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スポーツIT革命の衝撃

「トークンエコノミー」が引き出すスポーツの巨大潜在力

「"SPORTS X"Conference 2018」報告(1)

2018/08/30 05:00

浅野智恵美=ライター

 仮想通貨の「ビットコイン」などを基軸にしたトークン(代替通貨)エコノミーの波が、スポーツ業界にも押し寄せている。ここ1~2年、トークンを活用する新手のサービスなどが世界各地で始まっているのだ。2018年8月2~3日に開催されたスポーツ産業の総合カンファレンス「KEIO SDM "SPORTS X"Conference 2018」(主催:慶応義塾大学大学院SDM研究科)では、「スポーツ×ブロックチェーン ~トークンエコノミーの未来~」と題するパネルディスカッションが開催された。ALIS 代表取締役の安 昌浩氏、KPMG/あずさ監査法人・アシスタントマネジャーの宮本 翔氏、KPMGコンサルティング・マネジャーの澤井 裕太氏、AGI Sports Management 代表取締役 / スポーツジャーナリストの上野 直彦氏の4名が登壇、国内外で現在進む「スポーツ×ブロックチェーン」「スポーツ×トークンエコノミー」について、事例を踏まえて語られた。

パネルディスカッション「スポーツ×ブロックチェーン ~トークンエコノミーの未来~」の様子
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魅力的なトークンエコノミーの条件満たすスポーツ

 初めに、安氏はブロックチェーンの仕組みや価値について解説した。ALISは2017年5月に設立されたベンチャー企業。仮想通貨で事業立ち上げの資金を集める仕組み「ICO(イニシャル・コイン・オファリング)」を利用して、ベンチャーながらも4.3億円の資金調達に成功している。

安氏 「よく誤解されがちですが、ビットコインができて、その一要素として作られた仕組みがブロックチェーンになります。第三者同士が金融機関の信用を必要とすることなく、価値の直接交換を実現するために作られた技術です。ビットコインが成り立つために重要な点が2つあります」

ALIS 代表取締役の安 昌浩氏
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安氏 「1つめはブロックチェーンの仕組みそのものです。実際はブロックではありませんが、ブロックだとイメージしてください。誰から誰にいくら送られたかといった、送金情報がブロックの中に入っていて、そのブロックが数珠つなぎになっています」

 「2つめは報酬です。もともとブロックチェーンの親であるビットコインは、ブロックチェーンと報酬が2つセットで掛け合わされて、ようやく非中央集権的な運用ができています。世間ではよくブロックチェーンだけを切り離して話すことがありますが、この報酬を外してブロックチェーンを語ることは、基本的にできないと考えています。このビットコインにより何ができるようになったかというと、価値と報酬が密接にひもづいた独自のエコノミーであるトークンエコノミーです。これを非中央集権的に作ることができたのが、革命的にすごいところです」(同氏)

 また、「イーサリアム」というブロックチェーンを使った技術が、トークンエコノミーの出現をさらに加速させたと安氏はいう。

安氏 「もともとビットコインのブロックチェーン上では、ビットコインのやり取りしかできず、他のデータを入れることはできません。ただ、イーサリアム上ではさまざまなトークンのやり取りが可能です。加えて、極めて安価・安全に独自の機能をもったトークンや、どういう形でトークンを払い出すかという報酬ポイントの設計もできます」

 「今までであれば、例えば企業がポイントサービスを作る場合、一定レベルのセキュリティーの担保を要するため人力が必要でした。かつ、そのポイントが流動性を持ち、さまざまな場所で使えるようにするためには、取り扱い可能な場所を増やす必要がありました。そういった問題をすべてイーサリアムが一手に担って解決してくれました。さらに仮想通貨取引所への上場等で、独自トークンに流動性を持たせることができます」(同氏)

 トークンには大きく「ユーティリティー型」「権利型」「証券型」の3種類があると安氏は話す。ユーティリティー型は、サービスを利用するために消費するトークン。実際、Dropbox(ドロップボックス)のストレージサービスをトークンを使って利用できるという事例がある。権利型はトークンを所持することで、何かしらの権利を得られるというもの。例えば会員権を持っていれば施設を利用できたりする。証券型は持っているだけで配当が得られるというもの。日本では「金融商品取引法」との兼ね合いで発行のハードルが高いが、世界的には最も流行しているという。

 安氏はトークンエコノミーの解釈にも人による違いがあると述べた上で、ひとつの解釈として「次の2つの要素を兼ね揃えなければトークンエコノミーではない」と話した。

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