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スポーツとイノベーション

市場はアジアと世界、日本プロスポーツ界初の株式上場目指すTリーグ琉球

琉球アスティーダ 代表取締役 早川周作氏インタビュー(後編)

2018/11/14 05:00

久我智也=ライター

 2018年10月24日に開幕した日本初のプロ卓球リーグ「Tリーグ」。大企業からの支援を受けるチームや大都市に拠点を置くチームが主流の中、大企業の資本に頼らず、沖縄という地方から挑戦するチームがある。琉球アスティーダだ。同チーム代表取締役の早川周作氏へのインタビュー後編では、アスティーダが沖縄にもたらすもの、沖縄という地域の特徴、そして今後の展望について聞いた。(聞き手:上野直彦=スポーツジャーナリスト、久我智也)

2018年10月26日に名古屋市の武田テバオーシャンアリーナで行われた、琉球アスティーダの試合の模様(写真:琉球アスティーダ)
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沖縄のスポーツを盛り上げる「ゆいまーる精神」

沖縄県にはBリーグの琉球ゴールデンキングス、JリーグのFC琉球など、既存のプロスポーツチームが存在しますが、そういったチームとの関係性はいかがでしょうか。

早川 スポーツビジネスでは、他競技のチームに対しては「ファンやスポンサーを奪い合うことになるのではないか」という観点ではなく、「競技の垣根を超えて共に生きていく」ことを考えるべきだと思います。既存のプロスポーツチームとも、お互いが手を取り合い、連携し合っていきたいと考えています。

 今シーズンで言えば、FC琉球の選手やマスコットにアスティーダの試合に来ていただくという話は具体的に進んでいますし、FC琉球の選手たちに、弊社が運営する卓球バルで自由に食事をしていただけるチケットをお渡しするということもしています。

 今後は、各チームの試合を観られる共通チケットをつくり、アスティーダの試合の後にゴールデンキングスの応援に行く、FC琉球の試合を観てからアスティーダの試合にも行く、といったことに取り組んで行きたいと考えています。スポーツで地方創生を実現していくには、限られたスポーツ関係人口を奪い合うのではなく、互いに観客を送り合い、互いに盛り上げることが大切です。

そもそも沖縄の卓球熱、スポーツ熱はどのような状況なのでしょうか。

早川 卓球は盛んです。琉球アスティーダはもともと日本リーグに所属しているチームですが、以前から試合には2000人近くの観客が訪れます。それだけの集客力があるチームは、日本には他にないと思います。

 それ以外のスポーツについても非常に熱気があると言えるでしょう。これは私も沖縄に移住してからびっくりしたのですが、高校野球の甲子園で沖縄のチームが試合をやっている時に企業訪問をすると、「こんな時間にお前は何をやっているんだ!」という具合に、すごく怒られるんです(笑)。

早川周作氏
1976年生まれ、秋田県出身。SHGホールディングス代表取締役、琉球アスティーダスポーツクラブ代表取締役、南青山リーダーズ取締役など。大学受験直前に家業が倒産し、父親が蒸発するが、新聞配達などのアルバイトをして学費を作り、明治大学法学部に進学。大学在学中に学生起業家として数多くの起業の経営に参画。その後、羽田孜元首相の秘書を務め、28歳の時に国政選挙に出馬。東日本大震災後には沖縄に移住し、数々の企業の取締役や顧問などを務め、業種業界を超えた幅広い分野で活躍している。2018年3月に琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社代表取締役に就任(写真:久我智也)

 沖縄の人々がスポーツそのものを好きなこともありますが、地元愛が非常に強いことも影響しています。実際、ゴールデンキングスの試合などでも沖縄出身の選手が登場すると他の選手とは観客の熱量が違います。沖縄の人の「ゆいまーる精神」と言いますか、地元への思いは独特なものがあります。

 先ごろ引退された歌手の安室奈美恵さんも、ラストライブは沖縄で開催しましたよね。興行的なことだけを考えたら東京ドームなどもっと大きな場所で行ったほうがいいはずですが、あれだけの世界的なスターであっても沖縄のことを意識するぐらい、特別なものなんです。

 ですから、アスティーダも将来的には試合出場選手の半分は沖縄出身者で構成し、さらに盛り上げていきたいと思っています。それは、ジュニアがあり、実業団があり、プロがある唯一のチームであるアスティーダにしかできないことです。これが実現できれば、地元からTリーガーを、そしてオリンピック選手を輩出するという我々の使命が果たせます。一方で、他地域の選手たちに対して「沖縄に行けば強くなれる」という選択肢を示すこともできるようになっていくでしょう。