宇宙関連のビジネスアイデアを競う「S-Booster 2017」の最終選考会が、2017年10月30日に都内で開催され、個人で応募した松本紋子氏の「超低高度衛星搭載ドップラーライダーによる飛行経路・高度最適化システム構築」が大賞(賞金300万円)に輝いた。人工衛星の観測結果から風を予測して、航空機の飛行経路を最適化することで、飛行時間の削減や二酸化炭素排出量の抑制を図るというアイデアだ。全日本空輸(ANA)社員である同氏の業務上の課題が提案の発端となった。

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図1 大賞を受賞した松本紋子氏(右から2人目)
パネリストとして登壇した宇宙飛行士の若田光一氏(左端)と女優の剛力彩芽氏(左から2人目)。宇宙飛行士の山崎直子氏(右端)は特別審査員として参加した。

 松本氏のアイデアは、高度200~300km程度の低軌道を周回する人工衛星に搭載したドップラーライダーを利用するというもの。ドップラーライダーは、光を照射して空気中のちりや微粒子(エアロゾル)からの散乱光を受信する観測機器。高精度・高頻度かつ広域で風を計測でき、それに基づいて航空機が飛行する高度の風を予測して飛行経路を最適化できるとしている。実現可能性と実効性の高さが高く評価された。

(a)ANA入社は2008年。以前の業務での経験から今回のアイデアを提案したという。現在はパイロットのマニュアルの作成管理や電子化対応などに従事している。
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(b)プレゼンテーション資料の一部。風速・風向を予測して飛行経路を最適化することで、飛行時間の短縮や燃料消費の削減が期待できる。
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図2 プレゼンテーションに臨む松本氏

 航空機の飛行経路を決める際には、風向や風速を把握して燃料消費や飛行時間を抑制できる経路や高度を予測する。しかし、特に洋上は観測地点が少ないため正確に風を予測するのが難しい。ANAに務める松本氏は、以前、飛行経路などの運行管理の仕事で携わっていた。その際「燃料消費を抑えつつ乗客をいち早く目的地に届ける経路を見つけたい」との思いがあり、このアイデアに行き着いたという。審査委員長の村上憲朗氏(元Google日本法人名誉会長)は「技術的根拠がしっかりしていて実現可能性が高いアイデア。応用が広がれば他の利用方法に発展する可能性がある」と評価した。

 日本では今のところドップラーライダーを打ち上げる予定はないものの、欧州宇宙機関(ESA)がドップラーライダー搭載の観測衛星を高度350kmの周回軌道に打ち上げる計画という。

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