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スポーツとイノベーション

フェンシングのビジネス化、鍵握る「第4の新種目」

マイナースポーツの挑戦(下)

2019/02/21 05:00

内田 泰=日経 xTECH

 日本人初のフェンシング競技の五輪メダリストである太田雄貴氏が会長を務める日本フェンシング協会。同協会は2018年10月4日から10月31日まで、組織基盤の強化のために、転職サイト「ビズリーチ」で副業・兼業限定の戦略プロデューサーを公募。1127名もの応募の中から4名のビジネスのプロ人材を採用した。

 2017年8月の会長就任以来、「スポーツビジネスをゼロから立ち上げる」と宣言し、“マイナースポーツのビジネス化”に向けて大胆な挑戦を続けている太田氏。実際、それまで閑古鳥が鳴いていた「全日本フェンシング選手権大会」を満員にするなど、結果を出し続けている。太田氏は今何を考え、次に何を仕掛けようとしているのか。(聞き手:内田 泰=日経 xTECH)

前編はこちら
2018年12月9日に開催された「第71回全日本フェンシング選手権大会個人戦 決勝戦」の様子。横8m×縦3mの大型LEDビジョンをステージの背面に設置。選手の名前や得点、所属、身長、年齢、さらにリアルタイムの心拍数を表示して観客に緊迫感を伝えた
(企画制作/Dentsu Lab Tokyo 、心拍可視化/汎株式会社 、写真: 竹見脩吾)
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今回、日本フェンシング協会の組織基盤の強化のために、戦略プロデューサーを副業・兼業限定で公募したのはどのような狙いがあったからですか。

太田 これまで、スポーツ界ではボランティアで協会関連の仕事をお願いすることも多いのが現実でした。しかし、これではコミットが弱い上、優秀な人材にアクセスできません。このため、協会関係者は競技出身者で占められ、ビジネス経験のある優秀な人材を囲い込めていないことが課題でした。

 2018年には複数のスポーツ団体が、パワハラなどの問題を起こし、メディアで広く伝えられました。この背景にも組織基盤の弱さがあると思います。折しも、政府が働き方改革を踏まえて副業・兼業を推進しています。この条件なら我々も優秀な人材にアクセスできるかもしれないと考えたのが公募の理由です。スポーツ団体が兼業・副業で人材を募集するのは日本初の試みで、成功すればスポーツ界のイノベーションにつながると考え、ビズリーチで公募をかけました。

公益社団法人・日本フェンシング協会会長の太田雄貴氏。国際フェンシング連盟副会長を兼務。2008年の北京五輪でフェンシング男子フルーレ個人に出場、日本人選手初の決勝戦に進出し銀メダルを獲得。33歳。写真は2019年1月10日、ビズリーチで公募したビジネスのプロ人材4名の採用についての記者会見の様子
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 スポーツ団体の関係者と話をすると、いまだに“金メダルありき”の人が多いのが現実です。でも、東京五輪で日本の金メダルの獲得数が増えるほど、一つ一つの注目度は下がってしまいます。強化は当然重要ですが、それは強化本部長に任せて、我々は今回採用したビジネスのプロ人材4名と一緒に、組織・育成・マーケティング・PRの強化に力を注いでいきます。

2019年1月10日にビズリーチが開催した記者会見の様子。採用された4名のうち、2名が参加した。写真左が経営戦略アナリストの江崎敦士氏(外資系デジタルサービスプロバイダー勤務)、左から3番目が強化本部副本部長の高橋オリバー氏(日本コカ・コーラ勤務)
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太田さんが会長に就任して以来、それまであまり観客が入っていなかった全日本フェンシング選手権大会を満員にするなど、着実に成果を出しています。今後はどの部分に注力していく方針ですか。

太田 大会についてはエンターテインメント化を推進していきます。もちろん、選手たちが主役の「アスリートファースト」が軸です。ビジネスサイドの立場にいる我々がやるべきことは、競技の勝敗に左右されないビジネス基盤を作っていくことです。