厚労省の“解禁通達”で、ざわつき始めた現場(page 3)

2015/10/27 00:00
大下 淳一=日経デジタルヘルス

積極推進に転じた政府

 今回の通達の背景には、遠隔診療をめぐる方針を政府がここにきて大きく転換したことがある。参議院議員の秋野公造氏(長崎大学 客員教授)は2015年10月9~10日に仙台市で開催された「第19回 日本遠隔医療学会学術大会(JTTA 2015)」(主催:日本遠隔医療学会)で講演し、その経緯に触れた。同氏は医学博士でもあり、遠隔診療を含む医療政策に関して積極的な提言を行っている。

政府の「規制改革実施計画」
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 秋野氏が触れたのは、2015年6月30日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015」、いわゆる「骨太の方針2015」に、遠隔診療を含む「遠隔医療の推進」が盛り込まれたことだ。

 同方針には遠隔医療という言葉が2カ所に現れ、このうち「医療等分野のICT化の推進等」の項目ではその冒頭で「医療資源を効果的・効率的に活用するための遠隔医療の推進」がうたわれた。遠隔医療の推進が骨太の方針に明記されたのはこれが初めてだ。

 さらに、骨太の方針の具体的な実施策を示すものとして同じ日に閣議決定された「規制改革実施計画」でも、健康・医療分野に「遠隔モニタリングの推進」という項目が新たに設けられた。推進すべき事項として「有用な遠隔モニタリング技術の評価」「遠隔診療の取扱いの明確化」「遠隔診療推進のための仕組みの構築」を明記するなど、遠隔診療に関してこれまでになく「踏み込んだ表現がなされた」(秋野氏)。

「第19回 日本遠隔医療学会学術大会(JTTA 2015)」に登壇した参議院議員の秋野公造氏(長崎大学 客員教授)
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 こうした政府方針にもかかわらず、過去の通知の“分かりにくさ”が遠隔診療の普及を妨げかねない─―。そう判断した厚労省が6月30日の閣議決定から間もなく出したのが、今回の通達というわけだ。遠隔診療を「止めて(禁じて)はいないのにうまくいかない」(日本遠隔医療学会 常務理事の長谷川高志氏)というこれまでの状況を打破する狙いがある。

 ただし、今回の通達だけで遠隔診療の活用が一挙に広がると見る向きは少ない。診療報酬(保険点数)制度が遠隔診療の利用を前提とした形では整備されておらず、医療機関にとっては遠隔診療を導入するメリットがまだ薄いからだ。今後、遠隔診療の推進という政府方針が診療報酬改定にどう反映されるか、多くの関係者が注目している。

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