ベルギー1部のサッカークラブ「シント=トロイデンVV」を買収し、サッカー関係者を驚かせたDMM.comが、「Connected Stadium(コネクテッドスタジアム)事業」を開始した。DMM、シント=トロイデンVVを運営するベルギーSTVV、メディア事業を手掛けるCandee、インターネットサービス会社のトランスコスモスの4社で、日本のIT(情報技術)を活用し、新たなスポーツ体験を提供するという。19歳で東京オリンピック世代の冨安健洋選手が2018年7月28日(現地時間)の開幕からここまで3試合連続で先発、8月5日(同)に開催された第2節のダービーマッチでは、浦和レッズから獲得したばかりの遠藤航選手が得点を決めるなど、日本人選手が活躍を見せている。さらに、スタジアムの魅力も日本のITによって高めていく。DMM.comのCOOでSTVVの会長を務める村中悠介氏、そしてCandee執行役員の大川秀平氏、トランスコスモス上席常務執行役員の三川剛氏に、コネクテッドスタジアム事業の狙いや今後の計画について聞いた。(聞き手:内田泰、田中直樹=日経 xTECH)

シント=トロイデンVVのホームスタジアム((C)STVV)
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――現在取り組まれている、スタジアムのローカル通貨電子化の状況を教えてください。

三川(トランスコスモス) 現在、シント=トロイデンVVのスタジアムの買い物では「Jeton(ジェットン)」というローカル通貨が使われています。回数券のようなもので、スタジアムを利用する人はあらかじめジェットンを買っておいて、これを例えば飲み物と交換するのです。1ジェットンは2.2ユーロです。

 ジェットンはカジノのチップのようなもので、これをスタジアム内のお店で欲しいものと交換しているのですが、我々はこれを電子化していきます。例えば、ジェットンの電子決済で買い物すると少し安く買えるといったインセンティブを用意することで、スタジアムに来てもらう“動機”を作れます。

村中(DMM、STVV) この電子化したジェットンを、シント=トロイデンの街に導入してほしいと、自治体にお願いしています。

三川 街で使えるようになると、大きなインパクトがあります。現在は街での決済にデビッドカードしか使えないことが多く、あまり便利ではないからです。シント=トロイデンの市民は良いのですが、他の地域から来た人にとっては不便です。地域通貨になれば、街の発展にもつながると思っています。

――シント=トロイデンVVのコネクテッドスタジアムの特色、他のスマートスタジアムにはない特徴を教えてください。

大川(Candee) 地域通貨だと思います。スマートスタジアム化のトレンドを引っ張っているのは米国とされていますが、シント=トロイデンのコネクテッドスタジアム事業は米国流とは違うものになると思います。NFL(アメフト)、MLB(野球)、NBA(バスケットボール)に代表される米国のスポーツ産業は、投資規模が大きく、高価なチケット代を前提としていますが、我々はそうではありません。例えば、シント=トロイデンVVのチケット代は15~20ユーロ程度と安価です。

 こちらは地域に密着し、ファンの一人ひとりに目線を合わせて、ファンの人たちからどれだけ情報を獲得できるか、マネタイズを走らせることができるかが主眼になります。

 ここで鍵を握るのが地域通貨です。地域の電子通貨が本当に根付くようになると、そこから様々なデモグラフィック(人口統計学的属性)が得られ、クラブとしてもユーザーへのアプローチの仕方が大きく変わってくるはずです。

三川 スタジアム通貨の電子決済化は今季中に実証実験を行いたいと考えています。これがうまくいけば、街で使ってもらったり、さらに隣町のクラブのスタジアムでも使ってもらったり、可能性が広がるでしょう。

大川 “プチtoto”みたいな、試合予想や点数予想などのコンテンツも電子化して、サービスに加えていきたいですね。今は紙で行われていて、多くの人が楽しんでいます。