「再エネビジネス」最前線

「水上太陽光」の利点と課題、水中ロボットに期待も

<第16回>世界の「水上」プロジェクトを日本が牽引

2019/04/24 05:00
大串卓矢=スマートエナジー社長

 韓国で出力1500MW超、中国で数百MW、インドネシアやベトナムでも大規模な水上太陽光発電プロジェクトが計画されている。日本で数多く立ち上がった水上太陽光発電が世界中から脚光を浴びている。世界的に固定価格買取制度(FIT)の売電単価が低下する一方、低コストで建設できる太陽光発電の好立地が減っていくなか、何も使い道がない水面の有効活用にもなり、水質にも有用という認識が広まり、ヒットしているようだ。今回は、水上太陽光の特徴について解説する。

世界の「水上太陽光」、半分が日本

 日本では水上に建設するメガソーラー(大規模太陽光発電所)が盛んである。世界銀行とSERIS(The Solar Energy Research Institute of Singapore)の調査によると、世界の水上太陽光発電の導入量は出力1.1GWに達し、そのうち約半分が日本での導入だという。

 スマートエナジーでも3年前に埼玉県川島町に出力7.55MWもの水上太陽光発電プロジェクト「川島太陽と自然のめぐみソーラーパーク」を開発した(図1)。

図1●出力7.55MWの「川島太陽と自然のめぐみソーラーパーク」
(出所:スマートエナジー)
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 その経験からいうと、水上太陽光には以下のような特徴がある。まず利点としては、(1)地権者の権利関係が整理されている、(2)水力発電のように水を利用しないので、水利権上の複雑な問題は少ない、(3)造成工事が不要で、着工から完成まで比較的短時間で完成する、一方課題としては、(4)特殊工事に精通する工事業者が少ない、(5)フロート架台が20年以上の耐久性を有するのか不安ーーなどだ。

 いくつかの課題はあるものの、日本は新田開拓のためにため池を数多く作った歴史を持ち、水上太陽光発電のポテンシャルは大きく、今後も積極的な開発が続きそうだ。

「土地」に関する2大メリット

 砂漠のように使い道の少ない広大な土地がある国は別として、アジア諸国では土地が希少資源である場合が多い。日本や韓国ではそれが特に顕著である。そのような国では、太陽光発電を安価に実施するためには、土地代が安いということが必要条件である。

 土地代はどの程度のコスト感なのか、日本の一般的な農地を借りた場合で考えてみよう。農地の賃料を、年間100円/m2と仮定する。300W・60セルの太陽光パネルが1枚2m2だとすると、300Wで年間賃料200円である。パネル間の離隔を考慮すれば、1円/kWh以上の負担と考えて良いだろう。売電単価は世界的にみて5~10円/kWhであり、1円のコスト負担はかなり大きいと考えられる。

 日本の農地を借りる計算例をみても、土地代を節約することが太陽光発電事業にとって、とても大きなインパクトを持つことがわかる。

 この点で、水上太陽光は「土地の賃料が安い」「造成工事をしなくて良い」という2大メリットを享受できる。いままで何にも活用されていなかった「水上」を貸すことに抵抗感を感じる池や湖の管理者が少ないということも追い風の要因として挙げられる(図2)。

図2●施工中の水上太陽光。千葉県市原市にある国内最大(13.7MW)の水上メガソーラー
(出所:日経BP)
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管理コスト捻出の「救世主」

 経済的な利点だけでなく、「水」に対するメリットを指摘する管理者も多い。

 湖沼や調整池の管理者にとっては、日射が光に届かなくなることで、水が汚れるのではないか、という心配の声も聞こえる一方、逆に、水面を覆うことで、藻が発生しにくくなる効果があり、水質にとってはプラスの効果もあるという。

 実際、太陽光パネルによる水面のカバー率は30~60%になるが、これにより水質が悪化した例はほとんど聞かない。スマートエナジーが開発した「川島太陽と自然のめぐみソーラーパーク」の例でも、水面のカバー率は約50%である。運転開始後、すでに2年以上たつが、水性昆虫や生息魚類の調査を実施し、生態へ悪影響があったとの結果は出ていない。

 プロジェクトによっては、発電した電気を用いて、エアレーション設備を動かし、水中酸素濃度を調整することで、水質改善にチャレンジするプロジェクトもあるほどだ。もちろん、水に対して有害物質をまったく排出しない太陽光発電の特性が前提としてある。

 経済的利点といえば、発電事業者へのメリットだけでなく、池や湖の管理者へのメリットも大きい。

 日本の事情で言えば、農業を廃業する農家が増えることで、ため池の維持管理コストの負担問題が発生していた。みんなで支えてきたため池であったが、支える農家数が減ることで、一農家あたりの負担が増している。そこで、売電収入や発電事業者からの地代をため池の維持管理コストに充当できる水上太陽光発電は、「救世主」として歓迎されるケースも多い(図3)。

図3●兵庫県加古川市の農業用ため池「広谷池」を活用した西日本最大(6.8MW)の水上太陽光
(出所:日経BP)
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「アンカリング」にノウハウ

 太陽光パネルについては、水上設置対応のものも多い。それほど特別なものではない。しかし、水上太陽光発電は水上に浮いている必要がある。将来的に水没しても良い太陽光発電システムが開発されるかもしれないが、現状のシステムにそこまでの耐水性はない。そこで、「フロート架台」と呼ばれる、太陽光パネルを搭載して水に浮かせるための部材が必要となる。フロート架台には、20年超の耐久性、風に吹かれても転覆しない、メンテナンスのために人が乗れることなどの性能が要求される。

 水上太陽光発電システムで最も考慮すべき設備の1つは、「アンカリング」と呼ばれる繋留である。風で水上を漂ってしまったり、ひっくり返ったりしないようにするために、水底や近くの岸へ太陽光発電システムを固定するための仕組みである。

 フロート架台にケーブルを繋げて、水底に沈めたアンカーなどにくくりつけ、フロートの「島」を所定の位置にしっかり固定する。ただし、水面は上下するので、ケーブルには余裕がなければならない。

こうした二律背反する要求をいかにクリアしていくかが、水上太陽光設備を設計する際の重要なノウハウになる(図4)。

図4●フローティングシステムの一例
(出所:三井住友建設、SMCテックパンフレット)
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O&Mでは人が「潜水」

 水上太陽光発電設備のO&M(運営・保守)は陸上に比べて、アクセスしにくいというデメリットがある。設備に近くにはボートに乗らなければならないため、強風時など船が出せないときは、人が近づいてのメンテナンス作業は出来ない。

 また、アンカリングケーブルなどの水中設備に対するメンテナンスも負担となっている。フロート設備は、ケーブルによって水底へ固定されているが、水面が上下するため、ケーブル長には余裕をもたせている。

 しかし、水中ケーブルが絡まってしまうと、水面が高くなったときにフロートが水没してしまう恐れがある。そのために、定期的にケーブルをチェックし、異常がないかどうかを確認する必要がある。現在は、人間が潜水して確認している。将来的には「水中版ドローン」のような遠隔操作の水中ロボットが実用化されれば、人が潜らなくてもチェックできるかもしれない。

 また、池には多くの水鳥がやってくる。そのため、太陽光パネルに水鳥の糞が多い。そこで、スマートエナジーでは水上太陽光発電のO&Mの場合は特に、ドローンを飛ばして、パネルの汚れの場所を特定し、それを除去することに取り組んでいる(図5)。

図5●水上太陽光の架台に止まる野鳥。埼玉県桶川市のサイト
(出所:日経BP)
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