AIスピーカー(スマートスピーカー)という新市場を開拓し、現在7~8割の市場シェアを持つとされる米Amazon.com社。同社が注力しているのが「Amazon Echo」シリーズのラインナップ強化と、サードパーティーが提供する機能やサービスを実現するアプリケーション(アプリ)「Alexa Skills(スキル)」の充実だ。現在のスキル数は2万を超えるとされており、ライバルの「Google Home」(米Google社)のアプリ数580程度を30倍以上引き離して独走する。

 スキルは、スマートフォン(スマホ)のアプリのように、Amazon Echoというプラットフォームの地位を盤石にするために不可欠なものである。同時に、Amazon社にとっては「ネット通販の売上増」「プライム会員(コンテンツ売り上げ)獲得」のためのツールという側面もある。

 では、スキルを開発する企業や個人などが成功のために知っておくべきことは何か。米国におけるAIスピーカー用アプリに詳しい、Automagi(旧Jibemobile、2016年に社名変更)取締役COOの清水孝治氏に話を聞いた。同社はAI技術の開発や関連する受託開発を行っている企業で、これまでにNTTドコモのユーザー密着型情報提供サービス「iコンシェル」向けにレコメンデーション技術を提供したり、各社のチャットボットに向けたAIを提供したりしている。

――――サードパーティー製のスキルとしては、どういったものが人気になっているのでしょうか。

 Amazon.com社がAlexa Skillsサイトで公表しているランキングを見ると、強いのは「音楽」。そしてニュースやラジオなどの「オーディオコンテンツ」です。あとは「ゲーム」が圧倒的に人気です。

Amazon.com社のAlexa Skillsサイト。“Alexa, what are your top skills?"として、10位までのランキングが公開されている
(画像:Amazon.com社のサイトより)

 ここで言う「音楽」というのは普通の音楽ではなく、いわゆる「ヒーリングミュージック」。例えばランキング上位にある「Zen Sounds」というのは、川のせせらぎや小鳥のさえずりなど禅に集中できるような音ですし、雨が降っている環境音(「Ambient Sounds:Rain Sounds」)やいわゆるα波が出るような「Sleep Sounds」なども上位に入っています。つまり、リビングルームやベッドルームでリラックスするためにかける音楽が意外に人気なんです。

 ゲームの一番人気は「Jeopardy!(ジョパディ!)」で、全スキルの中でもNo.1。米国テレビの人気クイズ番組をスキルにしたものです。いろいろなトリビア的クイズが出題され、音声で選択肢を提示します。テレビに連動して、日替わりで毎日6問挑戦できます。テレビ番組はオーディオコンテンツともなかなか相性がいいですね。

「Jeopardy!」紹介ページ
(画像:Amazon.com社のサイトより)
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 また、「The Magic Door」もヒットしています。これはいわゆる「ノベルゲーム」、「テーブルトークRPG」をスマートスピーカーのスキルにしたもの。テーブルトークRPGは日本でも1990年代に流行しました。ゲームマスターが「森で狼に遭遇しました。戦いますか、逃げますか」というようなシナリオを読み上げ、選択肢に応じて指定の番号先のシナリオに飛び、戦う時はサイコロを振るというものです。絵が必要ないので、実はスマートスピーカーとの相性が良く、ブームが再燃しています。過去の資産が活用できてしまうのです。

「The Magic Door」紹介ページ
(画像:Amazon.com社のサイトより)
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 オーディオコンテンツは「Fox News」といった有名なニュースなどが強い。それから、Amazon.com社自身が手掛ける「Amazon Storytime」も人気です。著作権フリーとなった短編小説や童話を読み上げるオーディオブックです。

 日本版のスキルも発表されていますが、ピカチュウや初音ミクと話すなどキャラクターものなどで、ゲームやヒーリング系音楽といった切り口はありません。日本でもテレビのクイズ番組のスキルや、テーブルトークRPGなどのゲームのスキルが登場すれば、人気が出る可能性は高いと思います。

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