米国のIT産業を中心に盛り上がっている宇宙ビジネス。前回は日本企業もそこに食い込める可能性があることを紹介した。そもそも、彼らはどういった動きに商機があると考え、開発投資を続けているのか。宇宙産業に関する調査を行っているベイカレント・コンサルティングのコンサルティング本部 マネージャー堀口真吾氏に解説してもらう。

輸送システムの低コスト化が牽引

 ここで、今なぜ宇宙産業が盛り上がっているのかをおさらいしておこう。宇宙空間を地上の経済と結びつけて、ビジネスを立ち上げ宇宙産業を活性化するためには、何よりも低コストの宇宙輸送システムが大前提となる。今は、このコスト低減が現実的になりつつある。2020年~2030年には、宇宙輸送システムが現在に比べて数十分の1という圧倒的低コストになると見込まれている(図1)。

図1 宇宙輸送システムのコスト予測
(図:内閣府宇宙政策委員会資料を基にベイカレント・コンサルティングが作成)

 ここ20年ほどで、ロケットのコストは徐々に下がってきた。これは、さまざまな技術革新などにより実現した。日本の基幹ロケットの場合、1996年開始のH-Ⅱ Aロケット開発では宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を主導して委託研究開発を実施していたのに対して、2003年開始のH-ⅡBロケット開発では、民間主体の開発に切り替えることでコスト削減を実現した。今後は、従来使い切りだったロケットを再利用することで、さらに数十分の1といった低コストロケットを実現しようという段階に入る。なお、コスト低減策などの詳細については、次回以降の記事での紹介を予定している。

 数十分の1というドラスティックなコスト低減が実現されることで、各種需要が喚起されると予測されている。例えば内閣府 宇宙政策委員会資料によると、世界全体で約13兆円とされる衛星サービス(通信/放送/測位/リモートセンシング)や、世界全体で約5500億円とされる宇宙・惑星探査に関わる宇宙輸送といったロケットに直結する需要は、現在の10倍程度になると予測されているのだ。低コストロケットの開発にいそしむSpaceX社やBlueOrigin社といった米民間企業は、まずはこうした手堅い需要を見込んで投資しているというわけだ。

 同資料によると上記以外の用途、例えば観光や旅行といったエンターテイメント、医療、エネルギー等については、ロケットのコストが百分の1程度になれば、大規模な需要が生まれると見込まれている。もちろん、コスト以上に宇宙・惑星で何が実現できるのかという点は重要だが、ロケットの低コスト化が牽引する市場は決して小さくはないのだ。

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