「日経エレクトロニクス」2015年5月号の無線モジュールの要、アンテナ設計の基礎「[第1回]今さら人に聞けない電磁気学を直感的に理解」を分割して再公開した記事の前編です。

無線通信機器の用途の広がりとともに、無線通信モジュール設計技術の重要性が高まっている。無線通信モジュールの要となるのがアンテナだ。本連載では、アンテナの基本から設計、測定技術までにわたって解説する。今回と次回は、無線通信に使える高周波を扱う上で不可欠な電磁気学を理解しやすいように説明する。(本誌)

 無線通信を使う用途や分野が広がっている。スマートフォンや非接触ICカードといった電子機器はもちろん、最近では例えば、医療・ヘルスケアの分野で近距離無線が注目を集めている。ヒトの体に取り付けたセンサーによって検出した生体情報などを無線で収集し、医療やヘルスケアなどに役立てるボディー・エリア・ネットワークへの応用などである。

 無線技術を利用した機器や製品の開発で重要なのが、アンテナの設計である。アンテナ設計をするためには、無線や高周波の基礎を理解しないといけない。ところが、電磁気学や電子工学の本を読んでも、なかなか理解することは難しい。波動方程式やマクスウェルの方程式を前にして、ただひたすら暗記に頼った読者も多いと思う。

高周波=無線通信に利用できる周波数の電磁波や電気信号のこと。定量的な定義はない。

 しかし、こうした数学と物理現象を頭の中で結びつけられると、電磁気学が簡単に理解できるようになる。波動方程式やマクスウェルの方程式も恐れるに足らない。

 連載の第1回と第2回では、アンテナを学ぶ前に、無線や高周波の基礎について、一般的な教科書とは全く異なるアプローチで分かりやすく解説する。

半径1の単位円を頭に描こう

 まず、頭の中に半径1の単位円を思い描いてほしい(図1)。その円周上に振り子が回転しているイメージを持つと、波動方程式、オイラーの式、マクスウェルの方程式のすべてが簡単に分かるようになる。アンテナ設計に使うスミスチャートの意味も分かってくる。

図1 半径1の単位円を頭に描こう
単位円を描くことで、数学と物理が結びつくようになる。
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 半径1の単位円の直径は2、円周の長さは2π。この1周の長さが2πということが大事である。数学の視点では、単位円を振り子が1回転すると「360度回転した」と言う。物理の視点では、これを長さで考える。つまり「2π(rad)注1)進んだ」と言う。ここに物理と数学の接点がある。360度が2π(rad)なのである。

注1)rad(radian)は、円の半径に等しい長さの弧の中心に対する角度。1rad≒57.29578度。

 振り子の回転を横から眺めると、上下運動しているように見える。これを時間軸に投影すると正弦関数(サイン)になる。一方、真下から眺めると、左右に運動しているように見える。時間軸に投影したのが余弦関数(コサイン)である(図2)。サインが上下、コサインが左右と、互いに90度ずれていることが重要である。同じ回転振り子だが、見る角度によってサインが見えてコサインが見えなくなったり、逆になったりする。これが直交性の概念であり、信号の多重化や分離などで利用する。アンテナ設計においても大切な概念だ。

図2 正弦関数(サイン)と余弦関数(コサイン)
回転振り子を真横から見て時間軸に沿って投影したのが正弦関数の波形だとすると、真下から見て投影したのが余弦関数の波形になる。
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