観戦→食事→宿泊の流れを作る

――アリーナがもたらす経済波及効果をどのように見ていますか。

上田 先ほどの全体計画においては、建設時の経済波及効果として約267億円、単年度の運用時で約133億円と見積もっています。

――1万人アリーナを起点とした周辺地域の活性化について、どのような構想をお持ちですか。

上田 1万人アリーナが建設される予定のコザ運動公園の近くには飲食店街があります。沖縄の食だけでなく、民謡や沖縄ロックといった文化も楽しめます。

 ただし、課題もあります。交通の問題です。沖縄の交通事情についてはご存知の方も多いと思いますが、「車中心」となっており、しかも駐車場や那覇空港からのアクセスについて、各方面から指摘をいただいています。また、ICT(情報通信技術)化についてもまだまだこれからの部分も大きく、情報発信の課題もあります。

 交通導線が改善され、さらにICTが整備されればアリーナに試合を見に来た観客に対してスマートフォン(スマホ)のアプリからポイントを付与するなどして、周辺のお店に誘導できるようなチャンスが広がるのではないかと考えています。

 自分が応援しているチームが勝てば、「近所でご飯を食べて帰ろう」という機運も高まります。仮に訪問したお店が満員であっても、スマホへのプッシュ型配信で別のお店に誘導できると、ほかのオプションを提案できることになります。現在、沖縄市観光物産振興協会と連携してDMO(観光物件や自然、食、芸術・芸能などに精通し、地域と協同で観光地作りを行う法人)を形成できないか検討しています。

 ICT化については、前向きな話があります。沖縄市はベンチャー支援を目的に、2016年8月に「スタートアップカフェコザ」を開設しました。コワーキングスペースの提供や創業支援に関する相談を無料で受け付け、プログラミングなどICT関連の講座を用意しました。創業に向けた人材育成やコミュニティーづくりを進めています。沖縄県には、沖縄科学技術大学院大学(OIST)もあり、同大学との連携や、県内外の大学との連携についても取り組んでいるところです。

 米軍嘉手納基地の門前町である沖縄市の中心街は、かつて沖縄をけん引するような活気があったところだと聞いています。近年はだいぶ元気がなくなっていたところですが、この施設の開設によって、また図書館の移転等の地域活性化の取り組みと相まって、若い人をはじめとしてこれまでとは違った層の方々も沖縄市の中心街を訪れるようになってきました。少しずつではありますが、活気が出てきました。

 沖縄市は街づくりにICTを活用しようと積極的に動いており、アリーナの運営会社が決まった際には、これを提案しようと考えています。もちろん、提供するコンテンツの内容自体は興行者が何をしたいのかによりますが、沖縄市としてはアイデアやインフラがあることを伝えていきます。

 現在、1万人アリーナの建設計画に連動して、周辺にホテルの建設計画が出てきたり、バスターミナルなどの拠点整備のアイデアが出てきたりしています。これらが現実のものとなり、交通や宿泊施設といった課題が改善されれば、例えばゴールデンキングスの試合観戦に来た人たちがアリーナの近くで食事をして宿泊、という流れができます。街づくりなので時間はかかりますが、アリーナと街をつなげ、全体として「エリアリノベーション」を行うための布石を打っている段階です。