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スタジアムとアリーナが拓く未来

ベルギー1部クラブ買収、DMM流サッカースタジアム革新

「Connected Stadium」の挑戦(上)

2018/08/16 05:00

田中直樹=日経 xTECH

 ベルギー1部のサッカークラブ「シント=トロイデンVV」を買収し、サッカー関係者を驚かせたDMM.comが、「Connected Stadium(コネクテッドスタジアム)事業」を開始した。DMM、シント=トロイデンVVを運営するベルギーSTVV、メディア事業を手掛けるCandee、インターネットサービス会社のトランスコスモスの4社で、日本のIT(情報技術)を活用し、新たなスポーツ体験を提供するという。19歳で東京オリンピック世代の冨安健洋選手が2018年7月28日(現地時間)の開幕からここまで3試合連続で先発、8月5日(同)に開催された第2節のダービーマッチでは、浦和レッズから獲得したばかりの遠藤航選手が得点を決めるなど、日本人選手が活躍を見せている。さらに、スタジアムの魅力も日本のITによって高めていく。DMM.comのCOOでSTVVの会長を務める村中悠介氏、そしてCandee執行役員の大川秀平氏、トランスコスモス上席常務執行役員の三川剛氏に、コネクテッドスタジアム事業の狙いや今後の計画について聞いた。(聞き手:内田泰、田中直樹=日経 xTECH)

シント=トロイデンVVの選手。後列中央が冨安健洋選手((C)STVV)
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――まず、DMM.comがSTVVの経営権を取得した経緯や狙い、将来目標についてお聞かせください。

村中(DMM、STVV) 初めて話があったのは2年ほど前でした。DMMには毎日のように様々な事業提案の話が持ち込まれるのですが、その中の1つにサッカーの話がありました。その当時から、「ベルギーリーグは面白いよ」という話は出ていました。ベルギー、オーストリア、ポルトガルのリーグは外国人枠がなくて、自由度が高いからです。他の国のリーグだと、日本人選手が外国人枠の中で争わなければならず、試合に出られないことがあります。ベルギーリーグにはそうした制約がありません。

 そこで、3クラブの名前が具体的に挙がっていたので、実際に見に行って、話を聞きました。その中の1つがシント=トロイデンVVだったのです。財務状況に問題がないこと、スタジアムがきれいなこと、ファンが熱狂的なこと、オーナーがしっかりした方だったことなどから、このクラブに決めました。オーナーは75歳になられていて、スタジアムの横に住んでいるのですが、これからは静かに暮らすことを希望していました。クラブを5つくらい持っていたのですが、すべて売却されました。

 交渉の結果、(サポーター持ち分の0.01%を除く)ほぼ100%の経営権を譲っていただくことで合意に達し、2017年11月15日に経営権の取得を発表しました。取得金額は発表していませんが、それほど高くはありませんでした。

 経営権を取得した狙いは、広告で露出を増やし、知名度向上やサッカー以外の事業の拡大につなげることではありません。普通にサッカークラブを経営して、売り上げも利益も上げていこうという考えです。ですから、選手や監督への投資によるスポーツとしての強化、およびビジネス面でのてこ入れを実施し、放映権料や入場料の収入を増やすことを目指します。

 さらに、これまでのスポンサーはベルギーのローカル企業だけでしたが、今後は日本のスポンサー企業を集めようとしています。既にスポンサーとして数社を発表しています。日本のスポンサー企業に、欧州進出の足がかりとしてシント=トロイデンVVを使ってもらいたい。もっと言えば、日本だけでなくアジアの企業にも活用してもらえるクラブを作りたいと思っています。

――サッカービジネスには価値があり、今後も伸びるとみて、経営権を取得したと思いますが、社内で精査したのですか。

村中 いいえ、社内では精査していません(笑)。(プロジェクトの)チームを作り、チーム内で話を進めていましたので、ほとんどの社員は知らなかったはずです。発表前は10~15人くらいしか知らなかったと思います。

 社内ではなく、社外にいるサッカー界のプロの意見を聞きながら進めていました。例えば、STVVの社長の立石(敬之氏)はFC東京でゼネラルマネージャーを務めていましたが、彼にはずっと相談していました。

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