地政学リスクとの結びつきが強まる

 今世紀に入って、石油と世界経済に関して少なくとも3つの課題が明らかになった。

 1つは、石油市場と地政学リスクの関係が一段と強まったことだ。

 石油メジャーにとって、石油埋蔵量は投資家に開示する最も重要な“資産”情報である。資源の埋蔵量とは一般に、その時点の価格および技術で採掘して収益の上がるもののうち未採掘のものを指す。

 石油メジャーは、石油生産を進める一方で、新たな資産情報としての埋蔵量を都度、更新していかなければならない。しかし、世界には従来のような安価な石油資源は減っており、新たな油田のフロンティアは深海や最貧国での開発など、技術的な難易度や地政学リスクの高い場所へと移っている。

 2つ目は、米国で起こったシェール革命によって、短期的には世界の石油の需給構造が供給過剰へと変わったことである。米石油調査会社のベーカー・ヒューズによると2017年7月7日時点で、米国のシェールオイル・ガスのリグ(掘削装置)稼働数は952基で2016年5月以来、14カ月連続で増加している(下のグラフ)。

 石油輸出国機構(OPEC)事務局によれば、米国には2015年末時点でDUCs(Drilled but Uncompleted Wells:掘削済みだが、未仕上げの坑井)が4290基ある。これらが次々に稼働すれば、日量20万~30万バレルの増産につながる。実際、米国の原油生産は増加傾向にある。米エネルギー情報局(EIA)によれば、足元の原油生産量は日量933万バレルで、2018年には初めて1000万バレルを突破する見通しだ。

シェールオイル・ガスのリグ稼働数は過去最高
米国におけるリグ稼働数とWTI原油価格の推移

不透明さ増す温暖化対策

 3つ目は、気候変動・地球温暖化が鮮明になり、石油をはじめとする化石燃料の無制約な消費を抑制せざるを得なくなったことである。

 2015年末のパリ協定の目標(世界共通の目標として世界的な平均気温上昇を産業革命前に比べて2℃以内に抑える努力をする)を達成することは、シェールオイルなど非在来型石油資源の多くが座礁資産化(埋蔵量が確認されても使用できない資源)することを意味する。環境省は、この「2℃目標」を達成するためには、今後、世界の化石燃料の推定埋蔵量の約3分の2が利用できないことになると指摘している。

 こうした中、「アメリカファースト」を掲げ、2017年1月に誕生したトランプ政権は、自国エネルギー産業の強化を目指し、シェールオイル・ガス、石炭の開発促進を打ち出した。また、政権の閣僚の多くが地球温暖化論には懐疑的な立場をとっており、パリ協定からの離脱も宣言した。これが将来の不確実性を高め、3つの課題に対する対応を遅らせるばかりか、不透明感をさらに深刻化させる恐れが出てきた。