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 食糧生産には大量の化学肥料や農薬、そしてトラクターなど農業機械を動かす燃料が欠かせない。現代農業は石油の大量投入で成り立っている。

 世界の水消費量の約7割は食糧生産のために使われている。途上国におけるかんがいの多くは、地下水をポンプ(動力)で汲み上げる。そのエネルギーも石油だ。

 20世紀以降、世界の水需要が加速度的に拡大する一方、利用可能な水資源は減少しており、2025年までには世界人口の半数が水不足に陥るとの予測もある。

 石油生産が減産に転じれば、食糧危機や水危機を増幅させる恐れが強い。ここで懸念する食糧危機・水危機は、拡大を続ける需要に供給(生産)が追い付かず、市場が一段と不安定になるリスクである。

原油価格に連動する穀物価格

 下のグラフは、穀物(シカゴ小麦、トウモロコシ)と原油(1982年まではサウジアラビアのアラビアンライト、83年以降はニューヨークWTI)の価格推移を長期的に眺めたものである。

2000年以降、価格レンジが上昇
穀物と原油の価格の推移(出所:NYMEX、CBOTのデータから筆者作成)
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 原油および穀物価格は、1950~70年代初めまでの低価格時代を経た後、1973年の第一次石油危機および食糧危機を契機に均衡点価格が上昇した。1980~2000年代初めまでレンジ相場が続いた。

 しかし、2005年頃から再び上昇基調を強め、新たな均衡点に入っている。あらゆる資源・エネルギーの代表である原油の均衡点価格が上昇すれば、穀物や鉱物資源などの価格もこれに連れて上昇する。

 2005年~12年にかけて、穀物や原油、鉱物資源などの一次産品市場では、価格が一斉に騰勢を強めるコモディティーの「スーパーサイクル」と呼ばれる現象が起こった。

 1990年代以降、先進工業国の海外移転により世界経済のグローバル化が加速。先進工業国の脱工業化が進む一方、中国、インド、中南米など新興国は急速に工業化し、双方の国内総生産(GDP)が収れんする過程で、工業原材料や食糧需要が急増し価格を押し上げたのだ。世界の名目GDPに占める先進国のウェイトは、2006年の74%から17年には60%に低下し、新興国は26%から34%に上昇した。

 コモディティーのスーパーサイクルを契機に、世界の穀物市場は大きく変貌した。ここ数年は、なにもかもが記録ずくめとなっている。

 米農務省(USDA)が10月に発表した2018/19年度(18年後半~19年前半)の需給報告によれば、世界の穀物生産量は25.62億トンで史上3番目の豊作となる。この結果、足元の在庫量は5.90億トンに積み上がり、在庫率(年間消費量に対する在庫量の比率)は22%台と、国連食糧農業機関(FAO)が適正とする17%前後(年間消費量の2カ月分)を大きく上回っている。6年連続の豊作が続いたことで、シカゴ穀物市場では、2007年~2014年にかけて高騰した穀物価格は、2015年以降落ち着いている。

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