台風で敷地が浸水! でも太陽光の全設備が難を逃れたワケ

滋賀「舗装メガソーラー」の6年(後編)

2019/02/26 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 前回、紹介した滋賀県湖南市にある出力約1.81MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「昭建石部ソーラー発電所」、同県米原市にある約2.45MWの「昭建柏原ソーラー発電所」では、それぞれ稼働後約6年、約5年の間に、異常気象によるトラブルや、大規模修繕を経験してきた。

 発電事業者である、地元の土木を中心とするゼネコン(総合建設会社)の昭建(大津市)によると、まず、2013年9月15~16日にかけて、滋賀県広域で大きな水害をもたらした「平成25年台風18号」の通過時に、湖南市のメガソーラーが、周囲にある河川増水の影響を受けて浸水した(図1)。

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図1●2013年9月の浸水時の様子
下は同じ場所の通常時の様子。出力約1.81MWの「昭建石部ソーラー発電所」(出所:上は昭建、下は日経BP)
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 この台風の通過時は、滋賀県周辺に停滞するような状況となり、琵琶湖の水位が大きく上昇していった。湖の水位上昇とともに、そこに流れ込む河川の水位もどんどん高くなっていった。

 湖南市のメガソーラーから少し離れた場所を流れる野洲川(図2)も、琵琶湖に流れ込んでいる川の一つで、水位が上がっていった。この水位上昇への対応として、発電所の近くを流れている野洲川の支流では、水門などを使って野洲川への流入を止めた。すると、今度は支流の水位がどんどん上昇し、この支流に流し込む排水路を逆流しはじめた。この逆流によって排水路が溢れ、メガソーラーの敷地内も浸水した。

図2●右上に見えるのが野洲川
出力約1.81MWの「昭建石部ソーラー発電所」(出所:昭建)
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 湖南市の発電所では、敷地内は浸水したものの、発電設備は浸水によって損壊することはなかった。この理由は、発電所の設計によるところが大きい。

 湖南市のメガソーラーで、地上から最も低い高さに設置されているのは、パワーコンディショナー(PCS)や昇圧変圧器(キュービクル)である。砕石の上に、高さ約30cmのコンクリート基礎を築き、その上に固定している(図3)。

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図3●浸水時のPCS付近の様子
下は通常時の様子。出力約1.81MWの「昭建石部ソーラー発電所」(出所:上は昭建、下は日経BP)
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 この場所でも、基礎はギリギリ近くまで浸水したものの、基礎の上まで水が達することはなく、PCSや昇圧変圧器は無事だった。

 太陽光パネルや接続箱は、アスファルト舗装した地面の上に、高さ50cmのコンクリート基礎を築き、その上に固定している(図4)。ここも基礎のかなりの高さまで浸水したものの、コンクリート基礎の上まで水が浸ることはなく、太陽光パネル、接続箱ともに浸水や水没を免れた。

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図4●浸水時のアレイの様子
右下は通常時の様子。出力約1.81MWの「昭建石部ソーラー発電所」(出所:昭建、右下は日経BP)

 湖南市のメガソーラーでは、太陽光パネルから接続箱、PCSをつなぐケーブルの敷設に際し、ラックを使い高い位置に固定していた。今回の水害では、この設計が功を奏した。

 国内の多くのメガソーラーでは、地中や地面にケーブルを敷設している。一方、昭建の湖南市の発電所では、ケーブルも高さ50cmのコンクリート基礎の上を通るように敷設している(図5)。

図5●浸水時のラックの様子
出力約1.81MWの「昭建石部ソーラー発電所」(出所:昭建)
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 接続箱までは太陽光パネルの裏面を通し、接続箱からPCSまでは、アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)をまたぐ際、コンクリート基礎にケーブル収納用のラックを固定し、50cm以上の高さでケーブルを通している。

 この設計によって、ケーブルについても浸水を免れた。

 昭建によると、「周辺地域の浸水状況から考えると、発電設備が水没も浸水もせずに無事に済むとは考えられなかった」とし、まさに「設計に救われた」と振り返る。

 同社ではこのとき、万が一、発電設備が浸水・水没することによって電気的な事故に至ることを恐れ、関西電力からの要請はなかったものの、連系用の断路器を遮断し、送電を止めたという。

 半日ほど経って、湖南市のメガソーラーの敷地内からは水が引いていった。発電設備を点検すると異常はなく、どの設備も無事に稼働していた。絶縁抵抗などに異常がないことを改めて確認し、関電の高圧配電線への連系を再開した。

想定外の積雪で除雪機を導入

 米原市にあるメガソーラーは「大雪」を経験した。2017年の冬に福井県などで大雪が降り、道路や交通機関の通行に大きな被害が出た際、米原市でも想定外の大雪に見舞われた。

 太陽光パネルに、分厚く雪が積もっただけでなく、地上からパネル最低部まで、積もった雪がつながってしまった(図6)。

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図6●大雪に見舞われた当時の様子
滋賀県米原市に立地する出力約2.45MWの「昭建柏原ソーラー発電所」(出所:昭建)

 こうした場合、パネル表面が雪に覆われることで発電停止や発電量の減少を余儀なくされる。加えて、パネルや架台にかかる荷重が想定以上に大きくなり、パネルが割れたり曲がったり、架台が曲がるといった安全に影響する損壊を招くことがある。

 米原市のメガソーラーは、山あいの積雪地に立地することから、設計上、積雪に対応していた。

 太陽光パネルの設置角は、湖南市の発電所の10度に対して15度とやや大きくした。パネル最低部の地面からの設置高は湖南市の発電所の60cmに対し、米原の発電所では80cmに広げた。架台はアルミ製から鉄製に変えた。パネルは80セル・322W/枚の製品から、通常の60セル・245W/枚に変えた。パネルの最低部には、積雪荷重を逃がすための治具も取り付けた。いずれも積雪や積雪時に想定される荷重に対応するためだった。

 このような対策が奏功し、想定以上の積雪が数度も続いても、発電設備は損傷しなかった。

 ただし、発電量の減少への影響は大きかったため、新たに除雪機を購入し、米原市の発電所で使い始めた(図7)。同社は土木を本業とする企業のため、除雪などの作業には慣れている。

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図7●除雪中の様子
出力約2.45MWの「昭建柏原ソーラー発電所」(出所:昭建)

 除雪する際、地面をアスファルト舗装していることで、作業が比較的楽になり、舗装の利点を実感できたという。

接続箱のヒューズが60本も切れる

 両発電所で、ほぼ同時期に接続箱のヒューズが大量に切れているのを発見したこともあった。

 2つの発電所とも、直流回路は1000V対応の構成で設計されている。当時の1000V対応の接続箱は、入出力回路の遮断にブレーカーを使った製品は存在せず、ヒューズを使った製品のみが販売されていた。このため、入出力回路に何らかのトラブルが生じると、ヒューズが切れて遮断される。送電を復旧するには、切れたヒューズを新しいものに交換する必要がある。

 この時には、米原市の発電所で約40本、湖南市の発電所でも約20本のヒューズが切れていた。この間、ヒューズが切れた直流回路の送電は止まり、売電ロスとなっていた。

 点検時に気付き、中には、ヒューズやヒューズボックスが焼けていた場所もあった。

 ヒューズが大量に切れた大きな要因はヒューズの選定にあったようだ。それまで採用していたヒューズの定格最大電流は12Aだった。これを機に、15Aの製品にすべて交換したところ、それ以降、ヒューズが大量に切れることはなくなったという。

大規模修繕でファンとフィルターを交換

 湖南市のメガソーラーは、稼働してから約6年間が経過している。2月中旬には、PCSの大規模修繕を実施した(図8)。

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図8●PCSメーカーの推奨通りに大規模修繕を実施
出力約1.81MWの「昭建石部ソーラー発電所」(出所:日経BP)
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 PCSは、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用している。昭建では、メーカーの推奨通りにこの修繕を実施した。

 修繕の対象となっている部品や部材は、PCSメーカーがより安全を見てその時期の交換を提案しており、実際には、まだ交換せずに使用し続けられる状態であることも多い。このため、修繕対象の時期に、対象となっている部品や部材の状態を確認し、まだ使用できると判断し、交換を先送りにする発電事業者もある。

 しかし、交換を先送りにした場合、故障や稼働停止のリスクが増すことになる。そこで昭建では、そうしたリスクを低く抑えた方が、長期的に事業性が高まると考え、PCSメーカーの推奨通りに修繕する方針を採っている。

 2月中旬の大規模修繕では、ファンとフィルターの交換のほか、普段は触れることがないPCSの中核部を清掃した(図9)。修繕の作業は、PCSメーカーが担当する。

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図9●大規模修繕時の様子
ファンの交換作業(上)。交換したファンとフィルター(2段目の左)、新品のファン(同右)。PCSの中核部も清掃(下)。出力約1.81MWの「昭建石部ソーラー発電所」(出所:日経BP)
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 ファンの交換にともない、ファンの制御用ソフトウェアも更新した。

 湖南市の発電所では、3台のPCSが設置されている。修繕作業の間、そのPCSに接続している昇圧変圧器と接続箱の遮断器を切った。こうして、太陽光パネルからの発電電力と、連系点からの受電電力の両方の電気が流れ込まないようにした。

 1つのPCSの修繕作業が終わり、次のPCSの作業に入る際に、昇圧変圧器と接続箱の遮断器を操作し、修繕の終わったPCSの稼働を再開する一方、次のPCSへの送電を止める。

 修繕の作業担当者によると、一般的な太陽光発電所に比べて、湖南市の発電所のPCS内は、粉塵が多く溜まっているだけでなく、「粘っこい粉塵」が特徴という。

 昭建によると、その原因は、同社のアスファルトコンクリート(アスコン)工場の敷地内に立地していることにあるのではないかという。

 アスファルト材の生産では、砕石や砂などを原料として扱う。これらは、生産設備に投入される前、敷地内の所定の位置に保管されている。こうした砕石や砂から、細かい汚れが飛散し、太陽光パネルに乗り、比較的、表面が汚れやすい状況にある。

 また、再生アスファルト材も取り扱っており、修繕作業者が指摘した「粘っこい粉塵」は、細かくなった再生アスファルト材によるものの可能性が高いという。

●発電所の概要
発電所名昭建石部ソーラー発電所
住所滋賀県湖南市石部北2丁目2104番地(昭建の石部アスコン工場内)
敷地面積約1万7240m2
発電事業者昭建(滋賀県大津市)
太陽光パネル出力1.8118MW
パワーコンディショナー(PCS)出力1.890MW
年間予想発電量約170万kWh
EPC(設計・調達・建設)サービスきんでん
アスファルト舗装近江道路土木(滋賀県甲賀市)
O&M(運用・保守)きんでん
太陽光パネル京セラ製(80セル・322W/枚、5627枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(出力630kW・直流入力1000V対応機、3台)
架台京セラソーラーコーポレーション製
売電開始日2013年2月26日
固定価格買取制度(FIT)上の買取価格40円/kWh(税抜き)
売電先関西電力、エネット(NTTファシリティーズ経由)
●発電所の概要
発電所名昭建柏原ソーラー発電所
住所滋賀県米原市須川字砂走52番5ほか
敷地面積約2万9928m2
発電事業者昭建
太陽光パネル出力2455.56MW(第1期:1846.32MW、第2期:393.96kW、第3期:215.28kW)
年間予想発電量約270万kWh
EPCサービスきんでん
アスファルト舗装近江道路土木
O&Mきんでん
太陽光パネル京セラ製(60セル・245W/枚、9144枚:第1期 7536枚、第2期 1608枚、260W/枚:第3期 828枚)
PCSTMEIC製(出力665kW・直流入力1000V対応機、3台)
架台京セラソーラーコーポレーション製
売電開始日2014年4月28日
FIT上の買取価格36円/kWh(税抜き)
売電先関西電力、エネット(NTTファシリティーズ経由)