発光によるカラス対策の効果は? 琵琶湖のリゾートホテルのメガソーラー

ホテルが見回りを担当、環境に配慮しフェンスは茶色に

2019/03/12 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 滋賀県守山市の北部、琵琶湖の南端近くに、リゾートホテル「琵琶湖マリオットホテル」がある(図1)。湖畔に位置し、水面に映る山々や豊かな自然を楽しめることが、ホテルの大きな魅力となっている。

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図1●琵琶湖マリオットホテルの様子
(出所:森トラスト)

 湖周辺の交通の要所となっている琵琶湖大橋に近く、神社や仏閣などの歴史的な観光名所が間近なほか、京都へのアクセスにも優れる。

 同ホテルは、森トラスト(東京都港区)のグループが開発・運営している。以前は森トラストグループのホテルブランドを冠した、「ラフォーレ琵琶湖」として運営されていたが、その後、米マリオット・インターナショナルと提携し、2017年7月に、マリオット側のホテルブランドを冠した「琵琶湖マリオットホテル」として、運営を始めた。

 マリオット・インターナショナルは、世界各地で「マリオット・ホテル」のほか、「ザ・リッツ・カールトン」などさまざまなブランドのホテルやリゾートを手掛けていることで知られる。琵琶湖のホテルでは、リブランドに際して、館内全体や客室内を全面的に一新し、マリオットの客層まで幅広いニーズに対応できるようにした。

 ホテルの隣接地には、太陽光パネル出力約2MW、パワーコンディショナー(PCS)出力が1.990MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「森トラスト・エネルギーパーク琵琶湖」が立地している(図2)。2014年12月に稼働し、4年が経過している。

図2●ホテルの隣接地にメガソーラーがある
(出所:森トラスト)
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 森トラストグループは、ホテルの周辺一帯の土地も所有しており、その遊休地の多くをメガソーラーの用地として活用した。発電事業者は、森トラストとなっている。

 森トラストでは、もう1カ所、先に開発した合計出力10MWのメガソーラー「森トラスト・エネルギーパーク泉崎」がある。福島県泉崎村にあるゴルフ場「ラフォーレ白河ゴルフコース」の跡地に立地する(図3)。

図3●泉崎のゴルフ場跡のメガソーラー
(出所:森トラスト)
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 こちらは、東日本大震災の影響で営業を休止し、その後、メガソーラーの用地とした(関連コラム)。第1期の出力約2MWが2013年8月に、第2期の約8MWが2018年5月に稼働している。

 森トラストグループにとって、主業である都市ビル関連事業でも、エネルギー利用の効率化とともに、再生可能エネルギーの活用は重要なテーマとなっている。開発・運営している東京都内や各地の都市ビルにおいて、太陽光発電と蓄電池を組み合わせた自立型のシステムの導入などに積極的に取り組んでいる。

 こうした都市ビルにおける太陽光発電の活用でも、メガソーラーの開発や運用で得た経験やノウハウが生きているという。

見回りはホテルに委託

 琵琶湖マリオットホテル、泉崎のゴルフ場跡の二つのメガソーラーとも、EPC(設計・調達・施工)サービスは、きんでんが担当した。PCSは、いずれも東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。

 太陽光パネルについては、琵琶湖マリオットホテルのメガソーラーについては、非公開。泉崎のゴルフ場跡は、国内メーカー製と海外メーカー製を併用している。

 琵琶湖マリオットホテルのメガソーラーの用地は、湖に近く、周囲は田畑に囲まれている。もともと平坦な土地のため、開発時に本格的な造成が不要で、施工費を抑えられる利点があった。ほぼ整地や雑草の除去などで済んだという。

 一方で、水はけが悪い土地のため、排水対策などを講じる必要があった。

 敷地内外には元々、数カ所の調整池が設けられていた。この池を、より効果的に使うために、新たに排水路を掘りめぐらせ、雨水を素早く排水できるようにした(図4)。

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図4●排水路と池
(出所:日経BP)
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 ただ、それでも雨の降った翌日などは、部分的に泥濘(ぬかるみ)になることがある。アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)の間など、点検や巡視のために頻繁に歩く場所で、地面が泥濘になりやすい場所には、「飛び石」のようにコンクリートブロックやレンガなどを置き、足もとが濡れにくいように工夫している(図5)。

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図5●コンクリートブロックやレンガを飛び石のように使っている
(出所:日経BP)
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 また、周辺環境との調和を目的に、敷地の外周を囲っているフェンスは、焦げ茶色に着色している(図6)。これは、自治体などとの協議において要求された。

図6●焦げ茶色に塗られたフェンス
(出所:日経BP)
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 稼働後のO&M(運用・保守)は、森トラストグループが担当している。同社グループの特徴の一つは、ビルなどの運営や管理の経験が豊富な点がある。この特徴を生かしたO&Mで、グループ施設の中で、太陽光発電所は比較的、手間が少ない施設としている。

 日常的な対応では、警備会社への異常時の駆けつけ依頼のほか、日々の巡回をホテルに委託しており、頻繁な見回り体制を構築している。これは、太陽光発電所からのケーブル盗難への警戒もあるという。近畿地方でも連続して起きてきた。

 ホテルに委託している作業には、草刈りもある。太陽光パネルの設置区域には、砕石を敷き詰めているものの(図7)、雑草が根づいて伸びやすい場所もある。こうした場所を草刈りしている。

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図7●敷地内には砕石を敷いた
コンクリート基礎の寸法は大きい(出所:日経BP)
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 こうした自社グループのリソースを生かしたO&Mは、泉崎のゴルフ場跡のメガソーラーでも共通している。

 泉崎では、ゴルフ場時代の維持管理会社を活用し、常駐のO&M担当者が毎日、敷地内を巡回しながら、除草をはじめ、排水路の詰まりの予防などを担っている。両施設とも、元々、運営に不可欠な作業のため、ノウハウや体制がそのまま生かせる。

 売電開始からの発電量は、安定しており好調という。もう1カ所の泉崎との比較として、積雪の量や回数が少ないことが、発電量では利点につながっているという。

 琵琶湖の周辺でも毎年、雪は降る。ただし、パネルからすぐに滑り落ち、地上にもそれほど大きな雪だまりはできないので、発電量への影響は少なく、除雪はしていない。

カラスが嫌がるパターンのフラッシュ光

 運営上、想定していなかったのは、カバーガラスが割れてしまう太陽光パネルが一定数、出てきたことだった。カラスによる「石落とし」と思われる(図8)。被害は多い時で年に5枚程度となっている。

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図8●カラスが落としたり、架台の隙間に置いたと見られる石
(出所:日経BP)

 メガソーラーの周囲には、田畑だけでなく、林や山もある。そこには、トンビやカラスが多く生息し、メガソーラーの周囲をひっきりなしに飛び交っている(図9)。取材時にも、カラスがアレイの上に止まって休んでいた。

図9●周囲の電柱にもトンビやカラスが多く止まっている
(出所:日経BP)
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 カラスは、太陽光パネルに糞を落とすだけでなく、中には、石をくわえて飛び、太陽光パネルの上に落とすことがある。これによって、カバーガラスが割れる被害に遭うメガソーラーは多い。

 森トラストの場合、カバーガラスの割れを発見すると、すぐにパネルを交換している。ガラスが割れても、それまでと遜色なく発電し続ける場合も多いが、セル(発電素子)が損傷したり、アーク(火花)が生じる遠因となる恐れがある。こうした安全上の理由も重視し、迅速に交換している。

 また、石落としによる被害を防ぐ目的で、発電所内にカラス対策を追加した。アレイの上に向けて、カラスが嫌がるように光を発する機器を取り付けた(図10)。効果を見極めるために、約半分の区域に設置した。

図10●カラスが嫌がるように光を発する
(出所:日経BP)
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 導入したのは、東神電気(大阪市淀川区)製の「ビー・ビー・フラッシュ」である(関連コラム)。

 アレイの高部に、この光を発するLEDライトを設置している。日中、定期的にさまざまなパターンの光を、カラスが嫌がるようにアレイ上空に向けて、ランダムに発する。元々、電柱での活用を想定して開発されたカラスの営巣防止装置である。

 この機器は、太陽光パネルを備えており、専用の外部電源は要らない。小型・軽量で、場所を取らずに架台の隅に簡単に取り付けられる。

 この機器を取り付けた後、太陽光パネルのカバーガラスが石落としによって割れる枚数は、少なくなった。ただし、機器を設置していない区画でも、割れる枚数が減っているので、どこまでが機器による効果なのか、見極めが難しいとしている。

●発電所の概要
名称森トラスト・エネルギーパーク琵琶湖
所在地滋賀県守山市今浜町十軒家
(「琵琶湖マリオットホテル」の隣接地)
太陽光パネルの敷地面積約3万2000m2
発電事業者森トラスト
太陽光パネル容量約2MW
パワーコンディショナー(PCS)容量1.990MW
年間予想発電量約230万kWh
(一般家庭約700世帯の消費電力に相当)
投資額非公開
EPC(設計・調達・建設)サービスきんでん
太陽光パネル非公開
PCS東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(出力500kW機・3台、490kW機・1台)
O&M(運用・保守)森トラストグループ
発電開始日2014年12月
買取価格(税抜き)40円/kWh
売電先関西電力