記事一覧

スポーツとイノベーション

卓球で沖縄変える、沖縄から卓球変える Tリーグ琉球の挑戦

琉球アスティーダ 代表取締役 早川周作氏インタビュー(前編)

2018/11/12 05:00

久我智也=ライター

 チケット収入がリーグに付くとなると、チームとしてはどうやって利益を得ていくのでしょうか。

早川 スポンサーとグッズ収入、加えて独自の売上があります。アスティーダの場合は卓球バルです。その名の通り卓球を楽しみながら飲食できるお店で、県内に数店舗構えています。1店舗あたりのひと月の売上は1回の興行と同じくらいの収入になるので、これがメインになってきます。加えて、今後は卓球教室も始めようと考えているので、これも貴重な収入源になっていくでしょう。

試合結果よりファンと地域に愛されるチーム作り

「独自に前進する」という点では、琉球アスティーダは競輪競技の銀メダリスト・長塚智広氏や、ハンドボール元日本代表の東俊介氏、tsumiki証券の仲木威雄氏や弁護士の五十部紀英氏など、他競技、他業界の人々が役員に名を連ねているのが特徴的です。

早川 卓球は卓球、野球は野球というように固定化された枠組みで物事を考えるのは好きではありません。競輪には競輪の良いところ、悪いところがあるでしょうし、ハンドボールも同様です。そういったところを学びたいと考え、長塚さんや東さんに入っていただいています。

 東さんは競技の枠に囚われず、スポーツ界全体に非常に広い人脈を持たれているので、その点でもご協力いただきたいと考えています。私はこれまでスポーツビジネスに携わって来た人間ではありませんし、人脈があるわけでもない。ある問題に行き当たったとき、私の力では解決するのに1時間かかることが、東さんにスポーツ関係の方をご紹介いただければ5分で終わるということもあるかもしれません。そういったように、スポーツ業界の人脈を広げ仕事を効率化していく上で、彼のような人間的魅力に溢れた方に入っていただけたことは非常に大きいと感じています。

 また、過去のスポーツ界はスポーツだけをやってきた方が経営するケースが多かったですが、これからのスポーツビジネスはそれではいけません。金融やコンプライアンスの知識を持って経営していかなくてはなりませんから、仲木さんや五十部さんなどにもご協力いただいています。私はこのビジネスを持続可能なものにすることを前提にしていますので、こうした各種専門家の力をお借りしているのです。

そういった中で、初年度のチーム目標をどのように設定しているのでしょうか。

早川 当然、優勝して初代王者を目指すことは1つの大きな目標に掲げています。ただ、私自身は実は成績にそこまでこだわっていません。プロスポーツは、優勝するチームがもうかり、人気があるかと言ったら、決してそうではないと思っています。それよりも、ファンから、地域から応援され、愛されるチームづくりが大切だと思っています。ですから、試合に来場した方に楽しんでいただき、応援したくなり、愛したくなるようなチームを作っていく。そしてファンと共に、地域と成長していくチームを作っていくことを目標としています。

 そのためには、卓球を「観るスポーツ」として確立させる取り組みが必要になりますが、どういった施策をお考えでしょうか。

早川 私は東京ドームの年間シートを保有しています。だた私の場合、東京ドームに野球を観に行くというよりも、あの空間を味わいに行っています。独特の雰囲気があり、飲食を楽しんでリラックスする、そして野球を観る。そう考えると、卓球というコンテンツだけで人を呼ぶことには限界があるので、楽しめる空間づくりをすることが非常に重要だと考えています。

 例えばエンターテイメントの部分では、沖縄で人気のお笑い芸人の方や有名なMCの方、地元大学のフラダンスチームなどを呼んで盛り上げますし、グルメの部分では肉フェス的なイベントを開催していくことも検討しています。その他にも、卓球と関連した婚活イベントなども実施したいと考えています。

 このように、楽しい体験、美味しいもの、新しい出会いを提供できる空間をつくっていき、来場者を増やす。そのうえで卓球の試合を観てもらい、スポーツとしての魅力も広げていく流れをつくっていきたいと考えています。

  観戦体験の向上のためには、アリーナやテクノロジーへの取り組みも大切なものとなります。

早川  アリーナについては、中城のアリーナ構想が気になっているところです。これは2016年に議会承認が下りているものなのですが、県北部、東部、中部からもアクセスしやすい位置にあり、駐車場やショッピングモールもあるので、実現すれば面白いなと思っています。

 もちろんテクノロジーにも興味を持っています。例えば、トッププレーヤーの試合を見ていても「素人でも打てそうなボールをなぜ返せないんだろう」と感じることがあると思いますが、あれは、ボールにすごい回転がかかっているからなんです。そういった回転数を測れる技術を導入したり、VR(仮想現実)を活用して擬似的に選手と対戦できるようなアプリを作り、ファンの方に楽しんでもらう。このように、テクノロジーを使って卓球選手の凄さを伝えていきたいと考えています。