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スポーツIT革命の衝撃

Bリーグ川崎、データ駆使でケガ「ゼロ」への挑戦

2018/05/25 05:00

内田 泰=日経 xTECH

「1.3」超でケガのリスク増

 興味深いのは、ケガのリスクを下げるための数値的な指標が得られたことだ。

 プレーヤーロードについて、過去1週間の平均値「acute(急性の)」を過去4週間の平均値「Chronic(慢性の)」で割った値が1.3を超えるとケガのリスクが高まることが分かってきたという。これはラグビーでの研究から得られた考察だが、バスケットボールにも当てはまるという。つまり、Chronicは選手のその時のフィジカル状態を表す。これに対して、短期的な負荷で疲労につながるacuteの数値が高くなればケガをしやすくなるという訳だ。

チーム全体のプレーヤーロード。過去4週間(Chronic:薄いピンク)と過去1週間(acute:茶色の棒)の全選手のプレーヤーロードの平均値の推移。赤い折れ線グラフがacute/Chronicの値(図:川崎ブレイブサンダース)
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 「2018年1月の天皇杯は準決勝で敗退した。そのあと選手は1週間オフを取り、その後、公式戦が再開された。オフを取ったことでChronicの値が下がり、acute/Chronicの数値が1.3を超えたことで、ケガ人が3人も出てしまった。もともとの持病の悪化だが、これは防げたはずだ」(吉岡氏)。そこで、チームとしてacute/Chronicの数値を0.8~1.3の間に収めるように選手の負荷を調整しているという。

練習での選手ごとのプレーヤーロード(赤い棒グラフ)と、acute(過去1週間のプレーヤーロードの平均)をChronic(過去4週間のプレーヤーロードの平均)で割った値(水色の点)。水色の点を0.8~1.3の間に収めるように練習をコントロールしている(図:川崎ブレイブサンダース)
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全選手が同じコンディションでいてほしい

 これまで、コンディション管理の責任者である吉岡氏の悩みは、試合に出ている選手と出ていない選手のコンディションの違いにあった。

試合のプレー時間が10分あるかないかの選手(A)と25分程度出ている選手(B)の過去4週間(Chronic)のプレーヤーロード平均の比較(図:川崎ブレイブサンダース)
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 Bリーグの試合でベンチ入りできる選手は12名だが、そのうち試合に長時間出られる選手は6~7人に限られる。彼らのプレー時間は毎回およそ20~25分以上あるのに対し、3~5分しか試合に出られない立場の選手もいる。当然、試合に出ていない選手のコンディションは、出ている人になかなか追いつけない。

 川崎ブレイブサンダースでは、週末の試合に合わせてコンディション調整をしている。例えば、金曜日に試合があるときは「水曜日に全選手が同じコンディションでいてほしい。これまで試合に5分しか出ていない選手がいきなり20分出なくてはいけないときもあるからだ」(吉岡氏)。こうした時にコンディションが良くないと急激に負荷がかかってケガをしやすくなる。

 「カタパルトのデバイスを使って1番よかったのは、試合に出れていない選手のコンディショニングにいい影響を与えていることだ」と吉岡氏は語る。