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スポーツIT革命の衝撃

プロ選手も「塾通い」、可視化が変える米MLBの選手強化

2018/10/01 05:00

内田 泰=日経 xTECH

 「8月以降、9月13日まで彼は32試合に出場して打率.367、10本塁打、29打点、8盗塁。OPS(出塁率と長打率を合計した打者の評価指標)は、球界トップの1.246を記録している」。米MLB(メジャーリーグ)のロサンゼルス・エンゼルスの地元紙「ロサンゼルス・タイムズ」は2018年9月14日、大谷翔平選手の活躍ぶりをこのようにデータ付きで紹介した。

 数あるスポーツの中でも、野球ほどデータが頻繁に引き合いに出されるものは数少ない。野球ファンの中には“データおたく”も数多く存在し、最も有名な一人は映画『マネー・ボール』の題材になった「セイバーメトリクス(SABRmetrics)」を提唱したビル・ジェームス氏だろう。

 セイバーメトリクスは、選手の成績や試合の結果など野球におけるデータを統計学的に分析して選手の能力、チームの強さなどを数値化し、チームの経営や戦略に役立てる手法である。マネー・ボールでは、“貧乏球団”のオークランド・アスレチックスのGM(ゼネラルマネージャー)のビリー・ビーン氏がセイバーメトリクスを駆使して、2000年代前半ごろに強豪チームを作り上げる様を描いた(原作:マイケル・ルイス著)。

 そのセイバーメトリクスとは別の切り口で、球界に大きなインパクトを与えているのがボールや選手の動きを追跡してデータ化するトラッキングシステム「STATCAST(スタットキャスト)」だ。「TrackMan(トラックマン)」(デンマークTRACKMAN)と「TRACAB(トラキャブ)」(米ChyronHego)という2つのトラッキングシステムを組み合わせたもので、TrackManは軍事用レーダーを応用し、投球の速度や回転数、変化量、さらに打球の速度や打ち出し角度などを算出する。一方のTRACABは別方向を向いた3台のカメラが1つのボックス内に収められた装置を使う、映像による追跡技術。選手の動きやポジションなどのデータを取得する。

 セイバーメトリクスがあくまで「結果」のデータを用いるのに対し、STATCASTでは選手のパフォーマンスに関する様々な「生データ」を取得できる。これらが野球のアナリティクスにどのような影響を与えているのか。その最前線を知ることができるのが、アメリカ野球学会(SABR:Society for American Baseball Research)が主催する「SABR Analytics Conference」。データの分析と活用、すなわち「アナリティクス(分析)」に特化したカンファレンスである。2018年3月8~10日、アリゾナ州で開催された今年のイベントをNHK BS1の番組「ワールドスポーツMLB」の取材で参加した、データスタジアム ベースボール事業部 アナリストの金沢慧氏に聞いた。(聞き手:内田 泰=日経 xTECH)

2018年3月8~10日にアリゾナ州フェニックスで開催された「SABR Analytics Conference」の様子。今年で7回目の開催
(写真:データスタジアム)
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