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スポーツとイノベーション

サッカー関心層広げたい eスポーツ参入、Jリーグの思惑

Jリーグ チェアマン・村井氏インタビュー(上)

2018/06/11 05:00

内田 泰=日経 xTECH

eスポーツとリアル、ビジネス構造は大きく変わらない

―― eスポーツは2022年のアジア競技大会で正式種目になり、国際オリンピック委員会(IOC)の最高位スポンサーになった米インテルを中心に、オリンピックの正式種目化に向けたロビー活動が行われていると言われています。こうした動きをどのように捉えていますか。

村井 先ほど申し上げた、スポーツの定義が広がっていく流れの一貫かと思います。

 実は、Jリーグの全試合を配信している「DAZN(ダ・ゾーン)」では、サッカーのみならず数多くの競技を見られるのですが、その中にはビリヤードやダーツも含まれています。「ダーツはスポーツなのか」という意見もありますが、立派な競技として成立していますし、スポーツのすそ野が広がっています。

 当然ですが、ビデオゲームはデジタルプラットフォームとの相性がすごくいいですし、デジタルリテラシーが高い世代の人たちにはとても馴染みやすい。いわゆるネット配信との相性がすごくいいわけです。

―― Jリーグがeスポーツを取り入れることによって、ビジネス面ではどんな期待をされていますか。

村井 基本的には、eスポーツのビジネス構造もリアルなサッカーとそんなに大きく変わらないはずです。eスポーツに対する関心層や視聴者数が増えていけば、そこへの露出価値によって広告ビジネスが成立するでしょう。チームや大会そのものを協賛していただくようなスポンサーシップや、大会を配信するための放映権市場も台頭してきます。

Jリーグの村井氏(写真:中島正之)
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 eスポーツならではのグッズの市場もできるかもしれません。選手そのものがプロ化することで、年俸とか、肖像権を基にしたビジネスが出てくるかもしれません。既に海外では、これらのいずれもが顕在化した市場となっていると聞いています。

―― そういう意味では、ビジネス的な観点では、もはやeスポーツに取り組むのは自然の流れと言えるのでしょうか。

村井 そうですね。私も自分の1週間の生活を考えてみたとき、スーツを脱いでリアルなサッカーを楽しめる時間は土日などに限られます。でも、平日には電車で移動している時間や、レストランで食事をしている時間などがちょこちょこあり、eスポーツなら生活時間の中にすんなり溶け込めます。ITが生活に浸透した今、eスポーツが身近な存在になってきたのは、ある意味、必然のように思います。

―― 一方で、リアルのサッカーと比較してビジネス構造や収益源などでeスポーツ特有のものがあるのでしょうか。

村井 リアルのサッカーはJ1でいうと、1万5000人以上を収容するスタジアムで開催する規定があります。選手の疲労度を考慮すると、試合の頻度もせいぜい週に1度程度になります。

 eスポーツであれば、大きな会場は必要ありませんし、リアルと比較すると選手の疲労度やケガのリスクも少ないので大会のインターバルもさほど制約を受けないでしょう。さきほど申し上げたように、年齢、性別、国籍、障害の有無を問わないので、柔軟に幅広くエンターテインメントの場を設定することができます。

 一方で、瞬間的な反射神経が求められたり、集中力を要求されると思うので、それこそeスポーツにおけるドーピング対策のようなものは考える必要が出てくるかも知れません。リアルとは異なる要素がいろいろあるかも知れないので、現状ではまずトライしてみることが重要です。

(次回に続く)