーから当初、伝えられていた交換に要する日数よりも、メーカーが大幅に期日を短縮して交換できる措置をとり、売電ロスを抑えることができた。

 また、2019年に入り、空調機の室外機が故障したが、気温の低い時期のため、室外機が壊れていない空調機の稼働のみでカバーでき、安全機能が働いて稼働を停止するといった状況は避けられている。

 PCS関連では、東北電力が出力抑制の準備を進めていくことを明らかにしている。3月に入り、発電事業者に対して、PCSの遠隔制御への対応を求める文書も発送されている。

 八戸市のメガソーラーの場合、2013年9月の稼働時から、PCSは遠隔制御できるようになっている。これは、自社工場の跡地のため、自社の社員が常駐していない環境に配置するため、万が一の際に備えて、当初から自発的に導入した機能である。

 飯塚市のメガソーラーも同様で、九州電力による出力抑制には、当初から導入していた遠隔制御の機能を使って対応した。

●発電所の概要
発電所名八戸メガソーラー発電所
発電事業者極東開発工業
住所青森県八戸市北インター工業団地5丁目2番26号
(極東開発工業の旧・東北工場跡)
敷地面積約5万7601m2
発電設備の施設面積約3万7647m2
(初期設置分:約3万2647m2、増設分:約5000m2
総投資額約5億5000万円
(初期設置分:約4億9000万円、増設分:約6000万円)
太陽光パネル出力約1.7MW
(初期設置分:1.5MW、増設分:200kW)
パワーコンディショナー(PCS)出力1.5MW
年間予想発電量約200万kWh
(増設前:約181.7万kWh)
太陽光パネルソーラーフロンティア製
(CIS化合物型、160W/枚・1万1260枚:初期設置分が1万枚、増設分が1260枚)
PCS東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(500kW機・3台)
設計・調達早水電機工業
施工ソーラーフロンティア、早水電機工業、大林道路の共同企業体
固定価格買取制度上の買取価格40円/kWh(税抜き)
売電先大和ハウス工業(エナリス経由)
売電開始日2013年9月