東京電力は、2011年3月の福島第一原子力発電所(1F)事故の際、プラント観測情報や苛酷炉心損傷事故計算コード「MAAP(Modular Accident Analysis Program)」による計算値を公開した1~3)

 津波被災後、同発電所1~3号機(1F-1~3)の原子炉水位・圧力や格納容器圧力は、継続的に観測可能であったものの、電源喪失に伴い1F-1~3の格納容器温度は、観測できなかった1-3)。しかし、格納容器の温度情報は、放射能漏洩経路の特定と大気に放出される放射能量の確定のために欠かせない情報である。

1.格納容器の温度データの課題とは

 原子炉や格納容器の圧力は、炉や容器を含む体系がいくら大きくて複雑でも、パスカルの原理から、わずかな圧力損失は存在するものの、どこもみな同じ値となる。しかし、温度については、熱源や機器・配管の配置に依存し、著しい温度差が生じる。東京電力の報告書にある1F-1~3の格納容器温度変化は、大きな空間の「平均温度」を示していると推定されるが、「温度」の定義が不明確である1-3)。そのため、参考にはなるものの、放射能漏洩経路の特定と大気放出放射能量の確定にそのまま利用することはできない。

 そこで本稿では、東京電力の報告書にどのような欠陥が内在するのかを考察した。

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