史上最高の選手は誰か・・・。これはスポーツ界でしばしば話題に上るテーマである。最近、米国では米プロバスケットボールリーグNBAの史上最高を巡って、往年と現在のスーパースター「マイケル・ジョーダンvsレブロン・ジェームズ」の議論が活発化しているようだ。

 彼らが直接対決するわけではないので当然、“正解”はない。一つの切り口は、プレーデータを比較することだが、最近ではプレーのトラッキングは当たり前になっており、得点など結果についてのデータ以外に、個々の選手の詳細なプレーデータが取得されている。例えば、NBAでは「1試合の平均移動距離」「平均移動速度」といった基本的なものから、「1試合の平均ボールタッチ数」「1回のボールタッチが生み出す得点」など数多くのデータが存在する。

 これに対して、2000年代前半以前に活躍した往年のスーパースターの時代にはトラッキングシステムは存在していなかったので、“すごさ”は試合結果のデータや映像、同時代をプレーした選手の証言に頼るしかないのが実情である。

 こんな状況を変える可能性がある技術が登場した。世界有数のスポーツデータ提供企業の米STATS(スタッツ)が開発したスポーツ向けのAI(人工知能)技術「AutoSTATS」である。特徴は、アリーナやスタジアムにあらかじめ設置されたトラッキング専用のカメラを使わなくても、放送用の映像からトラッキングデータを取得できる点。つまり、これまでのトラッキングシステムに付きまとっていた、会場やコストの制約を取り払える。

放送映像を使うAutoSTATSなら、トラッキングシステムが存在していなかった時代の試合をデータ分析できる。写真はマイケル・ジョーダン氏を擁するシカゴ・ブルズが1998年のNBAファイナルを戦っている試合をトラッキングしている様子(図:STATS)
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 放送映像を素材とすることで、トラッキングシステムが存在していなかった時代のスーパースターなどのプレーをデータで分析することも可能になる。上の写真は、シカゴ・ブルズのマイケル・ジョーダンの1998年の試合をトラッキングしている様子である。

 2019年2月25日、NBAのオーランド・マジックとSTATSがこの技術の独占的な使用契約を結んだ。マジックはこの技術をNBAで唯一使えるチームとなる。ドラフト候補となる大学の選手の放送映像をAutoSTATSを使って分析したり、選手の評価や意思決定のプロセスを改善したりするために活用するとしている。