記事一覧

スポーツとイノベーション

沖縄初のJ2クラブ・FC琉球、躍進の背景に「経営立て直し」

FC琉球代表取締役社長 倉林啓士郎氏インタビュー

2019/03/04 05:00

久我智也=ライター

沖縄サッカー発展のために欠かせない地元出身選手の獲得・育成

地域との関わりについても伺いたいと思います。FC琉球は地元出身選手の存在を重要視していますが、その意図と効果を教えてください。

倉林 沖縄は非常に地元愛が強いという特徴があります。地元出身選手がいることで、サポーターの方々にもとても喜んで頂けます。今年は5人+ユース昇格4人の地元出身選手が在籍しています。彼らは地元の人々にとってヒーローですから、そうした選手が増えれば地域に対していいプロモーションになると思っています。

 以前は沖縄出身の有望選手は中学や高校で活躍しても県外の高校やクラブに進むことが多かったのですが、FC琉球があることで、他クラブを経ずに沖縄に残ってサッカー選手になる、あるいは地元に戻ってくるという流れを強くしていきたいと思っています。そうすれば沖縄から有力な選手を育てることにもつながっていくはずです。

育成という点では、FC琉球は2018年4月に「FC琉球高等学院」を開校しました。日本で初めてJリーグクラブが運営するこの学校は、どのような狙いを持って設立されたのでしょうか。

倉林 沖縄県出身選手の育成強化の一環というのが主目的ですが、スポンサー企業と連携してキャリア教育を実施していくことで、サッカー選手としてだけではなく社会的に自立した人間になる能力を育てていくことも目指しています。実は沖縄県は高校生の不登校数や中退者数が全国の中でも非常に多いことが問題になっています。またサッカーの実力を認められて他県の強豪校に進学しながらも問題を起こして退学し、地元に戻ってくるというケースもあるので、そうした子どもたちの受け皿になれれば、という思いも持っています。

沖縄県には元日本代表の高原直泰選手が代表を務める沖縄SV(エス・ファウ)というクラブもありますが、同クラブとはどのような関係性を持っているのでしょうか。

倉林 特別に何かを一緒にしているということはありませんが、我々にとっても同じ沖縄で頑張るサッカークラブとして沖縄SVの存在は貴重です。

 サッカーキャンプを誘致したり、サッカー専用スタジアムの建設を推進するなど、地元のサッカー熱を一緒に高めながら、可能な限り協力していきたいですし、今後も良い関係性をつくっていきたいと思っています

沖縄県は本州よりもアジア諸国の方が距離が近いという特徴がありますが、アジアに対してはどのような戦略をお持ちでしょうか。

倉林 おっしゃる通り、地政学上のメリットを活かしてアジアに対してのマーケティングは強化していきたいと考えています。2017年に台湾サッカー協会とパートナーシップ協定を締結しましたし、実際に台湾やベトナム、中国などから選手の売り込みも来ています。2019年はそこまで外国籍選手を受け入れるキャパシティはないのですが、将来的にはどんどん取り組んでいきたいという思いを持っています。

沖縄は日本では最南端、アジアでは最先端

倉林さんがFC琉球の社長に就任する以前、約1年半の間に3度の社長交代が起こり、クラブに対して懐疑的な目を向ける人も少なからずいたと思います。しかしここまでお話を伺ってきて、そうした思いはだいぶ払拭できていることも感じました。

倉林 やはりJ2昇格という目標を果たせたことで、クラブに関わる人間はもちろんのこと、県民の方々もかなり自信を持てたと思います。まだ時間は掛かるかもしれませんが、J1昇格やAFCチャンピオンズリーグ出場という大きな目標を掲げていきたいです。

 競技的な目標だけではなく、「沖縄県にFC琉球があってよかった」と地元の人々に誇りを持っていただくことが最重要であることも忘れてはなりません。スポーツを通して沖縄を元気にする存在でありたいですし、今はそのベースを作っている段階と言えます。前沖縄県副知事の浦崎唯昭氏に「沖縄は日本では最南端、アジアでは最先端」という言葉を教えて頂いたのですが、確かに沖縄はアジアを見ると非常に多くの可能性にあふれている地域だと思うので、沖縄ならではの強みを活かしていきたいですね。