一人の師匠がすべてをこなす現実

東大大学院での講義は大変好評でした。特に花田さん自身が作成された資料に書かれた相撲の中央競技団体(NF)の設立については質問も多く出ました。私も、大相撲とプロサッカーのJリーグとの比較には大変興味を持ちました。

花田 現在の相撲界の組織図や収入の流れ、その内訳を、Jリーグと比較するとよくお分かりいただけると思ったからです。

 サッカー界は一番上に中央競技団体として「公益財団法人 日本サッカー協会(JFA)」が存在します。その傘下に枝分かれして「公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)」、さらにその管轄下のクラブチーム、47都道府県のサッカー協会、各地域のサッカー協会などが存在しています。

サッカー界の組織関連図
(出典:出典:日本サッカー協会ホームページ)
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では、相撲界の組織関連図について詳しく教えて頂けますでしょうか。

花田 相撲界の組織関連図を見ていただくと、一番上にあるのが「公益財団法人 日本相撲協会」。これが大相撲の興行で一年間に6場所の本場所を開催している団体です。その傘下に力士と各部屋が存在します。

 他方で「公益財団法人 日本相撲連盟」というアマチュア相撲の統括団体があります。本来であれば日本サッカー協会のように中央競技団体がすべてを統括すべきですが、相撲界の場合は日本相撲協会とアマチュアの連盟が完全に分かれてしまっています。

相撲界の組織関連図
(出典:日本相撲協会ホームページ)
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収入の内訳も、日本相撲協会とJリーグでは相当違いますね。

花田 プロである日本相撲協会の本場所での収入は、年間90日間の興行の場合、すべて「満員御礼」になればおよそ100億円近くあります。そこから46ある各部屋へ相撲協会から「養成費」「補助費」という名目で収入が分配されます。実はこれがJリーグと一番違うところかもしれませんが、力士たちの給料は所属している部屋から出るのではなく、日本相撲協会から出ているのです。

 例えば幕下以下、地位によって“若い衆”と呼ばれる彼らには、2カ月に一度給金が支払われます。十両以上の関取は月給をもらう仕組みになっています。図を見ていただけますと、相撲部屋の内訳は大体が力士養成費として相撲協会から力士を抱えている人数に合わせて支給されます。それ以外では、各部屋は後援会費などの寄付金を頂いてまかなっているのが現状です。

Jリーグのクラブと相撲部屋の収入内訳
(出典:出典:Jリーグホームページ)
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 逆にJクラブの収入の内訳ですが、広告料収入、入場料収入、物販収入、アカデミー収入、Jリーグ分配金などあります。さらに重要なのは、Jクラブでは広報・宣伝・営業など業務が多岐に分かれており、それぞれの担当者が存在します。予算の規模によっては兼務している場合もあるでしょうが、トップに相当する方がそのすべてをこなしているわけではありません。

 ところが、相撲部屋の師匠はたった一人です。その師匠が経営・宣伝・営業、・財務などをすべて一人でこなさなければならないのです。これは一般の方があまり知らない現実です。