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渡辺史敏の「米スポーツ産業ヘッドライン」

6万人超がWi-Fi利用可能、米でスマートスタジアム最強争い

2016/10/21 00:00

渡辺史敏=ジャーナリスト

 スタジアムをIT(情報技術)武装する「スマートスタジアム化」によって、訪問するファンに異次元の体験を提供しよう――。スマートスタジアムが世界的な潮流となるなか、現在、その代名詞的な存在となっているのが、米シリコンバレーのど真ん中、カリフォルニア州サンタクララに位置する「Levi's Stadium(リーバイス・スタジアム)」である。

 2016年2月、プロアメリカンフットボールNFLの優勝決定戦「第50回スーパーボウル」が開催されたリーバイス・スタジアムには、総延長400マイル(約644km)のデータケーブルや1200基のWi-Fiアクセスポイントが実装されるなど、まさに世界トップクラスの通信環境と、それをベースにしたスマートフォン(スマホ)向けのサービスが提供されている。

 しかし、米国では今「打倒リーバイス・スタジアム」とばかりに、先進のスタジアムを建設もしくは計画する動きが複数出ている。

1300基のWi-Fiアクセスポイント

 最初に紹介するのは、2016年7月にオープンした「U.S.バンク・スタジアム」だ。ミネソタ州ミネアポリスのダウンタウンにあるこのスタジアムは、NFLミネソタ・バイキングスの本拠地。寒冷地のため屋内型で、幾何学的なデザインと外光を取り込むガラスパネルが多用された外壁が特徴となっている。
ミネソタ・バイキングスの本拠地「U.S.バンク・スタジアム」の外観(出典:Minnesota Vikings)
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 6万6200人を収容できるが、2018年に開催が決定している第52回スーパーボウルでは7万3000人に拡張予定という大型スタジアムだ。建設費は約10億ドル(約1010億円)で、うちテクノロジー関連に6000万ドル(約60億6000万円)がつぎ込まれた。

 約37×約21mを筆頭に、複数の大型スクリーンがスタジアム内外に設置されるなど目を引く設備が多いが、なかでも力が入っているのはやはりネットワーク関連。Wi-Fiに関してはクラウドサービスなどを担う米CenturyLink社やWi-Fiを専門とする米AmpThink社がネットワークを構築している。

 アクセスポイントの数はリーバイス・スタジアムの1200基を上回る1300基が設置されたという。設置場所はこれまで座席の下や天井部分が多かったが、今回スタンド階段の手すりと一体化したパネル状のアクセスポイントも導入された。これによりバイキングスのホームゲームで約3万人の利用を想定しているが、テクノロジーを担当するチーム副社長は「理論的にはスタジアムの全6万6000人のファンがWi-Fiを利用できる」としている。

 携帯電話に関してもリーバイス・スタジアムと同様に米ベライゾン・コミュニケーションズ社がDAS (Distributed Antenna Systems) と呼ばれる分散アンテナシステムを導入している。このDASは米AT&T社や米Sprint社といった他のキャリアに対しても有効だという。

 また、Bluetoothのビーコンもリーバイス・スタジアムの1200基を上回る2000基がスタジアムの内外に設置されている。

「U.S.バンク・スタジアム」の内部。1300基のWi-Fiアクセスポイントが設置されている ((C)NFL JAPAN. All Rights Reserved.PHOTO BY AP Image)
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スマホアプリでサービス提供

 こうしたネットワークを利用して提供されているのが、スタジアム専用アプリを使ったサービスだ。

 アプリでは自分がスタジアムのどこにいて、座席までどう行けばいいのかといった経路案内、飲食物やグッズをオーダーし座席までデリバリーしてもらう、さらに「Kezer」と呼ばれるキオスクにチケットのQRコードをかざすことでスタジアムに入場できるといったサービスが行われている。

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