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静岡県民球団の挑戦、野球通じた「多文化共生都市」構築へ

静岡県民球団・秋間建人氏インタビュー(後編)

2018/09/05 05:00

久我智也=ライター

 野球を“手段”に、地域活性化を目指すことを目的としている独立リーグ「ベースボール・チャレンジ・リーグ(以下、BCリーグ)」。このリーグに、新たに参入を目指している組織がある。静岡県浜松市に拠点を置く、一般社団法人・静岡県民球団だ。同球団の理事・秋間建人氏へのインタビューの前編では、秋間氏がBCリーグに挑戦した理由や、BCリーグが持つ魅力、役割について紹介した。後編では、浜松という地域が持つポテンシャルや、地方創生に取り組む上での苦労や課題、そして今後の展望について聞いた。

静岡県浜松市にプロ野球チームの創設を目指す「静岡県民球団」の理事・秋間建人氏。1984年生まれ、神奈川県横浜市出身。ヒューレット・パッカード、アクセンチュア、トーマツなどを経て、現職。トーマツ時代には企業の内部統制システム構築やコンプライアンス/ガバナンス体制整備の支援などに従事するほか、新規事業開発の活動として、スポーツビジネス専門チームの立ち上げに取り組み、Innovation Awardを受賞。現在は静岡県浜松市を拠点に、BCリーグ参入のための活動を行うとともに、企業や行政、大学とも連携し、オープンイノベーション活動を展開している

浜松を選択した理由は「企業体力」と「ブラジル」

静岡県というとサッカーのイメージが強い地域ですが、なぜ静岡県浜松市にプロ野球チームを創ることを考えたのでしょうか。

秋間 私は横浜市出身なので、浜松という地域には縁もゆかりもありませんでした。その中でこの地域をチャレンジの場に選択したのには幾つかの理由があります。1つ目は、静岡県には体力のある企業が多いことです。BCリーグのビジネスモデルは、企業のCSR(社会的責任)予算からスポンサードしていただくものですので、CSR予算を持てるような規模の企業がないと運営が難しいのです。

 また静岡は確かにサッカーのイメージが強い県ですが、実はシニアやリトルの年代では、サッカーチームよりも野球チームの方が多いくらいで、野球を楽しむ土壌やニーズ、将来の潜在顧客が多い地域だと思っています。

 そういったことをマクロ分析していき、幾つかの地域の中から浜松市を選択しました。

プロ野球チームを創る上で浜松が最適だったとはいえ、縁もゆかりもない場所に飛び込んでいくのにためらいはなかったのでしょうか。

秋間 もちろんありました。しかし、静岡県民球団の代表理事を務める黒田豊1との出会いや、鈴木康友 浜松市長の後押しもあり、2015年に静岡県民球団を立ち上げることができました。黒田とは親子ほどの年齢差がありますが、今は二人三脚でBCリーグ参入に向けて共に進んでいる状況です。

1 静岡県民球団の代表理事・黒田豊氏は、和歌山工業高校では甲子園の春の選抜大会に出場。立命館大学を経て河合楽器に入社し、現役、コーチを通じて都市対抗野球に9度出場の経歴を持つ。現在は浜松市議会議員として、浜松市におけるスポーツ振興に力を注いでいる。

その他に浜松市ならではの特徴はありますか。

秋間 浜松市は在住外国人が多い市で、約80万人の人口のうち、約2万人が外国人の方です。さらにそのうちの約8500人がブラジル人で、政令市の中で最もブラジル国籍の方が多いという特徴があります(2016年末時点)。

 ブラジルのスポーツと言えばサッカーを思い浮かべますが、日系移民の影響で日系ブラジル人を中心に、野球もそこそこの規模を持っています。私自身何度かブラジルに行ったことがあるのですが、ブラジルの野球界では日本にキャリアパスの道筋ができることを望んでいるようです。これから日本に流入する外国人が増加することは想像に難くないですし、政令市で最もブラジル人の多い浜松にプロ野球チームを創ればブラジル人野球選手の受け皿となります。さらに、地域のブラジル人コミュニティーの活性化や、浜松市が目指している多文化共生都市づくりのアイコンとしての役割を担うことも期待できます。これが浜松を選択したもう一つの理由です。

 浜松市が多文化共生都市づくりを目指していることもあり、この考えには、鈴⽊市⻑からもご理解・ご評価をいただいています。

静岡県民球団の代表理事を務める黒田豊氏(写真左)。隣はBCリーグを運営するジャパン・ベースボール・マーケティングの代表取締役 村山哲二氏。写真は2018年5月に行われた準加盟承認記者会見の様子
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