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スポーツIT革命の衝撃

気まぐれな自然に泣く海のスポーツ、救いの手はIoT

ICTが彩るウインドサーフィンW杯(上)

2018/06/07 05:00

今井拓司=ライター

競技の現場は「遠い沖合」

 日本国内で24年ぶりに開かれたワールドカップだった2017年の前回大会からは、「観るスポーツ」としてのウインドサーフィンの難しさが浮かび上がった。熱戦が展開する海面を、観戦者が集う海岸から遠く離れた沖合に設定せざるを得ないのだ。浜からは、競争の細部がよく見えない。レースの条件である安定した風速や風向を得る代わりに、競技の醍醐味が削がれてしまうわけである。

レース海面は遠く
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 この矛盾を解消しようと、開発途上の技術が会場の津久井浜に集結した。中でも先進的な取り組みが、選手に取り付けたセンサーで刻一刻と変わるレースの現状を仮想空間で可視化する試みである。富士通などが開発したセンサー端末とデータを集めるクラウド、スマートフォン向けアプリから成るIoT(Internet of Things)システムで実現した。

三次元CGと映像が相互に補完

 スマホのアプリ「GULLCAST」の画面に現れるのは、3D(三次元)CGが描き出す仮想のレース海面である。レースが始まると、各選手に対応したウインドサーフィンの画像が、海上での激戦さながら猛スピードで入り乱れる。ユーザーは画像に付けられた選手名と速度表示を手がかりに、自由自在に視点を切り替え、能動的にレース状況を把握できる仕組みだ。

 画面には洋上の本部艇から選手に指示を出す信号旗も表示した。競技に馴染みのない観客にも、ルールをわかりやすく伝える試みである。

仮想の海面上をウインドサーフィンが疾走(画像:富士通などが開発したiOS向けアプリ「GULLCAST」の画面をキャプチャー)
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トップを走る選手が4つ目のブイ(M4)を回り込む(画像:富士通などが開発したiOS向けアプリ「GULLCAST」の画面をキャプチャー)
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 大会当日は、ブイを取り巻く船上や洋上を飛ぶドローンなどからの実況映像も、観戦会場の大型スクリーンやインターネット経由で流された。選手のアクションを堪能するには格好の手段だ。ただし、目まぐるしく変わる順位や位置関係をつかむには映像だけでは辛い。そこでアプリに出番が回る。

会場の大型スクリーンで観戦
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 実際、現地からの実況中継では、映像の片隅にアプリの画面を常に配し、時折表示を切り替えては、アプリ画像を全面に写して展開を解説した。映像からは判別しづらい、どこにいるのが誰かを確認するためなどだ。IoTシステムの実力は、結果の判定にも生かされた。選手やブイの位置をGPSのデータでリアルタイムに把握できるため、運営者の判断よりも早く順位を確定できた。

動画とアプリを組み合わせて中継
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大画面にアプリも表示
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