5Gでフィットネス業界からスタジオ消滅? ライブ配信アプリの野望

2019/03/25 05:00

宇野 麻由子=日経 xTECH

 会員制フィットネスクラブの運営を行う東急スポーツオアシスは、スタジオプログラムのライブ配信に向けたiOS向けアプリ「WEBGYM LIVE」の発表会を行った。2019年1月15日に配信を開始したアプリで、自宅にいながらインストラクターによるレッスンを受けられる。まずはバイク(フィットネスバイク)に関する30分間のスタジオプログラムの中継動画を週に6本ずつ配信する予定。アプリの月額使用料は1950円。

 同社ではこれまで各種エクササイズの指導動画などの視聴に向けた無料アプリ「WEBGYM」を提供しており、iOSおよびAndroid端末で合計約30万ダウンロードされているとする。この無料アプリでは運動を習慣化しやすくすることを目的としていたが、1人で録画された指導動画を見ながらコツコツと運動を続けるのは難しい。そこで、インストラクターによって盛り上げられるスタジオプログラムのライブ映像により継続モチベーションを高めようというのが、今回のWEBGYM LIVEだ。

 アプリでレッスンの内容や開催時間、インストラクターから好みのレッスンを選ぶ。参加予約のボタンを押せば、開始時間の5分前にアプリをインストールした端末や連携するApple Watchにプッシュ通知が届く。開催時間になったところで参加ボタンを押すと、スタジオの中継が始まる。

ライブレッスンの様子
インストラクターは参加者の簡単なプロフィール(ニックネームなど)を把握しており、呼び掛けることが可能。デモでは「さおちゃん、頑張っていきましょう」などと声を掛け、遠隔参加者のモチベーションを上げていた(撮影:日経 xTECH編集部)
[画像のクリックで拡大表示]

 現時点でのライブ配信はバイクのみ。端末やHDMIケーブル、AirPlayなどで接続したディスプレーを見ながら漕げる状態であれば、どのようなバイクを利用してもよい。同社では専用のバイクとして、「WEBGYM BIKE」を開発し、2019年1月28日から東急ハンズ新宿店で販売している。価格は18万9000円(税込み)。Bluetoothを使ってiPadなどの端末と接続でき、WEBGYM BIKEで取得した回転数や消費カロリー、心拍数などのデータをアプリで管理できる。同社によればフィットネスバイク市場は年間数十万台と、右肩上がりが続いており、既に購入済みのバイクの有効活用を期待する人や新規購入者をユーザーとして見込めるとする。

 アプリ内の他のコンテンツとして、バイクの前後に向くストレッチなどレッスン形式の指導動画を用意するほか、過去に録画されたバイクのスタジオレッスンの動画を多数用意する。今後、ライブ配信にトレッドミル(ルームランナー)を使ったレッスンやヨガ、有酸素運動などのグループエクササイズのレッスンを追加する計画だ。2019年春以降の実現に向けて、参加者側とやりとりできるインタラクティブ機能の開発を進めているという。将来的には機器のデータや生体情報、参加者の映像などをスタジオのインストラクターなどとやり取りできるインタラクティブなレッスンを実現したいとする。

無限に市場が広がるアプリ

 同社のフィットネスクラブ会員は約10万人。今回のWEBGYM LIVEでも同等規模のユーザー確保を目指す。その背後には「約40年間変わらなかったフィットネスクラブのビジネスモデルを変えたいという野望がある」と、同社の代表取締役社長 平塚秀昭氏は話す。従来、フィットネスクラブは店舗から2~3kmの範囲が市場という、物理的な”枠”があった。「アプリの場合、市場は無限に広がっている」(平塚氏)。同社ではアプリを含めたIT技術、IoT技術の活用によりフィットネスクラブにおけるこうした概念を覆すことを狙っている。

東急スポーツオアシス 代表取締役社長 平塚秀昭氏(写真中央)
(撮影:日経 xTECH編集部)
[画像のクリックで拡大表示]

 同社では、今回のアプリによりスタジオ-顧客間をつなぐだけでなく、スタジオ間の接続にも取り組んでいる。同社のフィットネスクラブには7つの常設のバイクスタジオがあり、拠点間をネットワークで接続することで、1カ所でのレッスンを別の拠点に配信できるシステムを構築済みだ。「スタジオプログラム数を増やしたり、人件費を抑えたりする効果がある」(平塚氏)。また、人気インストラクターは「追っかけ」状態のユーザーが付き、インストラクターが異動すると顧客も所属先を変更してしまうという課題があった。こうしたシステムを利用すればインストラクターがいるスタジオ以外のスタジオでもレッスンを受けられる。今回のアプリでは、自宅や出張先など、どんな場所でもインストラクターのレッスンを受けられるようになる。「人気インストラクターの力を最大限に活用することができる」(平塚氏)。

 将来的に狙うのは、場所の制約がないフィットネスクラブの展開だ。「今はライブ配信で実際に顧客のいるスタジオでの映像を生中継することで、アプリユーザーに臨場感を与えている。大量のデータをやり取りできる5Gを活用すれば、例えばホログラムで人の映像をその場に表示するといったことも可能になると聞いている。実際にその場に行かなくても、十分な臨場感を味わえるようになれば、もはやスタジオは必要なくなるのではないか」(平塚氏)。