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スポーツIT革命の衝撃

ASローマ、失敗から学んだデジタルマーケティング10の知見

Sport Innovation Summit 2018 Tokyo報告(2)

2019/01/29 05:00

浅野智恵美=ライター

 世界の著名なスポーツ組織や関連企業からプロフェッショナルが集い、スポーツビジネスに関する最新事例などを紹介するスポーツビジネスカンファレンス「Sport Innovation Summit 2018 TOKYO(以下SiS)」が、2018年11月29~30日の2日間、日本で初めて開催された。SiSは、2014年にメキシコでスタート。2017年にはパリでも開催され、日本が3カ国目の開催となる。

 「DIGITAL AT THE CORE」と題したセッションでは、ソーシャルメディアの活用やコンテンツ戦略など、デジタルを駆使したスポーツマーケティングの最新事例が数多く報告された。

 登壇したのは、ファンエンゲージメント・プラットフォームを提供する米FanCompassのCEOで共同創業者のジェイミー・パーディ氏。スペインのプロサッカーリーグ、ラ・リーガのデジタル戦略ディレクターを務めるアルフレッド・ベルメージョ氏。ローマを本拠地とするサッカークラブチーム、ASローマ(正式名称:アッソチアツィオーネ・スポルティーバ・ローマ)のデジタル&ソーシャルメディア最高責任者のポール・ロジャース氏の3名である。

 今回は同セッション報告の後編として、ラ・リーガのベルメージョ氏とASローマのロジャース氏の講演内容を紹介する。

いまやNBAやNetflixも競合

 ベルメージョ氏は、スペインリーグの強豪レアル・マドリードの国際クライアント責任者としてスポーツ業界におけるキャリアをスタート。スポーツとデジタルの業界において、長年にわたってキャリアを構築している。同氏はデジタル戦略について話した。

ベルメージョ氏 「消費者はデジタルへとシフトしています。我々の競合は他のサッカーリーグだけでなく、NBAやF1もそうです。スポーツだけでなく、NetflixやAmazon Prime Videoといったエンターテイメントも競合だと考えています。コンテンツでどうエンゲージメントを図っていくのか、我々の放送につなげていくのかが大切です」

ラ・リーガのベルメージョ氏
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 ベルメージョ氏が手がけた戦略の一つが「グローカル(グローバル+ローカル) アプローチ」。本拠地であるスペインをだけでなく、世界各国に視聴者を持ちたいと考えている。以前は2カ国語にしか対応していなかったが、現在では10カ国語に対応、近々15カ国語対応を目指している。また、同じニュースであっても、国やプラットフォームに合わせたメッセージを発信している。

ベルメージョ氏 「我々はよく、コンテンツをアイスクリームとパンに例えています。週末には視聴料が上がりますが、コンテンツには視聴者がエンゲージしない時間も出てくる。なので、アイスクリームではなく、毎日食べられるパンのように消費できるコンテンツが必要ではないかと考えるようになりました。ファンベースを開拓するため、きちんと食べ続けたいと思われるようなコンテンツを出し続けることを重視しています」

ラ・リーガのオフィシャルアプリケーションのグラフ。日によってアップダウンがある(図:ラ・リーガ)
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ベルメージョ氏 「このアップダウンをなるべくフラットに近づけたいと思っています。そのためには、コンテンツの中にしっかりとしたバリューを織り込まなくてはなりません。視聴者が喜ぶ情報を提供できているのか、刺さるものになっているのか。プラットフォームや言語によって見せ方も違ってきますが、それぞれに合わせた形で投稿する。それぞれのプラットフォームでふさわしいメッセージを出しています」

 ラ・リーガではROI(費用対効果)のモデルを活用している。ファン層をしっかりと拡大し、エンゲージすることが狙いだ。より多くのコンテンツを露出することによって、ラ・リーガの好機を増やすことができるという。

ラ・リーガのROIモデル(図:ラ・リーガ)
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ベルメージョ氏 「では、コンテンツ制作はどのようにやっていくのか。コンテンツを作り、プログラミングし、それをしっかり届けて、届けたものがどう見られているのかを計測する。そこから何を作るべきか、また一から考えていきます。ラ・リーガについて、パートナーがどのように語っているのかをモニターし、モニターした状況を計測。それを再びコンテンツ制作につなげていきます」

コンテンツ制作のワークフロー。クリエーション、プログラム、アウトリーチ、モニター、測定を繰り返す。コンテンツには明確な目標が必要で、視聴者の反応を促す引き金となるコンテンツも必要だと同氏は話した(図:ラ・リーガ)
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ベルメージョ氏 「ソーシャルプラットフォームという観点では、ここ1年半ほどで新しいプラットフォームに対する実験を重ねています。東南アジアや中国で我々のLINEアカウントを開設して実験していますし、中国発のTikTokを通じて音楽とスポーツの関連性を重視するようになりました。また、2年半ほど前からロシアのプラットフォームも活用するようにしています。さまざまなプラットフォームがありますが、地域に応じたマインドセットで、しっかりとビジネスゴールを達成する。メインサポーター、メインパートナー、そしてスポンサーがどのように考えているのかをしっかり見ながら、ともに成長していきたいと考えています」