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スポーツIT革命の衝撃

選手とサポーターで映像「全員分析」、ラクロス日本代表が世界で勝つ秘策

2018/12/17 05:00

内田 泰=日経 xTECH

秘策は「チーム全員分析」

 強豪国の選手と比較すると体格で劣る日本代表の武器は、組織力とコミュニケーション力。今回、メダル獲得のために投入した秘策が、自らの武器を活かした「チーム全員分析」である。

 ラクロスの世界選手権では10日間で7~8試合を戦う必要がある。勝利をつかむためには対戦国の試合や選手の分析が不可欠だが、46チームのどこと対戦するのか大会前には分からない。しかも、ラクロスの日本代表は、選手23名中、会社員が17名など全員がアマチュア。当然、プロスポーツのように専門の分析官が複数名帯同しているわけではない。対戦相手の試合映像は撮れたとしても、それを十分に分析するリソースがないのだ。

 膨大な量の映像分析をどのように実現するか。その解決策が、選手はもちろん、日本代表をサポートするボランティアを含めた「チーム全員分析」だった。このために導入したのが、スポーツ向けのビデオ分析ツール「SPLYZA Teams」と「日本代表アナライジングサポーター制度」である。

1人の作業時間は15分程度

 SPLYZA Teamsは、スポーツ向けのソリューションを開発するベンチャー企業のSPLYZA(スプライザ)が提供する。試合の映像を単にチーム全員で共有するだけでなく、選手自らが分析作業を担当することで試合中に状況判断する力を身につけたり、チーム内のコミュニケーションを活性化するためのツールだ。既に日本フットボールリーグ(JFL)に所属するサッカークラブや、大学・高校のサッカー、ラグビー、ラクロスなどの部活で使われている。

 日本代表はSPLYZA Teamsを2018年1月に導入した。それ以前はチームのマネージャーが映像を見て目視でスコアシートに記録していたという。当然、映像にタグ付けはしていなかった。

 同ツールを使うと、これまで1人が数時間を費やしていた映像の編集作業をチーム全員で分担できる。コーチが試合終了後に映像をクラウドにアップロードすれば、後は選手一人ひとりが、例えば試合時間(映像の長さ)を人数で割った時間を一人の担当分として、あらかじめチームで設定・登録したタグを映像に付ければいい。多くの場合、1人当たりが1~3分の映像を担当するので、初めてでも15分程度で1試合の分析作業が完了するという。

ビデオ分析ツール「SPLYZA Teams」であらかじめ登録されたタグを付けているところ
2018年6月9日に行われた、日本代表対イングランド代表の試合(図:SPLYZA)
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 タグが付けられた映像は、「DVDのチャプター再生」と同様の機能を持つ。つまり、タグの付いた個所にスキップして映像を頭出し再生できる。「観たいシーンをすぐに観られるようになる点に価値がある」とSPLYZA代表取締役の土井寛之氏は言う。例えばゴールシーンのみを選択的に再生できたりする。また、映像にはコーチが字幕を入れたり、矢印などを描画して選手を指導したりできる。タグの種類ごとに試合のデータを自動で集計する機能もある。

タグを付けた映像
所定のタグをクリックすることで当該シーンを頭出し再生できる(図:SPLYZA)
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SPLYZA Teamsで映像にタグ付けすると、種類ごとに試合のデータが集計される
(図:SPLYZA)
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