日経エレクトロニクス2014年9月29日号のpp.84-89「センサーネット設計の基本、2重化や特殊条件への対応も」を分割転載した前編です。

工場や発電所、交通、農業などさまざまな分野で、現場の状態を常に監視し管理や制御に応用するために、無線センサーネットワークへの期待が大きい。ただし、信頼性の高いネットワークを構築するには、センサーネットならではの要求仕様を理解し、構築の勘所を学ぶ必要がある。今回は、無線センサーネットワークの基本的な設計手順を解説する。

 前回までに、無線ネットワークに必要な条件として、(1)設置の容易さ、(2)少量の電池で長年動作する、(3)データ欠損が生じない、(4)電波環境の変化に自動的に適応する、(5)考えられる全てのセキュリティー対策をあらかじめ組み込んでおくの5つを挙げ、これらの実現には米Linear Technology社のDust Networks部門注1)の製品などが利用するTSMP(Time Synchronized Mesh Protocol)方式が適していることを示した。

 今回はTSMP方式を使った場合の基本的なネットワーク設計の手順を示す。次回は、電力会社などが要求するネットワークの2重化や、鉄道会社やガス・水道会社が望む長い対象物を監視するための細長いメッシュネットワークの構成法を解説する。いずれも、Dust部門の製品「SmartMesh IP」を用いた実例に即して記述している。

注1)米Dust Networks社は、2011年に米Linear Technology社に吸収合併され、現在はLinear社の1部門になっている。

到達距離の推定が第一歩

 無線センサーネットワークの設計で最初にすべきことは、使用する無線機が現場の環境で実現できる通信到達距離の推定である。無線センサーネットの利点は測定したい対象の近くにセンサーを置けることだが、無線機の設計や置き場所によって到達距離は大きく変わる。このため、到達距離の評価にはプロトタイプの装置を用いた実地に近い環境での実測が必須になる。

 到達範囲を大きく左右する要因の1つはアンテナの性能である。トランシーバーICをアンテナと組み合わせて機器に仕上げた状態での電波の指向性と利得が重要になる。Dust部門のトランシーバーを組み込んだモジュール「LTP5901」などにはチップアンテナが付属するが、その利得は-2dBi程度と低い。表1に示すような外付けアンテナを使えば+2dBi程度の利得があるため、チップアンテナと比べて4dB有利になる。ネットワーク全体でこのアンテナを使えば送信と受信で合計8dBもの差になり、到達距離に大きく影響する。なお、アンテナには指向性があるので、メッシュネットワークを平面状に構築する場合は、水平方向には無指向性になるようアンテナを垂直に立てることを前提に機器を設計すべきである。

表1 総務省の技術基準適合認証を受けた外付けアンテナ
リニアテクノロジーがDust部門の製品と組み合わせて認証を取得した。これら以外でもゲインが4dBi以下のアンテナであれば、要望に応じてリニアテクノロジーが認証取得を代行する。
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 機器の設置場所も到達距離に大きく影響する。特に重要なのが、地表からの高さと大きな金属物との距離である。地面は電波を吸収するので1m程度の高さを確保できれば到達距離は大きく伸びる。大きな金属物からの距離も同様だ。

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