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スポーツとイノベーション

セカンドキャリアに人材育成、元貴乃花親方が考える相撲界改革

日本相撲界のイノベーション(上)

2019/02/25 05:00

上野直彦=スポーツジャーナリスト

引退後のキャリア問題、ほぼ手付かず

講義では力士のセカンドキャリアについても言及されていました。

花田 力士引退後のキャリアの問題ですが、ほとんどが手つかずのままです。親方になるために必要な年寄名跡(親方株)が「105」の枠しかないのが現実です。つまり、引退後に相撲界から完全に離れる力士が大多数です。

 相撲界から離れるときに重要になるのが学歴ですが、力士の学歴構成は中卒や高卒の割合が他競技よりも非常に高いです。そこで各部屋が力士の教育も担っているのですが、セカンドキャリアの教育支援はほぼ存在しません。

力士の引退後のキャリア
(出典:武藤泰明(2012)「大相撲のマネジメント―その実力と課題」を基に作成)
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具体的な事例を挙げていただけますでしょうか。

 私が相撲部屋を約15年間営んで思ったことですが、学歴がない上に関取になれなかった力士は再就職先を見つけるのはなかなか困難だということです。

 そこで実践したのが、まず力士にやりたいことを聞いて、運転免許を取得させたり、料理の道に進みたい子は料理学校で学ばせました。実は部屋にいた中卒の力士が料理学校に1年間通ったのですが、入学前に高卒の資格がないと料理の学校に入れないことを知りました。

 そこで私は入学前に高校卒業の資格試験を行なっている料理学校を探し出し、元力士に試験を受けさせて入学させたのです。理解のある専門学校があったからこそ入学が可能となりました。現在その元力士は、奄美大島のリゾートホテルなどを経営している私の知人の元で働いています。

 もう一人の元力士は、私が横綱時代に付き人を長くやってくれた一つ上の先輩です。彼は現在、上野の老舗焼肉屋の厨房で働いており、支配人とコンビを組んで店にはなくてはならない存在になっています。

こうしたセカンドキャリアの問題を解決をしないと、新しい才能が相撲協会へ来てくれない可能性もありますね。

花田 現在、私は相撲協会の人間ではないですが、力士の給与とセカンドキャリアは角界の組織としての大きな課題だと常々考えていました。

 セカンドキャリアを確立し、各人がやりたい道へ進めるようなシステムを構築する。そうする事によって新弟子の確保、つまり新しい人材や才能の確保の道が広がります。

 仮にアマチュア相撲時代の成績が良くても、いかにコーチの指導が良くても、22歳で大学を卒業して横綱や大関を目指すというのは、ほぼ困難です。20歳を過ぎるとある程度骨格が形成されてくるため、機敏な動きを含めた激しい当たりに耐えうる身体を作ることが難しくなる。やはり新弟子さんを増やし、新しい人材を確保することは、昨今よく言われますが日本出身の横綱誕生にもつながっていきます。

 相撲界の発展のためには新しい才能を育てていくことが不可欠です。そのための仕組みづくりや力士への教育、ケアが必要だと私は考えています。