原油価格が年明け以降、上昇基調を維持している。産油国による協調減産が奏功し、世界の石油需給が均衡に向かうとの見方が背景にある。しかし、中東・北アフリカ地域に広がり始めた地政学リスクが、原油の供給不安を醸成しつつあることに留意すべきだ。

 年明けに1バレル50ドル台でスタートしたニューヨークWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油は、その後も上昇基調を維持し、4月には64ドル台を付け、2018年11月以来の高値に浮上した。

 石油輸出国機構(OPEC)加盟14カ国とロシアなど非加盟10カ国の「OPEC+(プラス)」による1月からの協調減産に加え、足元は米国の対イランおよび対ベネズエラ禁輸制裁、さらにリビアでの軍事衝突の激化などで、これらの国からの供給懸念が強まるとの思惑から上昇に拍車がかかった。

2019年、原油価格が上昇基調に
ニューヨークWTI原油価格(期近)
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 OPEC+は、急落する原油価格に歯止めをかけるため2018年12月7日の会合で、今年1月1日から日量120万バレル削減に合意した。OPEC加盟国が日量80万バレル、非加盟国が同40万バレルの減産を行うもので、昨年10月の原油生産量(OPECは約3235万バレル)を基準とし、1~6月の間、適用されるというものだ。

 なお、イランは米国による経済制裁措置を配慮し今回の減産合意から免除された。リビア、ベネズエラも適用除外となった。他方、カタールは1月1日にOPECを脱退した。

今年後半に供給不安

 OPECの最新月報によると、3月のOPEC(14カ国)の産油量は日量3002.2万バレルで、前月から53.4万バレル減少し、2015年以来の低水準に落ち込んだ。減産を主導しているサウジアラビアの産油量は32.4万バレル減の日量979.4万バレルとなり、1年ぶりに1000万バレルを下回った。

 日量32.2万バレルの減産目標(昨年10月の生産量比)に対して減産量は84.3万バレルと、減産順守率は250%を超えた。リビアの産油量は109.8万バレルで前月から微増となり、イランは269.8万バレルと前月比で微減に止まったものの、昨年10月からは60万バレル強減少している。ベネズエラの産油量は73.2万バレルで、2016年の211万バレルから3分の1に減少した。

 なお、OPECは2019年の世界石油需要を日量9991万バレル(前年比121万バレル増)と予測。供給面では非OPECの生産量を日量6961万バレル(前年比227万バレル増)とみており、差し引きOPECの供給必要量(Call-on-Opec)を3030万バレルと弾いている。

 これは、3月の生産量3002万バレルを小幅に上回るものであり、需給均衡化に向けて引き続き減産の必要性を説く内容となっている。実際、サウジは4月以降も生産と輸出を一段と絞り込む方針だ。

 OPEC+による生産調整の履行状況を点検している共同閣僚監視委員会(JMMC:Joint Ministerial Monitoring Committee)は3月18日、今年下半期の生産目標を6月25日の会合で決定するよう勧告した。これを受けて、現行の協調減産が6月末まで確実に続けられるとの見方に加え、7月以降も6カ月間減産が延長される可能性が出てきた。

 5月4日には、米国による8カ国(中国、インド、韓国、日本、トルコ、イタリア、ギリシャ、台湾)に対する「180日間」のイラン制裁適用除外が期限を迎える。期限は延長されるとの見方もあるが、米国の制裁が強化されれば、5月以降イランの原油生産量がさらに落ち込むことは必至であり、世界石油市場は今年後半には供給不足に陥る可能性も出てきた。

協調減産進めるOPEC、制裁で落ち込むイラン原油
OPEC加盟国の原油生産実績
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