スポーツイベントでは、ファンに非日常的かつ良質な体験を提供し、その満足度を高めることが重要だ。昨今、多くのプロスポーツクラブがテクノロジーを活用して良質な体験価値の創造に挑んでいるが、中でも注目を集めているのが米プロアメリカンフットボールNFLのサンフランシスコ49ers(以下、49ers)の取り組みである。2018年11月末に開催された「Sport Innovation Summit 2018 TOKYO(以下SiS)」に、49ersの戦略&解析担当副社長のムーン・ジャバイド氏が登壇し、同クラブの取り組みを紹介した。その要旨をレポートする。

成功に必要な「チャレンジャー・ブランド」

 ジョー・モンタナやスティーブ・ヤング、ジェリー・ライスといったNFL史に輝く名選手が在籍し、過去5度のスーパーボウル優勝経験があるサンフランシスコ49ers。近年は思うような成績を残せていないが、「スマートスタジアム」の先進事例として知られるリーバイス・スタジアムを本拠地としており、テクノロジーへの取り組みやマーケティング面で各所から注目を集めている。49ersで戦略&解析担当副社長を務めるムーン・ジャバイド氏は講演の冒頭で、ビジネスを成功させていく上で重要な考え方を次のように説いた。

サンフランシスコ49ersが本拠地とする“元祖”スマートスタジアムの「リーバイス・スタジアム」。米シリコンバレーに位置する
(写真:石井 宏司)
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「例えばAmazon.comやUber Technologies、Airbnb、Warby Parkerといった企業は“チャレンジャー・ブランド”と呼ばれています。これは“劣勢でもチャレンジを忘れない”、“ディスラプション(破壊)を起こす”ブランドという意味で、今後ビジネスで成功を収めていくためにはこのマインドセットが重要になります」

「ジェフ・ベゾス(Amazon.comの共同創設者)が本だけを売りたかったらとしたら、Uberが既存のシステムに抗うことをしなかったら、今の世の中はありません。これと同じように、我々49ersも “今のやり方で十分”とは考えず、“チャレンジャー・ブランド”であり続けることを意識しています」(ジャバイド氏、以下同)

 チャレンジャー・ブランドであり続け、ファンの体験価値を向上していくために49ersは日々改善を続けているという。例えばファンに対してアンケート調査を実施し、38万件以上もの回答を獲得。その声を基にスタジアムにおいて200もの項目の改善を実施したという。そうした取り組みの目玉としてSiSで紹介したのが「ファンのフィードバックをリアルタイムで確認・改善する方法」だ。

サンフランシスコ49ersの戦略&解析担当副社長 ムーン・ジャバイド氏
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