近年目覚ましい躍進を遂げている日本卓球界。これまで以上の競技の発展、そして2020年東京オリンピックでの世界一の奪還を目標に、2018年10月24日、日本初のプロ卓球リーグ「Tリーグ」が開幕した。初年度にTリーグに参加するのは男女各4チーム。その多くが大企業からの支援を受けるチーム、あるいは大都市に拠点を置くチームだが、その中で異彩を放っているチームがある。沖縄県に拠点を置く「琉球アスティーダ」だ。元々日本卓球リーグに所属し、リーグ屈指の人気チームであった同チームだが、なぜこの度Tリーグに参戦を果たしたのか。代表取締役の早川周作氏に狙いを聞いた。(聞き手:上野直彦=スポーツジャーナリスト、久我智也)

琉球アスティーダに所属する、世界ランキング10位(2018年11月時点)の丹羽孝希選手(写真:琉球アスティーダ)
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30分で代表就任を即決

 早川さんはこれまでビジネスの世界で活躍されてきたわけですが、2018年3月に琉球アスティーダの代表に就任されました。その背景を教えてください。

早川 私は2011年3月の東日本大震災の後に沖縄県に移住しました。沖縄では様々なビジネスに携わり、琉球大学でも教鞭をとっています。そうした中で貧富の格差が大きいことなど、沖縄の現実を知り、「沖縄のために自分に何かできることはないか」と常々考えていました。

早川周作氏。1976年生まれ、秋田県出身。SHGホールディングス代表取締役、琉球アスティーダスポーツクラブ代表取締役、南青山リーダーズ取締役など。大学受験直前に家業が倒産し、父親が蒸発するが、新聞配達などのアルバイトをして学費を作り、明治大学法学部に進学。大学在学中に学生起業家として数多くの起業の経営に参画。その後、羽田孜元首相の秘書を務め、28歳の時に国政選挙に出馬。東日本大震災後には沖縄に移住し、数々の企業の取締役や顧問などを務め、業種業界を超えた幅広い分野で活躍している。2018年3月に琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社代表取締役に就任(写真:久我智也)
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 そんなとき、現在Tリーグチェアマンを務める松下浩二さんと出会い、「卓球は5歳から始めて、そこまでお金をかけなくとも、15歳でオリンピックのメダルを獲得できるチャンスのあるスポーツ」ということを言われたんです。そこに関わることは、まさに自分がやりたいことであり、自分にしかできない仕事だと感じ、お話を聞いて30分ほどで琉球アスティーダの代表になることを引き受けました。

 常々地域のために行動しようと考えていたとはいえ、即決だったのですね。

早川 私は「光の当て方を変える」ことがすごく好きなんです。私自身、19歳の時に父が会社を潰して蒸発し、新聞配達をしながら夜間学校に通い、23歳の頃に起業しました。その後、羽田孜元首相の秘書をやり、衆議院選挙にも出馬しました。こうした行動は「強い地域・強い者のためではなく、弱い地域・弱い者のために社会基盤を働かせなくてはならない」という考えに則ってのもので、そのために都度、光の当て方を変え続けてきたのです。松下さんからいただいたお話は、スポーツビジネスを通して光の当て方を変えるものでした。

リーグ構造に感じるいびつさ

 2018年3月からTリーグに携わり半年以上が過ぎました(取材日:2018年10月15日)。現時点で感じているTリーグの課題を教えてください。

早川 地域とスポーツに対する考え方については、今の段階では私とは乖離があると感じています。例えば男子の開幕戦は、木下マイスター東京(東京都)対T.T彩たま(さいたま市)という関東勢同士の対戦でした。でも本来、プロスポーツは地域で盛り上がらないといけないものですよね。開幕戦という注目が集まる試合で沖縄や岡山のチームを出さず、関東勢同士のカードを持ってくるというのは、言い方は悪いですが、センスがないなと感じました。Bリーグの場合、アルバルク東京対琉球ゴールデンキングスという、東京対地方の対決で非常に盛り上がりました。あの盛り上がりが今につながっている部分は少なからずあるのではないでしょうか。

 その他にも不明確な部分や、構造自体がいびつに感じる部分はあります。例えば運営にまつわる権利的な面、収入的な面です。最初の1年はリーグが興行権を持つので、チケット収入はチームではなくリーグに付きます。ある程度の分配金はもらえるという話ですが・・・。

 それから放映権についても、当初はリーグ側が交渉をしていくことで話が進んでいたのですが、開幕直前になって各チームが行うことになりました。またグッズ収入の何%かはリーグに収めることになります。そういったことをするのは、リーグにお金がないからなんです。しかし我々としても、丹羽孝希選手や江宏傑(ジャン ホン ジェ)選手を始め、オリンピックを目指している中で貴重な時間を割いてアスティーダのために戦ってくれる選手たち、そしてチームを守っていかなくてはなりません。だから、リーグ側の課題は感じながらも、独自に前進して行こうと考えています。