「どのように使うのか」というメッセージが必要

――五輪施設を何のために建設するかという狙いが明確だった。

山嵜:そうだ。まず「ロンドンの街の魅力を発信する」という五輪の目的が明確だ。そのうえで、五輪というイベントのなかで施設をどのように使うのか、その場所が最適なのか、仮設なのか常設なのか、といったストーリーが考えられている。

――東京五輪における新国立競技場には、そういった位置付けが見えにくい。

山嵜:例えば、新国立競技場になぜ博物館が必要なのか。仮に意図があったとしても、国民には伝わっていない。コンペ要綱の精査が必要だったと思う。しかも、東京五輪というイベント自体に対する運営者側のメッセージが見えないうちに、巨大施設の建設の情報だけが伝わった。「結局、建設業界が潤うだけでしょう」と諦め気分に陥った国民は多かったはずだ。

 東京五輪の目的は何か。その目的を実現するために新国立競技場をどのように使うのか。観光促進が目的であれば、東京の街並みをどのように見せるのかという戦略を示すべきだ。戦略があれば、専門家を交えて会場の配置やプレイベントの企画なども提案できただろう。

 こうした狙いを明確に伝えることで、国民も新国立競技場の建設に前向きな関心を寄せるのではないだろうか。

 日経アーキテクチュア10月10日号特集「『新国立』破綻の構図」では、白紙撤回となった新国立競技場の旧整備計画から建築界が今後、生かすべき教訓を考察しています。ザハ・ハディド・アーキテクツをはじめとする設計関係者などへの取材によって、設計の前線で何が起こっていたのかにも迫っています。ぜひ、ご一読ください。