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スタジアムとアリーナが拓く未来

スタジアム・アリーナ、「稼げる街のシンボル」への3つカギ

「スポーツアナリティクスジャパン2017」から(3)

2018/01/26 05:00

久我 智也

 「現代は施設単体で存在し続けるのは難しい時代ですから、施設の存在価値を見出さなくてはなりません。近年では市民と事業主が一体となって街を育む“エリアマネジメント”が注目されていますが、スタジアム・アリーナにおいても、地域住民と連携して活動していくことが重要なのではないかと考えています」

 「スタジアムやアリーナを起点に活動が行われるということは、そこに人が集う状況をつくれるということでもある。コミュニティーが生まれれば継続的に活動は行われ、人が集ってくる。そのようなサイクルが生まれれば、新たな仕事なども生まれるかもしれませんし、地域におけるスタジアムの価値は高まっていくのではないかと思います」(桜井氏)

 プロ野球で言えば、オープン戦などを含めてもスタジアムで試合が行われるのは多くても年間80日程度である。街のシンボルとなるからには、年間を通して地域住民が集う状況を創り出し、地域になくてはならない存在に昇華する必要があるという。その例として桜井氏が挙げたのはニューヨークのブロードウェイだ。

「ブロードウェイにはたくさんの劇場がありますが、あの周辺のカフェやホテルでは、将来劇場に立つことを夢見ながらアルバイトをしている人々が大勢います。街としても、そんな人々を支える仕組みができている。スポーツにおいても、街ぐるみで選手やチームを支える環境をつくることができれば産業として膨らんでいくのではないかと思っています」(同氏)

 一時的ではなく、永続的なシンボルとなるためには、いかにスポーツと日常を結びつけるか、そして歴史をつくることができるかにかかっているといえるだろう。

欧州ではボトルネック解消のためにIT利用

SAPジャパンの濱本秋紀氏。同社のマーケティング部門でコーポレートイベント・ブランディング・スポーツスポンサーシップ・デジタルマーケティングなどの責任者、製品マーケティングの企画・実施、ユーザーグループの企画・運営などを経験。2016年より、プロスポーツクラブのマーケティング・ファンエンゲージメントを支援し、スタジアムソリューションの事業開発などを担当している
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 「スタジアムで稼ぐ」という観点で重要となるのは「Tech(テクノロジー)スマート化」である。SAPジャパンでスポーツマーケティングに関わる濱本秋紀氏によると、欧州ではビジネス上の課題を解決するためにIT(情報技術)を用いるというアプローチが主流であるという。

「スマートスタジアムについて論じられるとき、例えば座席にいながら飲食物が購入できるシステムや、トイレの待ち行列を把握できるシステムなどを連想される方が多いと思います。ですが欧州では、抱えている課題やコストの削減、ある業務シナリオを達成するための手段としてITを活用するというケースがほとんどです。

 例えばドイツのアイスホッケーチーム、アドラー・マンハイムの本拠地であるSAPアリーナでは、アリーナ内での観客の購買行動が捕捉できないというボトルネックがありました。そこで、購買に応じてクーポンなどが付くファンアプリを活用してデータを取得できるようにしたのです。それによって、さらなるアップセルにつなげたといわれています」(濱本氏)

 他方、米国ではエンターテインメント性の向上のためにITを活用するケースが多いという。

「米国の場合、どうすれば観客を興奮させることができるか、どうすれば高額チケットが売れるようになるかということを考えてビッグデータやテクノロジーを活用し、新たな価値を見出すことにフォーカスしているという印象です」(同氏)

 テクノロジーを活用して観客の利便性を高めるとともに、運営者が様々なデータを取得できる仕組みは今後増えていくことになるだろう。

(後編へ続く)