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「クラブ経営をフルパッケージで提供する」という、世界でも類を見ない事業に取り組むスポーツX。これまで、J3の藤枝MYFC(現在は地元企業に経営権を譲渡している)や、将来のJリーグ入りを目指す「おこしやす京都AC」などのクラブ経営に携わった実績を持つ企業だ。同社は今後、日本だけではなく世界中をフィールドにプロスポーツクラブの多店舗展開に取り組んでいくという。代表取締役社長を務める小山淳氏のインタビュー後編では、より詳しい事業内容や、スポーツXが目指す未来について紹介していく。(聞き手:上野直彦=スポーツジャーナリスト、久我智也)

藤枝MYFC代表時代に観戦者への2017年シーズン終了のお礼の挨拶。場所は藤枝総合サッカー場
(写真:小山淳)
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アーセナル以上の生徒を保有するスクール展開

スポーツXの事業内容について詳しく伺いたいと思います。まず「プロスポーツクラブ多店舗展開」について、具体的にどのような取り組みをしているのか教えてください。

小山 文字通り、日本中・世界中に数多くのプロスポーツクラブを作り、スポーツの力を通して地域に貢献していこうというものです。藤枝MYFCの場合は私のマンパワーで進めていた部分が大きいのですが、現在当社が関わっている関西1部のおこしやす京都ACを通して多店舗展開のための標準的なノウハウを構築しようとしています。おこしやす京都ACは、当社社員である添田隆司が社長を務めているクラブです。彼はまだ20代ですが非常に優秀で、資料作成なども得意なので、クラブ経営の標準化の礎を作るには最適な存在です。藤枝MYFCやおこしやす京都ACで得た知見を基に、プロスポーツクラブの多店舗展開を実現していこうとしています。

*添田隆司氏については以下記事を参照
https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/feature/15/070800035/120500085/

 この事業については、トップチームの経営はもちろんですが、スクールなどのアカデミーやスタジアムに関する取り組みなど、フルパッケージで提供していくことを目指しています。スタジアムに関しては、ローコストのスマートスタジアムの開発についての研究を進めている段階ですが、スクール事業については既に我々の柱のひとつになっています。

スクール事業については具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか。

小山 スクールパートナーという会社と連携しながら進めている事業になります。同社は、私個人としてもスポーツXとしても投資・育成をしている会社で、2009年に設立されたまだ若い組織なのですが、現在は日本だけではなく、ベトナムなど海外でもスクール事業を展開しています。ベトナムでは2800人以上の生徒を抱えていて、これは同国のスクールの中で1位の人数です。ベトナムでは英国・プレミアリーグのアーセナルFCもスクールを展開しているのですが、そちらは400人ほどなのでおよそ7倍の生徒を獲得できています。

スポーツXもスクールパートナーも、知名度に関してはアーセナルとは段違いと言わざるを得ないかと思いますが、なぜそれほどの生徒を獲得できているのでしょうか。

小山 我々の場合、サッカーの技術を教え込むというよりも、サッカーを通して学ぶことができるチームワークや人間性の向上といったことをメインに教えています。それが各地域の人々に評価をいただけていると思っています。

 もうひとつ他のスクールと異なっている点としては、指導側のほとんどが正社員なことです。日本のスクールの場合は多くのスタッフが契約社員的な扱いですし、Jリーグクラブで元Jリーガーが教えていると言っても、その内実は将来ユースチームやトップチームの指導者になることを目指しているということが多いんです。それは個々人のスタッフが悪いというよりも、組織構造が整っていないことが原因だと思っています。

 一方で我々のスクールは、正社員として保証された状態のスタッフが指導をしていますので、長期的に子どもたちと向き合えますし、マーケティングにもスタッフ一丸となって取り組むことができます。そういった組織的な力を持っているからこそ多くの生徒を獲得できていますし、急成長ができているのだと分析しています。

スポーツX代表取締役社長の小山淳氏。1976年、静岡県藤枝市出身。幼い頃からサッカーを始め、10歳のときにテレビで見たメキシコワールドカップをきっかけにJFA会長になることを目指す。中学、高校時代にはアンダー世代の日本代表にも選出される。大学時代の怪我が元でサッカーを辞めることになるが、大学中退後に世界を放浪する旅に出たことで「世界の貧困と不平等を失くしたい」という思いを抱き、帰国後にIT関連企業を興す。2009年に藤枝MYFCを創業し、2014年には史上最速でJリーグ入りを果たす。同クラブの経営権を譲渡した後、2017年10月にスポーツXを設立し、現在に至る
(写真:久我智也)
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