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スポーツとイノベーション

「プレー経験ゼロ」、元経営者のJFA幹部が描く日本サッカーの未来

JFA専務理事・須原清貴氏インタビュー(前編)

2018/11/28 05:00

久我智也=ライター

JFAは褒められることが少ない存在

民間企業でそうした発見や様々な経験を積まれた須原さんですが、JFAは公益財団法人です。民間企業との違いをどうお感じになりますか。

JFA専務理事の須原清貴氏
(写真:久我智也)
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須原 違いはたくさんありますが、ひとつ大きなところを挙げるとKPI(重要業績評価指標)がはっきりしていないことでしょう。一般企業の場合、ビジョンがあって、その下に株価やキャッシュフロー、利益、売上といったわかりやすい指標がありますが、我々の場合、何をすれば褒められるのか、何をすると怒られるのかということが曖昧なんです。

 例えばロシアワールドカップでの日本代表は、おそらく不合格点は取っていないんです。もちろんベスト8に進出できていればもっとよかったかもしれませんが、でも、ベスト8が実現していたとしてもJFAが褒められるかというと、そうではないんです。男子の場合はサムライブルーを頂点にして、多くの子供たちがそこを目指しています。ただ、代表には届かなくても一生懸命、あるいは楽しんでボールを蹴っている子供たちがいますし、そうした子供たちを教える指導者や父兄、応援するサポーターがいます。そうした人々が集まってサッカーファミリーを構成してくれています。

 サムライブルーが勝つこと、優勝することはとても重要ですが、一方でそうした人々が日々のサッカーを楽しめる環境を提供することも同じくらい重要です。その2つはつながっているようでつながっていなくて、つながっていないようでつながっています。禅問答のような話に聞こえるかもしれませんが、それらをトータルで実現して、初めてJFAが褒めてもらえる、褒めてもらえないというところに到達するんです。

 だとすると、全員を一気に満足させることはほぼ不可能なので、JFAは満場一致では褒めてもらえない存在なんです。それを受け入れた上で、サッカーファミリーのために何をしていくかを考え、実行していかなくてはなりません。

確かに、2011年になでしこジャパンが女子ワールドカップで優勝したときにも、チームや選手、スタッフへの称賛はありましたが、称賛がJFAに向いているかと言ったら、決してそうではありませんでした。

須原 そうでしたよね。私も人間ですから「JFAは偉い!」と褒められたいですけど(笑)、そうではないところに立ち向かわなくてはいけないんです。これは一般企業との大きな違いだと思います。

 これは私の仮説なのでひょっとすると間違っているかもしれませんが、この曖昧なものは、永遠につながらない、一気通貫に整理できるものではないのかなと思っています。ただ、その曖昧さを受け入れ、少しでも透明度を高めるという努力はずっとしていきたいですし、していかなくてはならないと思っています。

(後編へ続く)