サッカーではドイツ代表も支援したことで知られていますね。

 2014年のW杯で優勝したチームは、SAP独自のデータ高速処理技術「HANA」を活用し、選手のコンディションなどをクラウドで管理しました。試合中の動きもデータで分析し、選手強化などに生かしました。これが、3番目のチーム・クラブパフォーマンスです。

 力を入れた取り組みの一つが、試合中の選手の映像分析です。ドイツ代表チームは、ボールを持った選手とそれ以外の複数の選手同士が、常に10メートル以内の距離を維持しながら攻撃する戦術をとりました。どこにボールが渡るか分からないプレーを続けて得点につなげる作戦です。

 ただ、10メートルという距離は感覚的なものなので、本当に戦術に沿って自分が動けるか選手本人にはわかりにくい。そこでテクノロジーの出番。 IoT(Internet of Things)などを先んじて採り入れ、選手に10メートル以内にいるかをリアルタイムにシステムで把握できる仕組みを開発しました。おかげで徐々に選手一人ひとりの空間認識能力が高まり、戦術通りに戦えるようになりました。

せっかくスポーツを支援しても、業界規模は小さく業績へのメリットは小さいように感じます。

 確かに製造業や流通業に比べれば市場サイズは小さい。ただ、テクノロジーの価値を多くの人に知らせる効果がこんなに期待できる業界はほかになかなかありません。勝つことにとことんこだわるチームと、競合に勝ちたい一般企業でやるべきことは実はだいたい同じです。参考になる点が意外に多い点も見逃せません。

 例えばスタジアムを考えてみましょう。収益を最大化するには、まず一人でも多くのファンをスタジアムに呼び込む手立てが必要です。その上で、訪問したファンに対して、ほかにはないさまざまな体験を提供し、売上アップに結びつけなければなりません。

 それにはスタジアム内のあちこちにコンタクトポイントが必要です。それぞれのコンタクトポイントが独立して機能したままだと、ファン一人ひとりに見合ったサービスの提供は難しい。乗ってきた車とチケットを紐付けて、プラグ・アンド・プレーで最適なサービスを提案するような工夫も必要です。スタジアムを去った後に生かすには、スタジアム内の体験をすべて紐付けてビッグデータとして管理する「スタジアムOS」のような考え方も求められます。

 小売り業の店舗に目を向けますと、果たしてこうした人つながりの収益拡大策を本当に実現できているでしょうか。必ずしもできていない企業も多いはずです。SAPはスポーツの世界を箱庭にして成功例を作り出し、それを多くの一般企業に吸収してほしいのです。チーム経営から、選手の採用・能力開発などで、気付きは多いはずです。SAPならではの勝つためのユニークな流儀をぜひともスポーツから、ほかの業界に広がってほしいと願っています。

出典:2016年2月17日 ITpro
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