稼働して約6年、発電量が増える滋賀の「舗装メガソーラー」

雑草対策は不要、パネル洗浄も奏功

2019/02/12 06:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 滋賀県湖南市石部北にあるアスファルトコンクリート(アスコン)工場の敷地内に、出力約1.81MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「昭建石部ソーラー発電所」が立地している(図1)。

図1●アスコン工場の敷地内にある
出力約1.81MWの「昭建石部ソーラー発電所」(出所:昭建)
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 発電所名の通り、地元の土木を中心とするゼネコン(総合建設会社)の昭建(大津市)が発電事業者となる。

 同社は、近隣の滋賀県米原市にも、出力約2.45MWの「昭建柏原ソーラー発電所」を開発・運営している。

 昭建の2カ所のメガソーラーには、一般的な太陽光発電所ではほとんど見られない特徴がある。敷地全体をアスファルトで舗装していることだ(図2)。

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図2●「昭建柏原ソーラー発電所」のアスファルト舗装時の様子
(出所:昭建)

 国内の他のメガソーラーでアスファルト舗装されている場合、そのほとんどは、太陽光発電所に転用する以前から舗装されていたものをそのまま生かしたケースが多い。

 アスファルト舗装をそのまま活用すれば、施工や運用管理の条件が良く、コスト的にも有利になる。しかし、メガソーラーの新設時に新たにアスファルト舗装すると、初期コストが膨らんで投資収益性が下るため、ほとんど採用されない。

 昭建の場合、太陽光発電設備の設置時に、新たに舗装した。本業でアスファルト舗装を手がけているため、効果的な施工で相対的にコストを抑えられるノウハウがある。さらに、O&M(運用・保守)の手間を考えると、事業期間トータルでは収益性が高まる可能性が高く、舗装によるリスクにも対策を打てるという。本業の知見を生かしたといえる。

 湖南市のメガソーラーは、2013年2月に稼働し、約6年経つ。米原市のサイトは、約1年後の2014年4月に稼働し、こちらは、あと2カ月で5年間が経過する(稼働直後のメガソーラー探訪)。

全面舗装で除草も最小化

 同社によると、アスファルト舗装の利点は、まず、設備の施工が容易になり、建設コストを低減できることがある。次に、稼働後には、地盤の沈下が防げる上、雑草の成長を抑え、O&M(運用・保守)のコストを低減できることがある。

 施工性が向上するのは、舗装によって、敷地全面が平坦になるため、施工の作業そのものだけでなく、運搬や移動まで全体の効率が増すためである(図3)。

図2●道路工事のようにチョークで位置を示し、効率的に設置できた
稼働直後時点の昭建柏原ソーラー発電所(出所:日経BP)
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 また、雨天時にも、地面が安定しているため、晴天時に近い環境で施工できる効果がある。これは、工期が伸びにくく、施工コストを最小化できる利点につながる。土の上で施工するメガソーラーの場合、一般的に雨の後は1~3日間、工事できないことが多い。

 実際の施工時には、重機やフォークリフトなどを積極的に使うことで、設置位置まで効率的に資材を運ぶなど、搬入や設置場所への運搬作業が容易になった。台車に工具や備品を載せて、移動しながら順に工場の流れ作業のように設置できることも、工期の短縮や施工精度の高さにつながった。

 例えば、コンクリート2次製品による基礎はフォークリフトで、太陽光パネルはハンドリフトで、いずれも作業員1人で設置位置まで運んだ。舗装しない一般的なメガソーラーでは、二人一組で太陽光パネルを手で持って運ぶ。

 稼働後は、草刈りが不要なことで、一般的なメガソーラーに比べてO&M費用を削減できる効果が大きいという。また、草刈りの際に、誤ってケーブルを切ってしまうといったトラブルも無縁になる。

 湖南市のメガソーラーでは、敷地内での除草は不要だが、外周を囲っているフェンスの周辺は舗装していないために、雑草が生えるため年に1~2回、除草している。

 フェンスの周辺をアスファルト舗装できなかったのは、敷地の近くを流れている川を管理している滋賀県の河川課から要請されたためという。河川の災害時に、フェンスを取り外しやすいようにする目的からだった。

アスファルト上でもパネルの温度上昇を防ぐ

 太陽光発電所内のアスファルト舗装には、懸念される点もある。最大の懸念は、土などの地面に比べ、強い日差しにより地表温度が上昇する度合いが高く、結晶シリコン型の太陽光パネルの変換効率が下がる恐れである。

 昭建は、この対策として、アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)の前後間隔をできる限り詰めて、アレイ間の舗装面積を最小化すること、さらに、アレイ間の舗装の上には、できるだけ影がかかるような設計とした。

 これによって、直射日光が当たる舗装面を最小化し、太陽光パネルの温度上昇を抑えられるようにした。湖南市の発電所では、設置角は10度、アレイの前後間隔は60cmとした(図4)。

図4●設置角は10度、アレイの前後間隔は60cm
太陽光パネルは80セルのタイプ。セルは8×10で並ぶ。湖南市の発電所(出所:日経BP)
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 アレイは、横向き3段で構成した。冬至の日に、最下段のパネルには、影がかかる設計となっている。

 影がかかった場合でも、ストリング(太陽光パネルを接続する単位)の構成を段ごとに分けているため、中段と上段のパネルで構成されるストリングには影のかかるパネルが含まれない。これにより3分の2のストリングは影の影響を受けずに発電できることになる。

 パネルの選択でも、影の影響に配慮した。当時一般的だった60セル品ではなく、「80セル」品を採用した。この製品は、通常の3バイパス回路ではなく、4バイパス回路のため、影の影響でバイパスされるセル(発電素子)の範囲を、通常の3バイパス回路のパネルに比べて減らせる。下から4分の1のセルがバイパスされて発電しない状態になったとしても、残りの3分の4のセルは通常通りに発電できる。

 アレイ間隔を詰めた設計としたことで、太陽光パネルの設置枚数を増やせた。設置角が20度のアレイを並べるスペースが生まれ、それを最後列に配置した。

 また、アレイ間隔をここまで狭めても、草刈りなどは不要なので、人の通れるスペースさえあれば、点検はできるという。

日射強度、発電量が上昇基調で推移

 こうした工夫の効果は、稼働してから約6年の間、どのように現れているのだろうか。「発電量に、はっきり現れているように感じる」と言う。

 近隣にある同規模の連系出力の太陽光発電所では、年間発電量が約180万kWhに留まるのに対して、石部のメガソーラーは200万kWh以上で推移しているという。

 ここには、アレイ間隔を60cmに詰めたことで、パネルの設置枚数が増えた効果のほか、舗装面への直射を減らしてパネルの温度上昇を抑える効果も寄与していると見ている。

 湖南市のメガソーラーでは、2013年2月に稼働して以降、2016年ころに一時的に下がった時期を除き、発電量は年々増える傾向にある。これは、滋賀県南部でこの期間の日射強度が高まっている傾向にあることが大きく、月ごとの「日射強度と発電量の相関」のデータから把握している(図5)。

図5●湖南市の発電所における月ごとの日射強度(上)と発電量(下)
(出所:昭建)
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 もう一つ、発電量を高める変化があった。本業のアスファルト材の生産設備が更新され、2018年夏に新たな生産設備が稼働したことによる(図6)。

図6●新たなアスファルト材の生産設備はメガソーラーから離れた場所に
(出所:日経BP)
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 実は、それまでの生産設備は、メガソーラーに近い位置に立っていた。このために、メガソーラー東側の太陽光パネルの一部は、午前中にこの生産設備の影がかかっていた。

 新たなアスファルト材の生産設備は、メガソーラーから離れた場所に立ち、太陽光パネルに影を落とすことがなくなった。

アスファルト材工場特有の粉塵、パネルを年1回洗浄

 湖南市のメガソーラーでは、発電量をより増やすため、年に1回、太陽光パネルを洗浄している。

 アスファルト材の生産では、砕石や砂などを原料として扱う。これらは、生産設備に投入される前は、敷地内の所定の位置に保管されている。

 湖南市のメガソーラーは、近くに積まれているこうした砕石や砂から、細かい汚れが飛んできて、太陽光パネルの上に乗り、比較的、表面が汚れやすい環境にある。少し汚れても、雨が降ればほぼ落ちて、通常は発電量を大きく損なうことはないと見ている。

 ただし、発電量が最も多い4~6月の間には、より発電量を多く稼ぐために、年に一回、太陽光パネルの表面を洗っている(図7)。

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図7●洗浄時の様子
(出所:昭建)

 洗浄には、農業用のビニールハウス用の洗浄器具を使っている。ホチキスなどで知られるマックスが販売している器具で、これを改造して、より洗浄作業の効率を高めている。

 このビニールハウス用の洗浄器具は、樹脂でできた回転ブラシに水を流しながら洗う仕組みで、ドイツのケルヒャーが販売している高圧洗浄機用の太陽光パネル洗浄用器具と同じような発想の製品である。

 ケルヒャーの製品よりも、「コストが安いうえ、似たような効果と作業効率を実現できる」としている。

 昭建は、回転ブラシを1つ追加して、2個の回転ブラシで同時に洗うことで、洗浄面積を増やし、作業効率を高めている。これでも、湖南市のメガソーラーの約6000枚のパネルを洗い終わるのに、5日間を要するという。

積雪の影響が大きい山あいの発電所

 米原市のメガソーラーは(図8)、太陽光パネルを増設した。第1期の約1.846MW、第2期の約394kWに加えて、第3期の約215kWが増えている。増設後の太陽光パネル出力は約2.455MWとなっている。PCS出力は1.995MWで変わらない。

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図8●出力約2.45MWの「昭建柏原ソーラー発電所」
滋賀県米原市に立地(出所:昭建)

 一方で、湖南市のメガソーラーとは逆に、日射強度が2017年以降、わずかながらも下がる傾向で推移している(図9)。この要因として、年による積雪の状況の違いが影響していると分析している。米原市のメガソーラーは、山あいに立地している。

図9●米原市の発電所における月ごとの日射強度(上)と発電量(下)
(出所:昭建)
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 米原市のメガソーラーは、湖南市の発電所と異なり、積雪地帯にある。発電設備も、積雪対策を講じた。

 パネルの設置角は、湖南市のメガソーラーの10度に対して、米原市では15度と大きくした。パネル低部の設置高は60cmから80cmに広げた。架台はアルミ製から鉄製に変えた。パネルは80セルの322W/枚品から、通常の60セルの245W/枚に変えた。いずれも積雪や積雪時に想定される垂直荷重に対応するためという。

 稼働した初年度となる2014~15年にかけての冬季は、積雪の回数や量が比較的少なく、発電量は想定以上に好調に立ち上がった。しかし、その後、2017~18年の冬季には、福井県など日本海側で大雪が相次いだ。この際、米原市のメガソーラーにも大量の雪が積もるなど、積雪の回数も量も増えた。

 こうした積雪の状況によって、好天の日時が減り、日射強度に影響しているという。発電量については、増設の効果でわずかながらも増えている傾向にある。

●発電所の概要
発電所名昭建石部ソーラー発電所
所在地滋賀県湖南市石部北2丁目2104番地
(昭建の石部アスコン工場の敷地内)
敷地面積約1万7240m2
発電事業者昭建(滋賀県大津市)
太陽光パネル出力1.8118MW
パワーコンディショナー(PCS)出力1.890MW
年間予想発電量約170万kWh
EPC(設計・調達・施工)サービスきんでん
アスファルト舗装近江道路土木(滋賀県甲賀市)
O&M(運用・保守)サービスきんでん
太陽光パネル京セラ製
(80セル・322W/枚、5627枚)
PCS東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(出力630kW・直流入力1000V対応機、3台)
架台京セラソーラーコーポレーション製
売電開始2013年2月26日
固定価格買取制度(FIT)上の売電単価40円/kWh(税抜き)
売電先関西電力、エネット(NTTファシリティーズ経由)
●発電所の概要
発電所名昭建柏原ソーラー発電所
所在地滋賀県米原市須川字砂走52番5ほか
敷地面積約2万9928m2
発電事業者昭建
太陽光パネル出力     2455.56MW
(第1期:1846.32MW、第2期:393.96kW、第3期:215.28kW)
PCS出力1.995MW
年間予想発電量約270万kWh
EPCサービスきんでん
アスファルト舗装近江道路土木
O&Mサービスきんでん
太陽光パネル京セラ製
(60セル・245W/枚、9144枚:第1期 7536枚、第2期 1608枚、260W/枚:第3期 828枚)
PCSTMEIC製
(出力665kW・直流入力1000V対応機、3台)
架台京セラソーラーコーポレーション製
売電開始2014年4月28日
FIT上の売電単価36円/kWh(税抜き)
売電先関西電力、エネット(NTTファシリティーズ経由)