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スポーツIT革命の衝撃

スポーツ界に新潮流、“大手IT企業発”の解析専門会社が始動

2018/07/20 05:00

内田 泰=日経 xTECH

 国内の大手IT企業の社内プロジェクトから、スポーツ分野向け映像検索・分析技術をコアにする新会社が誕生した。2018年6月12日に事業を開始した「RUN.EDGE」である。

 もともとは富士通の社内でプロジェクトが立ち上がり、同社が推進するオープンイノベーションを軸にした「デジタルイノベーター」の先例としてサービスを作り、これまでもプロ野球チーム向けに事業を展開してきた。この6月12日に事業体を起こして富士通が事業を譲渡、そこにスカイライトコンサルティングが出資した。富士通社内でゼロから立ち上がり、他社から出資を受けて独立したプロジェクトは初めてという。

 資本金は1億6000万円で、出資比率は富士通が69.4%、スカイライトコンサルティングが30.6%。代表取締役社長は、富士通時代に同事業を立ち上げた小口淳氏が務める。同氏は現在36歳。富士通系列の会社の社長としては、異例の若さだ。会社のロゴにも「FUJITSU」の文字はなく、こちらも異例。「通常は富士通のロゴを入れるのがルールだが、RUN.EDGEのブランディングのためにルールを変えてもらった」(小口氏)という。

 RUN.EDGEは、富士通で培ってきた技術を軸に、ベンチャー企業への投資や事業育成支援などを展開しているスカイライトコンサルティングのスタートアップに関する経営手法を取り入れ、スポーツ分析事業の拡大を図る。

プロ野球チーム向けの分析サービス画面例。特定の打者について、打席での結果、打球方向の比率、コース別や球種別の打率などを表示している。特定の投手を指定して対戦データを見たりすることもできる(図:RUN.EDGE)
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差異化のポイントはユーザー体験

 RUN.EDGEは既に、国内の複数のプロ野球チームなどに、クラウドベースの映像検索・分析サービスを提供している。プロ野球の全試合の映像に“人力”でタグを付け、そのデータとともに映像をクラウドに蓄積してサービスを提供している。いわゆる「SaaS(サース、Software as a Service)」である。

 プロのスポーツチームでは、試合の映像のチェックやデータ分析を元にした戦術の構築はもはや当たり前である。RUN.EDGEのサービスの売りは、UX(ユーザー体験)にあるという。対戦相手などの詳細なデータをタブレット端末の簡単な操作で一覧したり、特定の条件に絞ってデータをチェックできるのみならず、見たいシーンを素早く再生したり、映像を並べて比較したりできる。

 例えば「1球検索」。指定した投手と特定チームの左打者の対戦データを1球ごとにチェックできたりする。データを投球のコースや球種、カウント、ランナーの配置などでも絞り込める。

 また、「比較映像」では見たい映像を並べたり、重ねたりできる。例えば、今度対戦する投手のクセを見破るために、ストレートとフォークを投げた際のフォームを重ねて比較したり、自分の調子が落ちた際に、調子が良かった時のフォームと現在を比べてみたりといった使い方ができる。これまでにも野球チームの現場には、映像のシーンを切り出して見れるツールはあったが、このようにタブレットで簡単に映像を重ねたりできるものはなかったという。

比較映像の画面。バッティングやピッチングについて、同期した映像を並べたり、重ねたりして比較し、違いを分析したりできる(図:RUN.EDGE)
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