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夢のアリーナ実現への要件、Bリーグトップが語る「現在地」

「SPORTEC2018」報告(2)

2018/08/24 05:00

久我智也=ライター

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、年々注目度が高まる日本のスポーツ業界。こうした中で、スポーツビジネスの拡大を図っていくためにはどのような対応が求められ、どんなことに取り組んでいくべきなのか。日本最大級のスポーツ・健康産業の総合展示会「SPORTEC2018」(2018年7月25日~27日)に、Bリーグチェアマンの大河正明氏が登壇。「B.LEAGUEが挑むスポーツビジネスの変革」と題し、その方法が語られた。同氏の講演の要旨をレポートする。

Bリーグチェアマンの大河正明氏。1958年生。京都府出身。中学でバスケットボールを始め、全中4位。京都大学卒。 1981年三菱銀行入行。1995年日本プロサッカーリーグ出向、総務部長。2010年三菱東京UFJ銀行退行。同年日本サッカーリーグ理事に就任。 2014年に日本プロサッカーリーグ常務理事、2015年日本バスケットボール協会専務理事、事務総長、同年ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ理事長
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プロスポーツビジネスに欠かせない「財政規律の確立」

 スポーツ産業の拡大を図っていく上で、プロスポーツビジネスというコンテンツは重要な役割を担うことになっていく。しかし、プロスポーツ界にはいくつもの課題も存在している。三菱銀行、三菱東京UFJ銀行、Jリーグを経て、現在はBリーグチェアマンの職に就く大河正明氏が、この日の講演で挙げたスポーツ界の課題が「財政規律の確立」だ。このことを語る上で同氏は、Jリーグの「クラブライセンス制度」を事例として紹介した。

 「Jリーグは2012年にクラブライセンス制度を導入しました。当時のJリーグは財務的に非常に厳しい状況に置かれているクラブが幾つもありました。万が一、クラブが倒産してしまうと、リーグ戦の対戦相手にも迷惑がかかりますし、その地域に新しいチームをつくることも難しくなってしまいます。だからこそ、財政を健全化することを推し進めたのです」(大河氏)

 大河氏は、クラブライセンス制度を導入して3期連続の赤字と債務超過を解消させ、サッカー界のイメージを高めることに取り組んでいった。多くのクラブ経営者からは「縮小均衡が進み、サッカーの魅力が低下するのでは」といった懸念の声も上がったが、各クラブと向き合いながら推し進めることで、2014年には3期連続赤字のクラブも、債務超過のクラブもゼロになったという。

 「Jリーグチェアマンの村井満さんに、“Jリーグが世界に誇れることは?”と聞かれたことがありますが、私は“債務超過のクラブがないことです”と答えました。海外では債務超過から選手やスタッフへの給料の支払いが遅配したり、未払いということも数多くあります。そうした中で、Jリーグに給料の遅配や未払いのないことは世界に誇っていいことだと思いますし、DAZN(ダ・ゾーン)がJリーグに巨額の投資を行っているのは、Jリーグの財政が健全であることも影響していると思います」(大河氏)

 このクラブライセンス制度は、Bリーグにおいても採用されている。そこでは競技、施設、人事体制・組織運営、法務、財務という5つに分けて各クラブの経営状況がモニタリングされている。その結果Bリーグは、まだリーグが分かれていた2014~2015シーズンと比べると、2016~2017シーズンの売り上げは約2倍にアップ。2018年6月時点で、B1からは債務超過のクラブもなくなったという。

Bリーグの財務状況のスライド。図は2017年10月時点のデータのためB1の債務超過クラブ数が3と記されているが、「2018年6月までにB1は債務超過のクラブがゼロになった。B2も、2020年6月までに債務超過クラブをゼロにする」と大河氏は語った
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 「かつてのスポーツ界は、どんぶり勘定で経営をしている組織が多くありました。例えばプロ野球は、親会社の広告宣伝や、電鉄会社の沿線開発の一環としての側面が強かったので、赤字になれば親会社から補填してもらえばいいという発想を持っていました。しかし今では独立採算制のチームも増えていますので、Jリーグのように地域と向き合い、密着しながら経営をしています。このようにプロスポーツにおいて財政規律を確立することがとても大事になってくるのです」(大河氏)

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