「電子薬」登場の可能性

 次世代の諸産業のイノベーションを占う際の絶好のベンチマーキング対象となるDARPA(Defense Advanced Research Projects Agency;アメリカ国防高等研究計画局)という組織がある。DARPAは、国防のために重要となる革新的新規技術に対する開発投資を目的に設立された組織だ。1950年代終盤のスプートニク・ショックに端を発し、インターネットやGPSなど現在の我々の生活を支える技術基盤を創出してきた。

 DARPAには6つのオフィス(部門/部会)が存在し、そのうちのBTO(Biological Technologies Office)では、戦場における薬物治療の提供や外科手術の実施が困難である状況を鑑みて、「医薬品に依存しない」治療法の開発やプロジェクトの支援に注力している。

 そのうちの一つに「ElectRx」というプロジェクトがある。プロジェクト名称に妙があり、「electrics」と読ませて「Rx(prescriptions)」、すなわち医薬品の意味を込める。言うなれば「電子薬」。末梢神経系の異常シグナルをモニタリング・調整することで、自己免疫疾患やメンタルヘルスを治療するニューロモジュレーションデバイスだ。

 例えば、次のようなものである。
・臓器機能をコントロールする特定の末梢神経の回路を標的に、先進的なセンシング・刺激技術を利活用
・健康状態をリアルタイムでモニターすることで、健康状態を回復するために必要となる治療刺激パターンを患者ごとにデザインし、必要に応じて介入

 当面は自己免疫疾患(リウマチ、全身性炎症反応症候群、炎症性腸疾患)やメンタルヘルス(PTSD、うつ)などを研究対象とするが、その他の疾患もカバー出来るようにすることを目標としている。