だが、総括原価方式が撤廃されれば、大手電力は経営効率の改善に着手し、人員整理や不要な発電所の廃棄を行うことが見込まれる。また、守勢に回るだけでなく、新電力に切り替えられた需要家の奪還を図るべく、猛烈な営業攻勢を仕掛けてくるだろう。

 既に、大規模に事業を展開する大手スーパーマーケットや大規模工場などの大口需要家に対して、地元の大手電力がかつてないほどの割引額を提示して需要家をつなぎ止めようとしていると伝えられている。

 筆者の知人が運営する病院でも、新電力が電力料金の10%割引を提示したところ、それを大手電力に伝えるや否や20%の割引を提示してきたという。

 経営効率を最大化し、攻撃に回った大手電力が相手では、価格競争で対等に張り合うことはおよそ現実的でないことを改めて思い知る出来事だ。総括原価方式の撤廃は、大手電力が本気で新電力と対峙するきっかけとなり、新電力にとっては厳しい逆風が吹くことになるだろう。

もう、再エネは安く買えない

 もう1つのFIT発電所の激変緩和措置終了も、新電力にとって泣きっ面に蜂となりそうだ。

 2016年4月以降、新電力が太陽光発電やバイオマス発電などFIT発電所と特定契約を結んで電力を調達する場合、回避可能費用(実質的には調達費用)の単価は市場価格と連動して決めることになった。

 それまで回避可能費用は設備認定時期によって月ごとに決まる固定単価で、しかも市場価格より廉価であった。

 そのため、以前からFIT発電所と特定契約を結んでいた新電力は、2016年4月から5年間は従来どおりの回避可能費用単価を適用する経過措置がとられた。回避可能費用の激変緩和措置である。2014年3月31日以前に設備認定を受けたFIT発電所の場合、回避可能費用は平均6円/kWh程度と、市場価格に比べて圧倒的に低い水準にある。

激変緩和で再エネを安く買えた時代は終わる
回避可能費用の推移(筆者作成)
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