ホームラン増え、三振も増える

―― プロチームにおけるデータ活用は、ここ数年でどのように進展しているのでしょうか。

金沢 まず、サッカーでは以前よりもさまざまなデータを取れるようになり、分析も深まっているとは思います。ただ、現在は「何を重視すべきか」を皆で考え始めたフェーズといえます。例えば、走行距離なのか、トップスピードなのか・・・。

 サッカーというスポーツの特性として、「得点が入りにくい」「セットプレーになりにくい」ということがあります。野球だと「ノーアウト満塁から平均で何点入る」といったことがデータから分かりますが、サッカーではそういう場面が少ない。このため、データを細かく分析しても、「こういう状況なら何点」という正解を作りにくい性質があります。

 だから、現場ではチームとしてやりたいことができているかどうかをデータで分析するケースが増えています。例えば、「インテンシティー(強さ)」はどういう言葉の意味で、データとして何を指標とするかを決めていこうという動きが出ています。

 データスタジアムが運営する、サッカーをデータで楽しむための情報サイト「Football LAB」では、「ハイプレス」「コンパクトネス」「最終ライン」「敵陣ポゼッション」などの独自指標を作って評価を公開しています。具体的には、試合で取得したデータから偏差値を算出して評価しています。これは「勝てる」「勝てない」を直接示すものではありませんが、チームが目指しているサッカースタイルを実践できているかを数値で判断できます。

データスタジアムが運営する、サッカーをデータで楽しむための情報サイト「Football LAB」の画面例(図:データスタジアム)
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―― 野球ではどうでしょうか。データの活用方法に変化は見られますか。

金沢 もともと、プロ野球でのデータ活用は、スコアラーによるその日の対戦相手の分析や、セイバーメトリクス(データを統計学的見地から分析し選手の評価などに活用する分析手法)による埋もれた選手の発掘など、チーム編成での利用が中心でした。

 しかし最近では、選手が自らの能力改善のために活用するケースが増えています。「データ分析時代」の変化だと思います。例えば、投手がボールの回転数や軌道の変化量のデータをチェックして、思い通りの球が投げられているかを確認したり、新しい変化球を試してみたりしています。

 打球速度や打ち出し角度が分かるようになったことで、打者でのデータ活用も増えています。今年は「フライボール・レボリューション(革命)」が大きなトピックになっています。

 MLBでは下から上へのアッパースイングの選手が増え、実際にホームランの数が増えています。たとえ外野にいい当たりをしても、打ち出し角度が低ければライナーで捕られてしまう可能性があります。ならば、アッパースイングにして打球角度を高めてホームランになる確率を上げようということです。選手自らが「失敗してもいいから打球角度を高めるスイングを身につけよう」とツイッターなどで発信しています。そこには、データの裏付けがあります。

 その影響を日本で1番受けているのは、福岡ソフトバンクホークスの柳田悠岐選手でしょう。彼の場合は、フライの比率がもともと全体の3分の1程度でしたが、今年はそれが半分以上になっています。

 でも、アッパースイングの打者が増えた結果、高めのストレートの有効性が増し、三振の数が増えているというデータもあります。バッターが進化すれば、ピッチャーも進化するということです。

(次回に続く)