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スタジアムとアリーナが拓く未来

「アリーナこそ産業成長の中核」、Bリーグ大河氏が語る期待と課題

2018/11/05 05:00

内田 泰=日経 xTECH

 開幕3シーズン目を迎えている男子プロバスケットボールのB.LEAGUE。2年目の2017ー18シーズンには、対初年度で11.8%増となる合計250万人を動員し、順調な成長を遂げている。沖縄県沖縄市では、琉球ゴールデンキングスのホームとなる、1万人収容のアリーナの建設も始まり、リーグがミッションの1つとして掲げる「夢のアリーナの実現」に近づいている。今後の飛躍に向けて何が必要なのか。2018年8月31日に「スポーツビジネスジャパン2018 together with スタジアム&アリーナ2018」に登壇した、大河正明チェアマンに聞いた。(聞き手:内田 泰=日経 xTECH)

2018年5月26日に行われた2017-18シーズンの決勝戦「B.LEAGUE FINAL 2017-18」の試合の様子。アルバルク東京と千葉ジェッツが横浜アリーナで戦った(写真:B.LEAGUE)
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 政府はスポーツ産業成長の柱として「スタジアム・アリーナ改革」を推進しています。大河さんはバスケットボールで使うアリーナこそが「中核」と講演などでお話されていますが、その理由をお聞かせください。

大河 スタジアムには大きな土地が必要で、これから新規に建設しようと思っても街中にはそんな敷地はあまり空いていません。アリーナなら、スタジアムの1/6~1/5の面積の土地に建設できます。

 さらに、スタジアムの多くには屋根がなく、サッカーのような天然芝のグラウンドの場合は稼働が制限されます。稼働率が収支に直結するのに、それを高めるのが難しいのです。コンサートを開催するといっても、芝生を張り替えるタイミングでないと実施できないのが実情です。

 一方、室内型のアリーナにはその心配はありません。都会にあれば、コンサートだけでなく、卓球やバレーボールなど他の室内型スポーツやプロボクシングなどの格闘技系、eスポーツのイベントも開催できます。実際、米ニューヨーク市の一等地にあるマジソン・スクエア・ガーデンでは、昼夜で異なるイベントを行ったりしています。

 沖縄市で1万人収容のアリーナ建設が始まっていますが、このアリーナへの期待感を教えてください。

B.LEAGUEチェアマンの大河正明氏。1958年生。京都府出身。中学でバスケットボールを始め、全中4位。京都大学卒。 1981年三菱銀行入行。1995年日本プロサッカーリーグ出向、総務部長。2010年三菱東京UFJ銀行退行。同年日本サッカーリーグ理事に就任。 2014年に日本プロサッカーリーグ常務理事、2015年日本バスケットボール協会専務理事、事務総長、同年ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ理事長
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大河 これまでスポーツコンテンツを主体としたアリーナの“モデルケース”のようなものが、日本にあったかというと残念ながらありませんでした。さいたまスーパーアリーナや横浜アリーナも、基本はコンサートなどイベント系が中心です。

 一方でサッカースタジアムには、市立吹田サッカースタジアムや、小さいですが南長野運動公園総合球技場(長野スタジアム)のような“見本”がありました。その意味でも、バスケ界に琉球ゴールデンキングスのホームとして「夢のアリーナ」が日本に誕生するのは大きなことです。

 アリーナを建設している沖縄市の素晴らしいところは、アリーナを作る過程でコンテンツホルダーのキングスの意向をきちんと聞いて、使い勝手がよく試合を観やすい設計にしていることです。例えば、(これまでの体育館にはない)ボックス席やVIP席を用意します。通常、行政側は“市民利用”を理由に、こういう部分を削りたがります。

 一方で運営の部分をどうしていくかについては、今後決めていくと思いますが、ここにもぜひ「民間の知恵」を入れてほしいと思います。一番問題なのは「こんな大金つぎこんだのに、毎年こんな赤字を垂れ流して」というネガディブな庶民感情が生まれることです。何を目的に作ったのかを明確にして、運営を大幅な黒字ではなくても赤字にならないようにする。さらにプロフィットセンター化するために、キングスが事業運営に関わっていく形になれば、日本のアリーナのモデルケースになっていくと思います。